
表紙の絵はロヒール・ファン・デル・ウェイデンが奥さんを描いたのではないかと言われているもので、30年以上前にベルリンのダーレムの美術館で見た時に魅了されたという個人的な思い出があります。

向こうの美術館はフラッシュ焚かなければ写真OKなので、いろいろ撮りましたが、この絵はこちらをじっと見つめる目の力強さがすごくて、500年間俺を待っていてくれたんだと思ったのでした 笑)
というわけで、この絵だけで手に取って読み始めたら、絵の好みがかなり私の趣味と合致して、とても面白く、あちこちにマーカーで線を引いたりして、時間をかけて読みました。
ほぼ年代順に有名な画家たちの作品が解説されるのだけど、その作品が一般的な美術史で取り上げられるものとは少し違っていて、レオナルドやラファエロも取り上げられているけど、どちらかというと北方ルネサンスのロベルト・カンピンやファン・エイク兄弟、ドイツルネサンスのアルブレヒト・デューラーのほうが比重がかかっている。目次を見ればわかるけど、ここにはミケランジェロもレンブラントもフェルメールもゴヤも、そしてなによりフランス印象派が全く扱われていない。ピカソや20世紀の抽象画の画家もいない。最後の二つの章はシャルフベックと、3年ぐらい前に上野で展覧会が開かれたハマスホイの北欧の暗い画家二人と、バウハウスにつながる工芸美術作家ヴァン・デ・ヴェルデという地味さ 笑)
各章がいろいろつながりを持っていて、特に19世紀のローマで活躍したドイツ人画家たちやフランス人たちから、イギリスのラファエロ前派へ関連づけられていく後半の章は、知らないことばかりで面白かった。
で、こうやっていろんな画家たちの絵を見ていくと、やっぱり桁違いに上手だなと思うのはファン・エイク。ファン・エイク以前のロベルト・カンピンや以後のロヒール・ファン・デル・ウェイデンと比べても、描かれている(描かれていない)空気の密度というのか、空間的な奥行きが桁違いに澄んでいて厚みがある。この本とは別の本で読んだんだけど、「アルノルフィニ夫妻の肖像」で後ろの壁にかかっている数珠玉の超拡大写真をみると、フェルメールが200年以上後にやるような光を点として描くことをやっているのだという。一見輪郭を細密に描いているようにみえるファン・エイクの絵だが、この数珠玉には輪郭線はまったくなく、筆でさっとなぞらえただけの色の斑点がおかれているのだそうだ(小林典子「ヤン・ファン・エイク 光と空気の絵画」参照。この本、私にはちょっと専門的すぎて敷居が高すぎ、途中で挫折しました 苦笑)。
というわけで、表題の本に戻ります。一言で言えば面白いです。ですが、この題名はちょっといただけない。買う時ちょっと恥ずかしかったです 笑)扱われている画家がかなりマニアックだし、それなりに西洋絵画を見慣れている人向きでしょう。
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