
レオナルド・ダ・ヴィンチは高校時代にNHKで「レオナルド・ダ・ヴィンチの生涯」というドラマに夢中になりました。このドラマを書籍化したものも手元にあります。これについては以前拙ブログにも書いたことがありました
http://tatsuya1956.blog48.fc2.com/blog-entry-1076.html。
2005年に日本円にして13万円で落札されたボロボロの絵画が、2017年には500億円以上になって、絵画オークションで史上最高値で落札されます。レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたとされるキリストの肖像「サルヴァトール・ムンディ」。そこに至るまで、そして落札後現在に至るまでを追ったドキュメンタリーですが、おもしろかったあ。
なにしろ17、8世紀ごろにはイギリス王室に存在(財産目録にある)していたことは確かだけど、その後100年以上どこにあったか不明だった絵で、そもそもこの絵がイギリス王室のものと同一かどうかもわからない。また13万で落札された時は5つに割れていたそうで、その後アメリカの修復家が修復したけど、その修復の仕方もヨーロッパの専門家からは批判されます。そもそもそれ以前にも(仮にこれがレオナルドの真筆だとしても)後世の加筆がかなり激しかったようです。
そんな絵を、美術商やオックスフォード大学の名誉教授、美術館の学芸員、ロシアの新興財閥やサウジの王子などなど、いろんな人がいろんな思惑で、レオナルドの真筆であると思い込む。
そこに本物であるかどうかには興味がないマーケティングの専門家が、みごなイメージ戦略でこの絵の価値を高めた結果、この絵は500億というとんでも無い額にまで高騰する。
一方で、これはダ・ヴィンチの弟子たち(=工房制作。ちなみに弟子や工房によるサルヴァトール・ムンディの絵は2、30枚あるそうです)によるものだと主張する専門家や学芸員も現れ、ルーブルでの展覧会で展示されると噂されていたのに、展示は見送られ、その後、どこにあるのかも不明のまま、現在に至る、というわけです。
一応500億で落札して所有しているのはサウジの、例のジャーナリストの殺害を命じたのではないかと噂されている王子らしいですが。。。(この映画の中ではこの事件についての言及は全くなしなのは、どういう思惑があったんでしょうね?)
うーん、トリノの聖骸布っていうのがあります。処刑されたキリストを包んだ布で、キリストの顔と体が布に転写されているというもの。まあ、現在の人でこれを本物だと信じる人はいないでしょうけど、キリスト教徒の中には信じる人もたくさんいるわけで、何年かに一回公開されるとものすごい数の人が集まって泣いています。
また、これも
以前拙ブログで書きましたが、例の偽ベートーヴェン事件の時のことを思い出しました。難聴の作曲家という触れ込みで「HIROSHIMA」という曲が、クラシックの曲としては大ヒットしたけど、実は別に作曲家がいたという話で、音楽に付随する「物語」が、僕らの「感動」にどれぐらいの影響力を持っているのか、なんてことを書きました。まあ、この事件もすっかり忘れられてしまいましたが、
森達也の「FAKE」というドキュメンタリーも紹介したことがありましたっけ。
つまり、今回の絵も展示会では涙を流しながら鑑賞している人がたくさんいるわけです。そして上記のマーケティングの専門家はそうした人たちの姿を感動的な映像にして、レオナルドの真筆であるというイメージを盛り上げたわけですが、その感動には、この絵の作者がレオナルドだという知識(先入観)がどれぐらい影響を及ぼしているのでしょう? 逆に、これがレオナルド個人ではなく、彼の弟子や追随者による作品だとしたら、それを知った上でもやっぱり涙を流せるのか? そうすると、芸術作品に感動するっていうのはどういうことなんだろうと思っちゃいます。同時に美術品のオークションや取引のダークサイドも、かなりおぞましいものがあることを教えてもらいました。
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