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映画「マルケータ・ラザロヴァー」覚書き

2022.08.10.14:53



1967年のチェコの2時間45分の白黒映画です。13世紀のボヘミアが舞台。当時のこの地域って地主は盗賊みたいなもので、雪の多い寒い気候と狼だらけの森の中、汚い毛皮の服を身にまとい、城というより高台の廃屋みたいなところに住んでいて、王の外国人使節を襲って人質を取ったりして生活しています。

登場人物も入り組んでいて、途中で誰が誰だかわからなくなります。しかし、白黒の画面がとても綺麗です。フライヤーには「『アンドレイ・ルブリョフ』や『七人の侍』などと並び評され」とありますが、まあ、白黒の映像的には確かに方向性は似ているかなぁ。細部にこだわる大道具小道具の類も同じものを感じます。最初の方ではゲルマン監督の「神々のたそがれ」を思い浮かべたりしましたが、あそこまでぐちゃぐちゃではないですが 笑)

サイレント映画のような画面いっぱいの説明文が出てきて、この後のシークエンスが先に説明されるんですが、それでもなかなかストーリーがわかりづらいし、そもそも登場人物の見分けが、特に最初の方ではまるでつきません。もう一度見ればずいぶん違うのでしょう。ただ、もう一度行くかなぁ。。。??

BGMが結構すごくてグレゴリオ聖歌のような短旋律で、ヴォカリーズのようでありながら、明らかに歌詞があるところもあって、映像と明らかに関連していることを歌っているんじゃないかと思ったんですが、字幕がないので、実際はどうなのかわかりません。

中世のこの地域はキリスト教が人々の間に行き届いている時代ではないけど、立派な教会の修道院(これだけが唯一この映画の中で出てくる清潔感がある綺麗な場所です)が丘の上に聳えていたりします。主人公のマルケータもその修道院へ入ることになっていたんですが、隣の地主の盗賊騎士に攫われて暴行されたにも関わらず、互いに恋に落ちてしまうというのがメインのお話。

しかし、裏を読めばこの時代のキリスト教と土着の信仰のせめぎ合いなのかな、なんて思いました。途中に何度も出てきて、ナレーションと語り合う(?)乞食修道士も、キリスト教の教えに基づいて生活を送っているようには見えません。

たとえば、ベルイマンの「第七の封印」や「処女の泉」なんかも、キリスト教と土着の信仰の対立が出てきます。ただ、この二つの映画のベルイマンは、その後のベルイマンからは想像もつかないことですが、明らかにキリスト教信仰に肩入れしていますが。また、タルコフスキーの「アンドレイ・ルブリョフ」にもキリスト教の教えに反する土着の乱行パーティーのようなシーンがあり、それは官憲によって取り締まられていました。

チェコ映画は以前ここでも紹介した「火葬人」(1968年)がものすごい映画で、いまでも時々思い出すような強烈なインパクトがありました。あの映画も今回のものもほぼ同じ時期の映画です。

この時期のチェコ映画はこの映画と同じ67年の映画で、アカデミー外国語作品賞をとったイジー・メンツェル監督の「厳重に監視された列車」という、艶笑譚のようなユーモラスな話が最後の5分で全部ひっくり返るような衝撃的な終わり方をする映画もありました。

他にも65年の「大通りの店」なんて、この時代の共産党政権のもとで、よくこんな話(ナチスに併合された時代にナチスに協力したチェコ人たちと無関心だった主人公)を映画にできたな、と思うような映画もあって、いわゆるチェコ・ヌーヴェルヴァーグの時代だったんですが、68年夏にワルシャワ条約機構軍が「プラハの春」を潰して、チェコ映画の春も終わってしまったのでした。

さて、個人的には好きなタイプの映画ですが、この暑いなか、すでに4回目のワクチンは打ったとはいえ、渋谷の照り返しのひどい中をもう一度見に行くというのは、うーむ、ちょっとなぁ。


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アンコウ

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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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