
昨日NHKのBSでやっていた映画。1985年のクリント・イーストウッドが監督主演した西部劇です。どこで聞いたか、「シェーン」のオマージュという知識があったので、見てみました。
いや、見ている最中はほぼ笑ってましたね。「シェーン」そのままやないか!って。無論完全に同じはずはなく、うまく設定などを変えてるんだけど。
「シェーン」は多分一番繰り返し見ている映画の一つ(映画館で一番回数繰り返し見ているのは
タルコフスキーの「鏡」だけど、TVやビデオで一番はこの映画だと思う)なので、あちこちで「シェーン」のあのシーンだとピンとくるものばかり。いや、この映画の冒頭シーンを見た人は、どこが「シェーン」だ、全く違うじゃないかと言うでしょう。もちろん1から10まで同じわけじゃないけど、あちこちで「シェーン」がいっぱいです。比べてみましょう。
「シェーン」では通りすがりのよそ者シェーンが、ジョー一家を脅しにきた牧畜業者ライカーに睨みを聞かせてライカーたちを追っ払う。こちらではもっと派手で、町で袋叩きにあっていた男ハルを、通りすがりのよそ者イーストウッドが助け、相手をボコボコにする。その強さは桁外れ。
助けてくれたお礼に家へ泊まるよう招待するのも同じだし、お礼に切り株を斧で切って掘り起こすシーンは、こちらでは巨岩をハンマーで打ち砕くシーンが対応している。
「シェーン」では牧畜業者と開拓農民の争いだったけど、ここでは金の採掘を細々とする村人と、大規模な(自然破壊的なやり方の)金採掘事業者の争い。シェーンが泊めてもらうジョー一家にあたるのは、ここでは夫婦ではなく、夫に捨てられた母娘と、その女と結婚したいと思っている男ハル。つまり、「シェーン」でのジョーイ少年はここでは少女だ。
村人がこれからどうするかを話し合う場ではシェーンと同様、イーストウッドも部外者で議論には加わらない。粋がった農民のエリッシャ・クックJr がジャック・パランスに撃ち殺されるシーンに対応するシーンもあるし、丸腰だったイーストウッドがガンマンの正装になるシーンもシェーンそのもの!!
まだまだあります。奥さんと旦那(こちらのハルは婚約者)と子供と主人公の四角関係?も同じです。みんなシェーンが好きなんですよね。ここでもみんなイーストウッドが大好き。そして「シェーン」でジョーイ少年が決闘に行く直前、「シェーンなんか嫌いだ!」というシーン、こちらでももちろんあります 笑) ただ、こちらは女の子だからちょっとひねりました 笑)
そして「シェーン」では殺し屋ガンマンのジャック・パランス。この人の凄さは映画の中ではエリシャ・クックJr の粋がった農民を撃ち殺すところだけなんだけど、もうその雰囲気が凶悪極悪残虐そのもの。ニヤッと笑った時の悪党ヅラの凄まじさが、シェーン役のアラン・ラッドの二枚目優男ぶりと対照的でした。なかなかああいう悪役はないだろうなぁ、と思っていたら、この映画ではどんな俳優連れてきても、一人ではパランスに太刀打ちできないと考えたか、悪徳保安官と手下6人という「数」で凶悪ぶりを表現しましたね。
これだけの人数を相手にするとなると、ラストの決闘シーンはどうするんだろうとハラハラドキドキしていたら、意外とあっさり手下どもは次々イーストウッドに殺されていき、ラスボスの悪徳保安官も、もうその時点でイーストウッドの迫力に負けてましたね。ただ、この7人のベージュのロングコート姿のシルエットはとても格好いいです。一列縦列で順番に現れるシーンもいいです。惜しむらくは、この手下の6人がなんか個性がなさすぎかなぁ。
「シェーン」のジャック・パランスの、自信に溢れた「プルーヴ・イット」のセリフに当たるものはなく、ラスボスが死際に「ユー。。。」と二回叫ぶだけ。そうは言っても悪徳保安官をやったジョン・ラッセルという俳優、結構な歳だと思うけど、すごく悪そうな雰囲気は出ていました。
イーストウッドの銃の撃ち方も完全にシェーンを意識していますね。左手で撃鉄を起こして連射するスタイル(名前失念、子供の頃だったら覚えてたのに 笑)は、まんまシェーンでした。
そしてラストの映画史上に残る「シェーンカムバーック!」の名場面も、もう笑うしかないぐらい、そのまんまやってましたね。もう嬉しくて涙流してました 笑)
シェーンと違っていたのはラストで、イーストウッドを影から撃とうとする採掘事業者のボスを撃ち殺すのがハルだったことですね。無論冒頭突然襲われる村のシーンなんかは「シェーン」にはなかったし、悪徳業者の息子も「シェーン」には出てこないですけどね。ただ、「シェーン」で心を入れ替えてシェーンに忠告を与えるベン・ジョンソンに当たるのが、こちらでは大男で、最初の方でイーストウッドに簡単にやっつけられちゃうリチャード・キール。この人は007でも悪役で出てきたし、とても小柄な奥さんと一緒に来日して、その時TV番組で見た記憶があります。
また、「シェーン」ではジョーはシェーンよりも頑強で腕力があり、ライカーの手下たちとの殴り合いにも負けてませんが、こちらのハルはマッチョではなく喧嘩は全くダメです。でも最後に上記のように、「シェーン」のジョーにはやりたくてもできなかったことをします。
さて、「シェーン」ではシェーンは酒場の乱闘シーンではかなりボコボコにされるし、ラストの決闘に向かう直前にはジョーと殴り合いをしてほとんど負けそうになってるし、決闘でも最後に後ろから打たれて血を流します。「シェーン、カムバーック」の声に映るシーンは墓場を行くシーン。シェーンは死んだんだ、いや死んでないと論争を呼んだシーンですが、イーストウッドは、ついに一度も殴られることもないし、ラストも血は流しません。「シェーン」に比べて圧倒的な強さです。全く傷つかない。
ただ、ラストシーンは雪にけぶる険しい山が映されます。題名の「ペイル・ライダー」も、聖書のヨハネ黙示録の4騎士ですね。最初の方で娘が聖書のその部分を読むシーンがあって、それと同時にイーストウッドが現れます。
「そこで見ていると、見よ、青白い馬が出てきた。そして、それに乗っている者の名は「死」と言い、それに黄泉が従っていた。」(ヨハネ黙示録6. 8)
最初の方で飼い犬を殺された少女が奇跡を願うシーンがあります。その「奇跡」という言葉にかぶって雪山から蒼白い馬に乗って出てくるイーストウッドは何者でしょう? 途中、悪徳保安官がイーストウッドの容貌を聞きながら、「あいつは死んだはずだ」と言うシーンもあるし、イーストウッドの方でも保安官を知っていて、あいつには因縁があるみたいなことを言うし、イーストウッドの背中にはいくつもの銃で撃たれた傷跡があります。ほとんど背中のど真ん中だし、致命傷のはずです。決闘前夜に母親と会うときにも、山からイーストウッドを呼ぶコダマのような声が聞こえます(ちなみにこのシーン、母親とイーストウッドはどうしたのか、とてもビミョーなシーンで「シェーン」にはなかったシーンですが、「シェーン」の母親の口にできなかった想いに対応するシーンなのでしょうか)。
ラスト、悪徳保安官が「ユー」と言うのも、おそらくお前は死んだはずだ!と言いたかったのでしょう。と言うわけで、月並みですが、イーストウッドは亡霊ですね。すべてが終わって、峨々たる雪山に帰っていったのでしょう。しかし、こうなると悪徳保安官も蘇ってこないかと不安になりますが、純粋無垢な少女の願いがないと無理なのかな?
いや、あまり期待しないで見たんですが、かなり面白かったです。
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