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障害者自立支援法訴訟和解

2010.04.22.12:56

タイトルの件、このブログを読んでくださる方のほとんどは知らないだろうし、関心もないかもしれない。ぼくの中学生になる長女は生後8ヶ月で脳腫瘍の手術をし、命と引き替えに視力を失った。小学校4年の次女はダウン症である。だから、障害児の父親として、どうしても昨日のこのニュースには触れておきたい。

障害者自立支援法というのが、小泉郵政選挙の自民圧勝後、多くの関係者・団体の反対の声を無視して、実にあっさりときまった。この法律の看板は障害者を保護するのではなく、障害者の自立をうながすというもので、それだけ見れば悪くなさそうである。

しかしその基本的思考方法は、障害も自己責任であるということだ。障害者が生活するに当たって介助を必要とすることの一部は自己負担せよというもの。現実の問題として、障害者がトイレに行くにも金を取られるのである。世界中探してもなかなかない法律だそうだ。しかし、TVも新聞もこうしたニュースは読者が求めていないということなのだろう、ほとんど取り上げなかった。

その時の厚労大臣は自民の中で、数少ない良識派に数えられる尾辻秀久。最近も与謝野馨に「ばかもの!」と一括した、あの人だ。この人はきっといい人だったんだろう。その後の民主党の癌で死んだ山本孝史議員の追悼演説をしたのもこの人だった。当時この法案がとおったとき、文字通り泣きながら、絶対に今より悪くしませんから、と言ってた。でも、結果は。。。

統計があるわけではないが、生活できなくなった障害者とその家族が何人も自殺した。だが、なにしろ年間3万人以上が自殺しているのだ。この10年(実はそれ以上)で30万人以上が自殺しているのである(甲子園がいっぱいになっても5万だよ)。その数からすれば、この法案が原因の自殺などわずかなものである。だからニュースにもならない。

この法律の立案者の一人だった京極高宣という人は、08年末に朝日新聞に「重度の障害者施設へ行ったら貯金が1千万近くもある人がいた、負担できるなら負担してもらわねば」と言って、自立支援法の意義を強調する文を書いていた。

だが、現実には日本中から、個人の負担増により施設利用をやめたり、障害者施設がいわば歩合制(!)になったおかげで補助金が減り、サービスが低下したり、先進国とはとても思えないような話があちこちから伝わってきた。

京極高宣の発想は、ごく少数の「お金持ち」(と言ったって、京極高宣のほうがはるかにお金持ちだろう)の障害者から金をむしり取るために、他の「お金持ち」ではない障害者にも負担を強いるというものだったと言ってよいだろう。不穏当なたとえであることは十分承知の上で、あえて言えばテロリストが潜んでいるから一般人もろとも爆撃してしまえという、アメリカ軍的、イスラエル軍的論理である。(しかも、実際にはこんなお金は国の予算全体から見れば微々たるもので、社会福祉予算の足しになどならないのだが、「取る」ということが大切だったのである。)

結局、この法律のバックグラウンドは、新自由主義とかいうアメリカの市場万能主義の後追いをし、競争をあおり、自己責任を言いつのるやり方だった。経済優先(つまり金儲け)のために、自己責任と競争原理を導入することを目的としたものだった。自立支援法だけではない、20世紀末に決まった有事立法以来、共謀罪も、少年法改正も、高齢者医療法も、そして昨今の裁判員制度も、ここ10年ほどの間に決まったトンデモ法はみなこの筋道に乗ったものだ。前にも書いたが、こうした方向性を打ち出している人たちの狙いは、憲法改正、もっと端的に言えば9条をなくすことだろう。

しかし障害者自立支援法に戻ろう。スタートラインが平等でない競争など競争ではないし、ましてやそこに自己責任を問うことなどできない。当たり前の話ではないだろうか?自立支援法は障害者をこの同じスタートラインに立たせるために金を払えと言っているのだった。

 個人的には嫌いなたとえだが、障害者は社会のカナリアだというたとえ話がある。ご存じのように坑夫は炭坑には必ずカナリアのかごを持って入った。有毒ガスが発生すると、人より敏感なカナリアが先に騒ぎ出すので、炭坑内部の状態を知るバロメーターになるというのである。社会がおかしな方向に向かうと、まず障害を持つ人々が生きづらくなるというたとえ話である。

このたとえ話に乗れば、今の世の中は長年にわたる自公政権のおかげで、有毒ガスが発生しているのは間違いない。そして各地で違憲訴訟が起こされ、カナリアが思いっきり騒ぎ、自公政権が終わったことで(間違いなくこれが一番の理由であろう)、ようやく社会は少しこの有毒ガスの発生に気がついたのかもしれない。つまり、このあまりに理不尽な法律は廃止すると長妻厚労大臣が明言し、各地の違憲訴訟でも和解が成立し、そして昨日原告団と鳩山総理との面談も実現した。むろん、まだこれから、この法律に替わるどのような法律が作られていくのかはわからない。しかし、いまスタートラインに着いただけとはいえ、障害者を巡る状況は大きく変わったことは確かなのである。

障害者自立支援法訴訟の勝利をめざす

民主党に対する期待が徐々に低下しているらしい。数日前の朝日新聞でも支持率は25%などと出ていた。むろん民主の足を引っ張ろうと躍起になっているとしか思えないマスコミの発信である。どこまで本気にして良いのかはわからない。

ぼくは、この障害者自立支援法の廃止と国による謝罪だけをとっても、自公政権が終わったことに、とてつもなく大きな意味があったと考えている。鳩山さん、原発推進や普天間の件など、不満や不安はあるが、頑張って欲しい。本当にそう思っている。

ちなみに、先の京極高宣は、今年の初めに論文の盗用が発覚したことも付け加えておきたい。


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comment

アンコウ
にっぽん人さん、

コメントをありがとうございます。ただ、自立支援法の問題からどうして中国や韓国の話が出てくるのかがわかりません。そしてまた、「にっぽん人」として心を一つにしていくっていう言い方に対して、ぼくは非常に気色が悪い感じがします。

たとえば、皇室を手がかりとして、それを日本人の倫理観の礎にして、日本人の特殊性(選民性とでもいうのでしょうか)を強調する人がいますが、ぼくには全く意味が分かりません(ちなみに私は今上天皇には好感を抱いていますが、まさか日本が「神の国」だとは思えません)。

周りの国と協調せずに日本だけがすばらしい国になるはずないし、中国人や韓国人に悪感情を抱きながら社会的弱者を大切にする社会が作れるはずもありません。

その意味では今話題の極右のレイシスト集団が中国韓国に対する差別意識を煽りつつ、同時に障害者に対しても罵声を浴びせているのは、ある意味彼らとしては論理的に首尾一貫した方向性なのでしょう。

コメントはあなたなりのエールなのでしょうけど、申し訳ないけど、僕としてはコメントを読みながら、なんとも居心地の悪い気持ちになりました。
2012.06.26 16:23
にっぽん人
今、初めて知りました。私達にっぽん人は、そんな不条理を望んでません。勝手に政治家にすら理解されないよう、うまく進められ誤魔化され欺きたい者がやっている熾烈な許されない非人間的な冷たい心だと感じてます。中国共産党のようにヘイの外は一見急成長して良くなったように見せ、ヘイの内側に苦しい人や弱者を更に苦しい状況に置いて隠し放置するような政局をこの日本で誰が望むでしょうか?私達の思いは一つです。同じ星空の下に信じるものを共有し、同じ安心感で生きていられるように願ってます。人の上に人を作るなんて偽りの正義の上に福祉なんてあり得ません。霞ヶ関解体の意義や支援事業者予算等で票の支援を貰う議員とのパイプが強くなり、世間に上手く宣伝される税金の無駄より、苦しくて寂しくて孤独になる人があってはらないと皆信じて仕事をしてきました。障害者の方や困ってらっしゃる方、弱い立場の苦しい方が更に社会から遠ざけられる社会でいいわけはありません。中国人不法入国5万人、韓国人5万人と知って驚いてます。此処はにっぽんです。にっぽん人の願いを悲願にして、どんどん代わりに外国人を優遇して呼び込む政治は誰も望みません。小泉チルドレンは沢山落選しました。小泉さんのお城が建った話は中小企業がたくさん倒れ自殺者をたくさんうんだ話と同時に耳にされます。報道しなくても、にっぽん人なら心に刻みます。機会ある毎に早期解決を声を大に促していきましょう。韓国人国連批准の世界人権的視点で、矛盾を内包するのが嬉しいのは官僚天国と汚い金を手にしたがる人だけです。負けないで、信じて、頑張っていきましょう。心は一つです。それが一億にっぽん人です。負けないで!
2012.06.25 22:10
ヴァルデマール
谷田部さま、
コメントをありがとうございました。失礼ながら、ご返事は、本日2010年11月4日の記事としてアップさせていただきます。そちらを御覧ください。
2010.11.03 22:56
谷田部
京極高宣教授のお子さんも障がいをお持ちです
それに障がいの程度により所得の保障、負担軽減も障害者自立支援制度にはある
これは障がいが重い方ほど負担が増えることを懸念したため

まず現場の混乱、障がい当事者への誤った情報は、政治的な左翼勢力が自民叩きに利用したため
障がい当事者を政治的に利用したのが左翼勢力なのです

あと1割負担に関して
障がい当事者が経済社会的に自立できるために、負担という自信が必要になる
負担という経済的動機づけは、社会参画を促し、障がい当事者が社会の一員として生きるための武器にもなる
2010.11.03 18:05
ヴァルデマール
かろさん、

初めまして。

ご指摘ありがとうございました。さて、私の書いた文章の根拠はつぎのサイトです。御覧になってください。

http://news.livedoor.com/article/detail/4654288/

吉川氏に罵声を浴びせたのか、与謝野氏に浴びせたのか、はっきり言って判然としないのではありませんか?むしろ明らかに両者に向かって怒っているのでしょう。

むろん私の根拠にしたサイトがデタラメ書いていて、産経新聞だけが正しいことを言っている、というのでしたら話は別ですが。

尾辻さん自身があれは与謝野には言っていない、吉川に言ったのだと証言していない以上、ぼくの書き方が間違っていたとは言えないと思いますが、いかがでしょうか?

ついでながら、一応私のブログはオレンジ色の文字になっているところはリンクしてあります。上記のアドレスへ飛べます。
2010.06.14 13:35
かろ
かなり前になりますが、尾辻さんは与謝野さんに向かって罵声を浴びせたわけではないですよ、吉川氏にですよ。
よく動画と新聞よんでくださいね。
2010.06.14 11:38

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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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