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映画「ピクニック at ハンギングロック」

2011.12.12.15:53

ピクニック at ハンギング・ロック ディレクターズ・カット版 [DVD]ピクニック at ハンギング・ロック ディレクターズ・カット版 [DVD]
(2005/01/28)
レイチェル・ロバーツ

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例によってシネフィル・イマジカ。でも、実はこの映画は80年代中頃に今はなき下高井戸の名画座で見ている。なにしろ主演(?)のアン・ランバートという女優が桁外れに美しいことが印象に残った映画だった。上のジャケットの写真はハズレね。この映画を見たことのある人なら誰でも「桁外れの」美しさという形容にも賛成してくれると思う。確かにボッティチェリのヴィーナス(映画の中では天使と言われているけど、ボッティチェリの天使はあんまりかわいくないぞ)に似てるけど、もっと美人かも。と、思ってごそごそ探したら出てきました。当時のパンフレット。こちらの方がランバートの雰囲気が出てるけどピンぼけ。



ただ、なんだか意味不明だったことも記憶にある。今回見てもやっぱりよくわからない、割り切れない思いの残る映画だった。

1900年の2月14日、バレンタインデーにオーストラリアのハンギングロックという岩山で、近隣の女子寄宿舎学校の三人の少女と一人の女教師が神隠しにあったという事実か作り話かよくわからない話を映画化したものだそうだ。

しかし、この映画は、けっしてオカルトじみた話をテーマにしているわけではないし、見るものを神隠しの謎解きに誘うわけでもないと思う。むしろこの神隠しそのものがどうも現実感がない。行方不明になったというのに、彼女たちの親は全く出てこない。

そして、この神隠しをきっかけにして、厳格な学校と、髪の毛をうずたかく巻き上げるようないかにもビクトリア朝的と言っていいと思うけど、厳格な校長は、徐々に崩れていく。

だから、おそらく少女達を隠してしまった岩という自然と、不自然に厳格な当時の学校や時代風潮が対置されているのだろうと思う。岩山だけを映した場面が何度も繰り返し現れるが、それがだんだん顔のように見えてくる。

映画の最初の方にピクニックに出かける少女達がコルセットをキチキチに締め上げるシーンがあるが、行方不明になった少女達はそのキチキチのコルセットをはずし、裸足で岩の裂け目に姿を消し、相前後して姿を消した数学の女性教師は消える直前ズロース姿だったと証言される。(ちなみに、この少女達が岩の裂け目に姿を消すシーン、髪の毛を風にそよがせながら岩の間に入っていく後ろ姿が、なんだか分からないが、僕にはものずごく怖かった。なにが怖いのか。顔が見えないのが怖いのかなぁ。)

消えた少女達を町の住民や警官達が捜索するが見つからない。たまたまハンギングロックに来ていて、彼女たちの最後の目撃者になった近くの貴族の青年とその下男も独自に捜索を始める。青年はひとりハンギングロックで夜を明かし、ついに少女達が消えた岩の裂け目にたどり着く。しばらくして迎えにきた下男が汚れて放心状態の青年を発見し、さらに行方不明になった少女のうちの一人が岩場で倒れているのを見つける。

この少女と青年も含めて、何が起こったのかを覚えているものは誰もいないというのも、現実感が希薄な理由だろうか。ただ、最後に神隠しから帰還した娘が、退学前に女学校にもどってくるとき、もう完全に大人の女性のいでたちで現れることからも、月並みな表現だけど、事件は少女から女へのイニシエーションのようなものをあらわしているのかも。

ただ、厳格なヴィクトリア朝の道徳律(コルセット)からの、自然(岩山)のイニシエーションを経ての解放というラインでこの映画を見ても、なんかあちこちでよく分からないままのところが残る。まず、下男とセーラという女学校で校長にいじめられている少女が孤児で兄弟であるらしいのだが、結局二人の間になんの接点もないまま、セーラは最後に飛び降り自殺をしてしまう。青年と彼が見つけた少女のその後もどうなったのだろう?一方の校長は、どうやら少女たちが消えた岩山を上ろうとして転落、死体が発見されたことになっている。つまり岩山は校長を拒絶したということなんだろうけど。

監督はピーター・ウィアー。「刑事ジョン・ブック」というハリソン・フォード主演の映画を作った人で、この映画もハリソン・フォードの映画では一番好きな映画だ。この二本のおかげで、こんどはメル・ギブスン主演の「危険な年」というインドネシアを舞台にした映画を見たが、こちらはなんとなく西洋人が危険な国から危機一髪で逃れるという印象をもち、残されたインドネシア人たちはどうなるの!って、ちょっと不満の残る映画だったっけ。

2015年2月9日 追記
この記事はだいぶ昔に書いたものなのですが、いまだにヒット数が多く、昨日の夜から、何があったのかわかりませんが、100回ぐらいこの記事が検索されたようです。アン・ランバート目当てなのかなぁ? 一応、その後アン・ランバートは30歳を過ぎたころに、ジェレミー・ブレット版のホームズの「修道院屋敷」に出てきています。ただ、ここでは顔に大きな打撲傷を負ったシーンが多いのと、ちょっと頬の当たり肉付きがよくなったかな、という感じがしないでもありません 笑) ただ、古典的な上品な美女である点は変わりがないと思います。このホームズは現在NHKBSなんかでも再放送中だし、オンデマンドなんかで見るチャンスはあるのではないでしょうか?


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2015.07.28 21:39
アンコウ
y さん、

初めまして。コメントをありがとうございました。このエントリー、だいぶ昔書いたんですが、いまだに多くの方が覗いてくれるようで、うれしいことであります。

こんごともよしなに。
2015.02.26 23:02
y
自分も検索でたどり着いたのですが、J:COMの無料放送で放送されたのです。自分も気になってあちこち拝見しました。素晴らしい映画でした。
2015.02.26 16:54
アンコウ
コメントありがとうございます。いや、ちょっと外しちゃったかなと思っていたんで。。。ホント、うれしいです。どうもありがとう。
2011.12.14 17:21
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2011.12.14 16:03

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アンコウ

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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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