1931年の映画。ずっと前に
シネフィル・イマジカでやっていたのを録画してあったのだけど、なかなか見る気にならなかった。なんといっても、映画がサイレントからトーキーに変わってまだ浅い頃の映画だからねぇ。
しかし、なんと豊かな表現であることか。ちっとも退屈しなかったし、今ではあまり見ない、ある意味いろいろと「解釈」したくなるシーンがたくさん出てくる。山ほど真似されて、ヴァリエーションもたくさん生まれ、飽きられて今となってはあまりやられなくなってしまったんだろうけど、なんか新鮮な感じがするシーンがたくさんある。
内容は、連続少女殺人事件の犯人を警察だけでなく、暗黒街のギャングたちも追い詰めていくというもの。BGMや効果音は極力排除され(というかBGMはなかった?)、犯人の口笛だけが印象に残る。しかもこの口笛の吹き方が犯人の心理描写になっているわけなのだ。
主役のペーター・ロレの顔がものすごい。最初は影や後ろ姿だけしか出てこないのだが、警察が犯人像を推測している言葉にかぶって、始めて鏡を覗く彼の顔が出てくる。最初普通の男の顔なのだが、突然目をカッと見開くと、これがものすごく怖い顔になる。この後も暗闇のシーンでロレの目がやけに目立つんだけど、なにか細工しているのかなぁ。
ペーター・ロレはこの後ナチ時代に亡命して、「カサブランカ」とか「マルタの鷹」といった
ハンフリー・ボガードの映画でちょくちょく見かけることになる俳優で、なんとなく小悪党というイメージだけど、この映画でのインパクトはすごい。
カメラが室外から窓を通して室内へ移動していくのなんかも、ヒッチコックにもあったような気がするけど、当時としては斬新だったんだろうなぁ。黒白のコントラストの強さなんかも、サイレント時代の表現主義映画ってやつの遺産なんだろうと、ちょっとお勉強的に見てしまう。最後のばたばたとした終わり方も、この頃の映画特有。
俳優たちの動きはやはり古風。なんというのか、チャップリンとかキートンとかって、今の目から見たら動きが大げさでしょう?同じようなことがここでもある。舞台演劇的とでも言うのかなぁ。
ときどきこうして大昔の映画を見ると、いろいろと勉強になる。ま、勉強してどうなるって言えばそれまでなんだが。。。そう言えば、同じフリッツ・ラングの「マブゼ」も録画だけしてまだ見てないなぁ。
良ければ、下のボタンを押してみてください。

にほんブログ村
- 関連記事
-
スポンサーサイト
trackbackURL:http://tatsuya1956.blog48.fc2.com/tb.php/47-3e92b1b1