
ソ連ロシア映画ってのはとんでもないのが目白押しです。節ブログでも紹介したアレクセイ・ゲルマン監督の
「神々のたそがれ」や
「フルスタリョフ、車を」なんかは、なにか映画の画面に写ってないものも映画の一部であるかのような、メタ映画的なものを感じさせられたし、ヴィターリー・カネフスキー監督の
「動くな、死ね、甦れ!」は、逆に映画の中に監督が介入していく逆の意味でのメタ映画的なものがありました。
また、最近見た中では一番衝撃的だったアンドレイ・ズビャギンツェフ監督の
「ラブレス」などはもっと映像美追求形で、画面作りに厳格さが感じられて、タルコフスキーの系譜につながるのかもしれませんが、内容的には暗澹たるもの。
というわけで、この映画もなんと言ったらいいか。。。どこまで演技なのかなと思えるところがたくさんありますが、セックスシーンなんか本当にXXXんだろうと思われます。出ている俳優はすべて素人だそうで、ほとんどが映画のために作られたソ連時代を復元した町の中で2年間生活し、当時の衣装を着て、当時の料理を食べ、当時の酒を飲んだそうです。その街の中ではソ連時代の紙幣が使われ、新聞すら当時のものが毎日届けられ、出演者たちもそんな環境の中でお互いの信頼関係を築いて、愛し合い憎み合ったと。しかもその間もカメラは至る所で撮影していたということで、そこまでやらないとカメラの前であんなのあり得ないでしょう。
いや、セックスシーンだけでなく、飲んだり食ったりするシーンも本当にウォッカをがぶ飲みして完全に酩酊、挙げ句の果てに娘がカメラの前で嘔吐します。手持ちカメラでスタビライザーをわざと効かせないのか、細かく揺れるしピントもときどき会ってなかったりして、ドキュメンタリーを連想するかもしれないけど、俳優は決してカメラを見ませんし、特に後半はドキュメンタリー的要素は全くありません。
この映画、前半と後半で雰囲気が一変します。時代は1952年ですから、まだスターリン独裁の時代ですね。以前書いたけど、タルコフスキーの「鏡」の中で印刷所に勤める母親が「誤植」に怯えるシーンがありましたが、実際スターリンの綴りを間違えただけで強制収容所に送られたそうですからね。
主役は40代のウェイトレスで、ソ連の兵器開発のための秘密都市の食堂で、科学者たちを相手に料理を提供し、仕事を終えると20代の同僚と二人で高級酒やキャヴィアをこっそり開けて酒盛りをし、恋バナしたり喧嘩したり、挙句取っ組み合ったりします。そしてある晩、科学者たちを招いたパーティーでソ連に招かれた50代のフランス人科学者と主人公の女がデキちゃいます。
科学者たちの研究とやらも、なんだか怪しげなものなんですが、後半、主役の40代の女がある日突然KGBに呼び出され、外国人と寝たことが反逆罪だと非難され、さらにフランス人科学者がスパイだと言う報告書を書くよう命じられます。このシーンがすごい。暴力は一回だけですが、KGBのおっさんの言葉によるイタブリが尋常じゃない。酒を与えて油断させたと思うと、突然防音室へ連れて行って素っ裸にさせ、屈辱的な脅しをかけ、さらに自分で殴っておきながら、それをいたわるようなやり方で懐柔、ついには女を自分の言う通りの報告書を書かざるをえない状況へ追い詰めていきます。それどころか、いたわられた女はおっさんに好意すら感じているようなコケットリーを見せ始めます。
このあたりも、なんか演技ではないような気がします。そして解放された女は同僚の若いウェイトレスに対してマウントを取ろうとするような命令を発して映画は終わります。他人を自分の思い通りにさせようとすることの「悪」というのは、まあ、誰にでもあるものなんでしょう。ソ連時代はそれを権力を使ってやっていたわけで、そんな社会で生きていた人たちは、さぞかし大変だったことでしょう。
うーん、例によってこの映画を面白いと思う人はどうかしてますね(天に唾する文句ですな 笑) DAUナターシャという題名ですが、ナターシャは主役の女の名前です。監督自身は2年かけて撮影した膨大なフィルムを使って、全部で16本のDAUシリーズを発表すると言っています。監督の意図はソヴィエト時代の再現ということのようですが、次のを見るかどうかは、なんとも。。。苦笑)
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