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「バビロン・ベルリン」について(3)

2020.07.15.12:35



ドラマの冒頭で、ソ連でベルリンへ向かう輸送機関車がが襲われ、運転士が入れ替わるとともに旧ロシア帝国の貴族ソロキン家の黄金を積んだ貨物車両が一両付け加えられます。もともとベルリンへ向かうはずだった貨物は「黒い国防軍」がソ連から持ち込もうとしていた毒ガス・ホスゲンで、そこに(それを知らず)トロツキーの活動資金のために黄金の貨車を付け加えたのは反スターリンのトロツキスト組織「赤い砦」だったというのが話を複雑にすることになります。

話の前提として、第一次大戦に敗れたドイツはヴェルサイユ条約の下、軍備を大幅に縮小させられたことがあります。特にドイツ空軍はほぼ全廃されます。これに対して「黒い国防軍」と呼ばれる非合法組織は条約に反して密かに再軍備を目指し、この組織に共鳴した企業家らも援助を惜しまなくなります。このドラマでもニュッセン財閥(実在の企業一族ティッセン家がモデル)の息子が、「黒い国防軍」が密輸しようとした毒ガスを殺虫剤と称して受取人になって援助しようとします。

さらに反スターリン組織「赤い砦」のリーダーは暗黒街のボスが経営するキャバレー「モカ・エフティ」オーナーのアルメニア人と繋がりがあり、アルメニア人たちも黄金の秘密を知ってそれを手に入れようとします。

さらにさらに、ベルリン警視庁も一枚岩の正義の味方というわけではありません。警視総監ツェルギーベルはドイツ共産党の取り締まりに全力を注ぎ、悪名高い「血のメーデー」事件を起こす一方で、行政長官ベンダはリベラルな共和主義者で、おそらく社会民主党支持者だと思われます。彼の1番の目的は非合法組織「黒い国防軍」の取り締まりです。だけど、その警察内には「黒い国防軍」のメンバーやシンパも多数います。

1929年のドイツは景気も交代し始め、失業者も増えていました。このドラマの舞台になる5月1日の警察による無差別発砲事件、血のメーデー事件前後はまさに経済状況が悪くなり、このドラマでも描かれていますが、街には「仕事求む」のプラカードを掲げて立つ人たちがたくさんいました(実際に最悪になるのは10月末の世界恐慌後)。

ドラマは黄金の貨車をめぐって、反スターリン組織「赤い砦」とスターリンのために働くソ連大使館、ベルリンの暗黒街の三つ巴の馬鹿しあいになる一方、同じ貨車の毒ガスがらみで、そこに黒い国防軍も加わり、さらに彼らを手玉にとるような女ソロキナも暗躍。

警察内もバラバラで、ドイツ共産党対策に熱心で、黒い国防軍には手が出せない警視総監ツェルギーベルに対して、行政長官ベンダは黒い国防軍の企みを暴こうとする。こうした太いラインが一本全体を貫く中、前半は主人公のゲレオン・ラートがケルンからベルリンへ来た原因となるフィルムの捜査、後半はワイマール共和国転覆を図る黒い国防軍のテロ計画という事件が絡まって話が進んでいきます。

途中黒い国防軍の将軍と行政長官ベンダがワイマール憲法について言い合うシーンがあって、黒い国防軍はワイマール憲法が国民を危機にさらしているから再軍備が必要なのだと言うのに対し、ベンダが違法な再軍備こそが国民を危険にさらすんだと言い返すと、将軍は国家レベルの話に警官は引っ込んでいろ(=国家レベルの話は軍人に任せろ)と言い放つシーンがあります。憲法問題はいつでもどこでも似たようなものなんだな、と思った次第。

そしてこれを見ている現代人にとっては、この後、黒い国防軍はナチスに取り込まれていき、ナチスは全権委任法によってワイマール憲法を死文化して国民を破滅させたことを知っているわけです。

というわけで、こうした込み入った時代の状況にさらにドイツ共産党やナチス突撃隊も加わり、最後の方ではナチス突撃隊になる左翼の連中なんかも出てきてぐちゃぐちゃです。そして主人公ゲレオン・ラートのPTSDの謎をめぐる驚愕のラスト 笑)

個人的にこの長いドラマで一番「すごい!」と思ったシーンは主人公のゲレオン・ラートとブルーノ・ヴォルターが二つの殺人事件の捜査会議で、殺人課主任のゲナートたちを前に、お互いに牽制し合うシーズン2の4回目にある場面。絶対これが白眉です。お話としてはもっと大きなものを巡って展開するんだけど、ここのシーンは二人の俳優も素晴らしくものすごい緊迫感です。

ラートを演じているフォルカー・ブルッフは拙ブログでも取り上げた「ジェネレーション・ウォー」http://tatsuya1956.blog48.fc2.com/blog-entry-1802.htmlの主役や「ゲーテの恋」http://tatsuya1956.blog48.fc2.com/blog-entry-1885.htmlでゲーテの自殺する友人をやった人で、2枚目なんだけど、ちょっとドラキュラじみた暗さがあって、この時代の刑事役としてはうってつけ。対するヴォルター役のペーター・クルトという俳優はこれで初めて見たけどすごいです。顔立ちは温厚そうな初老の太った男なんだけど、最初に登場した時から何かあるな、と予感させるような雰囲気。実際何かあります 笑)

それに対して、女優陣は正直言ってイマイチです 笑)ヒロイン役のシャルロッテ・リッターをやったリヴ・リサ・フリースには個人的にまるで魅力を感じないです。ドイツって街中には美人がいっぱいいるのに、女優で美人女優って少ないですね 笑)ただ、この人のインタビューなんかをYouTubeなんかで見ると美人なんだけどね。普段の方が美人でスクリーン上でブサク見えるって、いいのか? 笑)

というわけで、ネタバレしないように時代状況や各勢力の関係を紹介したつもりですが、このドラマを見る時の参考になれば幸いです。なお、シーズン1も2もそれぞれ第一話は無料で見られるようですが、シーズン2の第1話だけ見るのはやめましょう 笑)

ドイツではすでに第3シリーズが放映されたそうで、個人的には原作通りヒトラーが政権を取った後まで作って欲しいですが。


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アンコウ

アンコウ
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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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