前回記事に対する こばやし さんのメッセージから、ここらでちょっと選手の名前の表記について考えてみます。
以前からオランダ語圏の人名表記って難しいんですよね。少し前だとチュニスなんて言われていた選手も、当時のミロワールのインタビューではトェニッセと言ってましたし、最近ではムセウなんて、最初にミロワールで綴りを見たときには、まったく読めませんでしたからね。トェニッセやブレーキンク、あるいは今回のケーケレイレかククレールかに共通する綴りが eu の綴り。ドイツ語だと ö と同じで、第二外国語ではオの口の構えでエと言うと教わる奴です。カナ表記は無理だと言えばそれまでですが、ただ、カナにするときにはある程度これまでの決まりというものがあります。
たとえばドイツの文豪ゲーテ。 Goethe と綴りますが、この oe が ö と同じ。明治時代にはギョーテとかギョエテとかゴェテとかいろんな表記があったようですが、いまではゲーテと読んでいますね。雑誌の名前もゲーテでしょう?ドイツ語に限れば、おそらく人名仮名表記にあたってこの ö はまず100%、エというカナに置き換えられていると思います。
あまり原音主義なんて言うと変な仮名表記になるし、ある程度の簡略化が必要なのだろうと思います。また、本人に聞いたから間違いない、という人もいますが、たとえば津軽出身の太宰治は自分の本名をツスマ・スーズィと言っただろうと思うのですが、ツシマ・シュウジでしょう?(これは私の先生の言った話の受け売りなんですけどね 笑)
あと、すでに仮名書きが定着しているオランダ語圏の有名人物のつづりが参考になることもありますが、なかにはユイスマンスやゴッホのように、フランス語読みや英語読みが定着しているケースもあるので、なかなか難しい。
さらには、ベルギーは言語境界線があって、オランダ語圏とフランス語圏に分かれていますから、どちらの出身かでオランダ語読みしたりフランス語読みしたり、特にファーストネームなんかはわざとフランス風につけたりする人もいるでしょうしね。そうなると、もう手に負えません。
いいじゃない、自転車競技の世界ってフランス語が公用語なんだからフランス語読みすれば。こういう意見もあるでしょう。キム・テジュンではなくキン・ダイチュウっていうのに対応しますね。中国行けば日本人の名前も中国語読みしているよ、と聞いたことがありますし。
それならついでにジロではイタリア語読み、ブエルタではスペイン語読みすれば? でもね、同じ人がそれぞれ違う読み方になっちゃうからねぇ。1999年のブエルタをスカパーのスペイン語放送で見たとき、ウルリッシュと言っていたのには、やっぱり違和感あったしねぇ。
そこで、ある程度の指針として、岩波の人名辞典に各国語の綴りのあらましが出ているので、それに従うのがよいだろうと思います。以下、そのオランダ語のところを一部ピックアップしておきます。
-------以下、岩波西洋人名辞典増補版 1981年 より------
ae:ア、アー、 b:語尾ではプ(○ね)、 d:語尾ではト、 ds:ツ、 ei:エイ、 eu:エ、エー、 euw:エーウ、 ey:エイ、 g:ハ行、 ieuw:イーウ、 ij:エイ j:ヤ行、 oe:ウ、ウー、 oei:ウイ、 oo:オー、 ou:アウ、 u:ユ、ウ、 sch:スフ、 ui, uy:オイ、 v:フ、 w:ヴ、 y:子音の後ではアイ、
------
他にもありますが、この程度で。興味のある人は図書館でみてみてみてね。
たとえば、宇都宮の世界チャンピオン Dh
ae nens はダーネンスだし、往年のスプリンター M
ae rtens もマールテンス。ミスターパリ・ルーベの De
V l
ae minck はデ・フラーミンク、B
oog er
d はボーヘルトだし、B
oo nen もボーネン、Muse
euw はミュセーウとなり、Th
eu nisse もテニッセとなります。ま、やり出すときりがないけど、今回はこの辺で。
さあ、ケーケレイレ(Keukeleire しつこくこの表記で行きます 笑)、今後サイスポなど自転車雑誌を賑わすような大物選手になるでしょうか。
メッセージをくれた こばやし さんに感謝。
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