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坂口尚「石の花」と映画「アンダーグラウンド」

2021.08.28.23:54



今日は午前10時から午後5時まで、お昼ご飯を挟んで、坂口尚の1980年台の漫画「石の花」を読んでました。第二次世界大戦中のユーゴスラビアを舞台にした漫画なんですが、なにしろ全5巻、1400ページ、主要登場人物だけも20人以上という大長編。史実に沿った非常に濃い内容です。

その後パソコンの前に座ったんだけど、流石に目が全然焦点合いません。いやはや、歳ですねぇ。。。苦笑)

この漫画、実はNHKのBSで一昨日放映されたエミール・クストリッツァ監督の「アンダーグラウンド」という映画のせいで思い出して、納戸の奥から引っ張り出してきたのでした。間違いなく25年ぶりぐらいで読んだんじゃないかなぁ。

戦争が始まりユーゴスラビアがナチスドイツに蹂躙される、、、と簡単に言えないのがこの国の悲劇です。ユーゴスラビアという国は5つの民族が4つの言語と二つの文字を使い、3つの宗教を信じている国家で、ナチスドイツに占領された時にも、反ナチ色が強かったクロアチアに対し、セルビアではファシスト団体がナチに協力し、多くの人々がナチスを歓迎した(歓迎したふりをした)のでした。

一方国内の反ナチのパルチザングループにも、戦前の国王を担ごうとする王党派組織と、共産主義組織があって、互いに反目し合っています。そこに強制収容所の物資を横流しして、この戦時に私服を肥やそうとする連中や、ナチスの優生思想と社会的ダーウィニズムを信じて疑わないSSのエリート将校も出てきて、さらには裏切り者やスパイや二重スパイも入り乱れるなか、主人公の少年と少女は数奇な運命に翻弄されるわけです。

坂口尚らしいリリカルなシーンが多いし、絵が上手い。登場人物はものすごい数になりますが、人物の描き分けも明確だし、戦車や戦闘機の格好良いこと 苦笑)

クストリッツァ監督の「アンダーグラウンド」の方もだいぶ前に観てます。パンフが出てきました。
IMG_4473.jpg

こちらは第二次大戦から1990年代の内乱に至るまでのユーゴが舞台で、一人の女を巡って二人の男とドイツ人将校が鍔迫り合い、パルチザンとなった一方の男をもう一方が戦争は終わってないと騙して、地下に潜伏させ、自分はその女と結婚して戦後のユーゴで政府の要職につくが、地下に潜っていた連中が外に出てみると、ユーゴの内戦の真っ只中で。。。

「石の花」で描かれた第二次大戦中のユーゴスラビアの民族的・イデオロギー的対立は20世紀末のユーゴの内戦において再燃するのですね。

主人公たちの生き方が戦中戦後のユーゴ史を暗示するような作りなのは、ギリシャの監督テオ・アンゲロプロスの映画のようだけど、長回しで静謐なアンゲロプロスとは違って、飲み食いのシーンが多く、騒々しくパワフル。

冒頭からブラスバンドが小走りで変に陽気な音楽を奏で続け、しかもなにかドリフのコントのようなうるさくふざけたシーンの連続。俳優の演技もどこか大袈裟なコミカルさがあるし、取っ組み合いになっても酔っ払いの喧嘩みたいだし、銃をぶっ放してもどこかリアリティがないし、ゲシュタポによる拷問もモンティパイソンみたいです。

ところが、後半に入ると、ドタバタした中での悲痛で美しいシーンがいくつも出てくる。特に逆さ吊りになったキリスト像の周りを燃えながら旋回する電動車椅子のシーンと、それにつづく教会の鐘の引綱で首を括った男の姿と、その前を飛ぶアヒルのシーンはなかなか忘れられない悲痛なシーンだと思う。

最後の井戸から水の中を泳いでいき、おそらく死後の世界でみんなが一堂に会するシーン(これ前に書いたけど、テレンス・マリックの「ツリー・オブ・ライフ」のラストみたいです)も、どこか騒々しく美しく、そして悲痛。この変なアンバランスさにたじろぐ、そんな映画です。

というわけで、今回は今はもう存在しないユーゴスラビアという国をキーワードに坂口尚の漫画とクストリッツァの映画のご紹介でした。共通項はどっちもヒロインがかわいい。坂口尚の描く少女は、手塚治虫の少女より恥ずかしげで儚げ。クストリッツァの映画ではつねに美(小)女が出てきますが、「アンダーグラウンド」の女優もとんでもなく美人です 笑)


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アンコウ

アンコウ
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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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