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坂口尚「宝石狩」

2011.06.13.09:14

一月ほど前に毎日新聞で吉本隆明が、原発はなくならないとして、悲しいことだけど、人類は科学の分野で新たな技術を知ってしまったら、それをやめて引き返したことはないと言っていました。そうすると、医学の進歩と結びついて「発展」してきたドーピングも同じように、なくなることはないのかもしれないな、なんてぼんやり思いました。。。

ただね、ここで引き返せなければ、数百年後の人類はありえないでしょう。

今生きている人たちは、自分が生きている間は大丈夫だからいいや、と思っているんですよ。多くの老人たちが、今さえ良ければいいと思っているんですね。自分がいなくなった後の人類のことなんかどうでも良いんですよ。いっそのこと、社会の仕組みから老人の言い分を排除する事が必要なんじゃないか、そんなことまで考えてしまいます。若い人たちは老人の口車に乗らず、自分の足下をしっかり見つめて、同時に理想も忘れず、自分たちの将来にとってなにが一番大切かを考えて欲しいところです。偉そうですいません。こういうのがまさに老人の戯れ言というのかもしれませんね。

というわけで、もうずいぶん前に亡くなりましたが、坂口尚という漫画家がいました。えらくリリックで時としてセンチメンタリズムにまで堕しかねないような漫画を書く一方で、なかなか忘れられない不思議な幻想的な漫画も書いた人でした。つれあいは気づいているかどうか、実は次女の名前はこの人の名前から一字拝借したんですよね。

その坂口尚に「宝石狩」という漫画がありました。ストーリーを説明するのはちょっと面倒なんですが、廃墟となった地上で人々はリルメルンという宝石探しに血道を上げています。この宝石を手に入れると至福の境へ行けると言われ、主人公の男は妻を置いてそれを探しに出かけ、命の危険を冒してなんとか手に入れて帰宅します。実はこの主人公たち人類はすでに(おそらく核)戦争によって死滅していて、リルメルンは生まれるはずだった子供たちの魂だったというわけなのです。それに気づいた主人公と妻は「私たちは 心の片隅で あの子のことを 忘れずにいたんだな...だから 私たちは さまよっていたんだよ すでに肉体を失った人間だったのに...これで私たちは成仏できる...」とつぶやき、姿を消します。リルメルン(子供たちの魂)はこの廃墟となった地球を見下ろす山の上に集まり輝きながら、いつの日か、新しい世界となったときに生を賜るのを待っています。


©「星の動く音」奇想天外社 1981

坂口尚の代表作は、きっと実験的な「たつまきを売る老人」や「魚の少年」、あるいは晩年の大作「石の花」や遺作の「あっかんベェ一休」なんだろうとおもいますが、ぼくはどうもこの「宝石狩」が忘れられない。同時に今の時代、こんなふうに大人たちがよってたかってダメにしてしまった今のこの時代を批判するものに思えてしょうがないんですね。


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アンコウ

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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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