FC2ブログ
2020 12 << 12345678910111213141516171819202122232425262728293031>> 2021 02

グルジア映画「懺悔」

2020.08.05.14:33

懺悔

今はジョージアって言うんですね。昔「ピロスマニ」っていう画家の映画をソヴィエト映画の全貌シリーズで見たことがありましたが、イメージとしてはスターリンが生まれたところぐらいのイメージしかないですねぇ。

この映画、今から見ればありがちな独裁者批判の映画なんですが、作られたのが84年で、これってソ連で公開されるはずもない映画だったんですね。それがゴルバチョフがソ連のトップになってペレストロイカのお陰で公開されるや、ソ連国内で大評判となり、カンヌで大賞を取るとともにソ連・ロシア最高の映画賞の受賞作品となったのでした。ちなみにこのロシア最高の映画賞はニカと言って、88年にこの映画が取った後、拙ブログでも書いたゲルマン監督の「フルスタリョフ、車を!」「神々のたそがれ」、ズビャギンツェフ監督の「父、帰る」、ソクーロフ監督の「ファウスト」なんかが取ってます。

ある市で元市長の葬式が行われ、みんなが立派な人だったと褒め称え埋葬されたんだけど、翌日になると死体が掘り起こされて自宅の庭に立てかけられている事件が起きる。それが3回続き、ついに犯人の女がつかまって裁判になり、その女の父母らが市長によって粛清された過去が暴かれる、というようなストーリーです。

この市長の造形がすごい。ヒトラーのちょび髭、スターリンの下で粛清の嵐を吹かせたベリア風の鼻眼鏡、ムッソリーニの黒シャツ。で、笑うときの口の形がちょっと漫画のように口角が綺麗に上がって、どこか「薄い」笑いという感じで怖い。ちょっとオドオドしていて、市民のいうことに耳を傾けているようなふりをし、ひょうきんで突然ヴェルディの「イル・トロヴァトーレ」からアリアを歌ったりして人々を油断させながら独裁者になっていきます。途中の演説ではこんなことを言います。

「孔子はこう言った、『暗い部屋で猫を捕まえるのは難しい、猫がそこにいないなら尚更だ」と。我々の使命は困難なものだが決意を持てば『暗い部屋でも猫を捕まえられる、たとえそこに猫がいなくても』」

まあ、見事に部下たちも暴走して「いない猫」を無理やり捕まえます。こうした独裁ぶりを裁判で知った市長の孫は。。。。

と言うわけで、僕としては裁判の終わった後の孫の反応やその父親(つまり市長の息子)の行動に何か食い足りなさを感じたんですが、この映画の魅力はそういうストーリーとかスターリン揶揄とか、そういう面以上に、シーンの面白さ、美しさが素晴らしいです。どこかシュールな、あえて言えばクストリッツァ風のユーモアがあって、ちょっととぼけていて、それなのに怖い。

例えば、ここで出てくる官憲はみんな古代ローマ帝国風の鎧兜とマントを着ていて馬に乗っています。そんなのが狭い街の路地を追いかけてくる。かと思うと最初の方の市長の就任あいさつの場面では、すぐしたの水道管が破裂して、みんなが水を浴びる。そんな中で表情も変えずにタイプを打ち続けるビショビショの秘書。

ソ連ではシベリアへ送られた人たちが木材伐採した切り口に自分の名前と居場所を掘りつけておくことがあったんですね。その材木が運ばれてきて、万が一でも残された家族の目に触れれば、彼がまだ生きていることがわかるわけです。まあ、奇跡みたいなものなんでしょうけど。その材木置き場へ行く母と娘の場面は、アルヴォ・ペルトの音楽が流れ、膨大な量の丸太の前を母と娘がふらふらと歩き回る悲痛な美しいシーンです。

ペルトに限らず、音楽の使い方もいいです。喜びの歌をドイツ語で歌っているシーンにかぶせて、洞窟の中を刑場(このシーンでは、腰まで水に使って判決を聞くんだけど、タルコフスキーの「ノスタルジア」とか「ストーカー」のオマージュでしょうか)へ向かっていきます。あるいは収容所?の所長が女と結婚行進曲を連弾で弾いているシーンの奇抜さ。そして女が突然目隠しをして剣と天秤を掲げるシーン。いわゆる法のもとの正義の女神像になるシーン。市長の息子の夢?のシーンで魚を貪り食う市長が出てきて、その後我に帰った男の手には魚の骨が残されているというような不思議なシーン。

こういう幻想的で奇妙なシーンや、登場人物の突飛な行動が面白い。なんかロシア映画ってこういうのが多いです。本来3部作の最後のものだそうですが、1部と2部も見てみたくなりました。 YouTube に予告編がありましたので、貼っておきます。





よければ、下の各ボタンをポチッとお願いします(おまじないみたいなもんです 笑)

にほんブログ村 自転車ブログへ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト



comment

post comment

  • comment
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackback

trackbackURL:http://tatsuya1956.blog48.fc2.com/tb.php/3797-0262435f

プロフィール

アンコウ

アンコウ
**********************
あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、クラシック音楽(特にバッハ)、友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎても困るが)。少し前から草食動物と化そうと「努力」しています。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

* 時々コメントが迷惑コメントとして、こちらにも通知されないまま、ゴミ箱に入れられてしまいます。これは管理ページで迷惑メールをチェックすれば見られるのですが、そんなところは滅多にチェックしないので、承認待ちの印が表示されない場合は、ご面倒でも書き直しをお願いします。2017年8月3日記す

カテゴリー

openclose

FC2カウンター

Amazon

月別アーカイブ

検索フォーム