
面白かったです。漱石は拙ブログのモットーにしているのでもお分かりの通り、大好きな作家ですが、この本を読んで、漱石がますます好きになりました。
昔、古本屋で新書サイズの全35巻の漱石全集を2万円で手に入れて、数ヶ月間漱石ばかり読んだことがありました。さすがに小説までで、文学論以降の評論などは手をつけられませんでしたが。。。

そんな中で、「満韓ところどころ」を読んだ時、漱石が帝国主義的な植民地政策を肯定しているとは思わなかったけど、ときどき中国人についての表現に差別的なものを感じ、漱石も「時代の制約」の中にあったのだな、と思った記憶があります。
それは、この本でも「漱石は、日本人の中国人・朝鮮人に対する差別への知的批判は持っていましたが、自分の内部を厳しく点検して、その批判を血肉化するには至っていなかった」(p. 180)と書かれています。
初期の漱石は、その個人主義的(個人として立っているという「人権重視」とも言い換えられるものでしょう)なものの考え方と、当時の日本の国家主義的なものが、本来矛盾するはずなのに、共存していたので、時々戦争賛美のような言葉を発したり詩を書いてしまっています。
だけど、「満韓ところどころ」を経て、その後のいろんな小説の中に、無論当時の検閲制度下で、当時の日本が進んでいた軍国主義的国家主義的方向を暗示的に、また小出しにしながら、批判します。そして最晩年には「内なる排外的な『国家主義』を克服」(p.274)したわけです。
考えてみれば漱石は日清日露戦争から第一次世界大戦と、戦争の時代に生きてきたわけでした。だけど、漱石の小説をその時代背景を考えながら読んだことが、ほとんどなかったな、と思った次第です。なんとなく漱石の小説って、時代を超えた心理小説のように思っていました。(でも、そう言えば、江藤淳の「漱石とその時代」に、兄嫁との関係の中で「戦争の時代」がキーワードになっていたような気がし始めてきましたが、この本、その後大岡昇平の漱石論の中でめちゃくちゃ批判されていた?ので、記憶から抹消してました 笑)
漱石は1916年に49歳で死んでいます。もしもっと長生きしていれば、日中戦争が始まった時には70歳。どんなことを思ったでしょうね。
もう一度順番に全部読み直したいな、と思わされました。
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