
今日午後、新宿で観てきました。満員でした。1945年のドイツを舞台に、どちらかというといじめられっ子に属する10歳の、ナチスを熱烈に信奉する少年が主人公のシリアスコメディです。夢はヒトラーユーゲントの立派な兵士になること。こういう少年を主役にするという発想はなかなか出ないですね。戦後すぐの映画に「ドイツ零年」というイタリアのロッセリーニ監督の映画がありました。ナチスを信じきっていた少年がドイツの敗北とともに大人たちのずるさに絶望して自殺する映画で、もう身もふたもない暗い映画でしたが、こちらは靴紐が結べなかった少年が結べるようになるという成長の話です。
この子役、どこかで似たような子を見たことがあるな、と思ったんですが、「ブリキの太鼓」の少年に顔立ちがちょっと似ているように思いました。そういえば「ブリキの太鼓」も少年が見たナチス時代のドイツでした。
この少年、辛いことがあると想像上の友人のアドルフ・ヒトラーが出てきて少年を慰めたりアドバイスをくれたりします。このヒトラーがちょっとふざけた気のいい奴として出てくるんだけど、最後、少年がヒトラーの呪縛から解かれるところでは、本物そっくりの演説をします。英語なのにまるでヒトラーそのもの。残念ながら顔は全く似てませんし、腹が出てるのはちょっとナンですが 苦笑)
これまでにもヒトラーをおちょくった映画って
「わが教え子、ヒトラー」とか
「帰ってきたヒトラー」なんてのがありました。特に後者は結構うまい作りになっていて、最後の方はかなり怖いことになっていきました。この「ジョジョ・ラビット」の方はむしろ逆で、最後に少年の呪縛は解かれます。
しかし母親をああいう風にしちゃうのって、映画全体として観たとき、ちょっと重すぎじゃなかったのかなぁ、そんな気がします。無論この時代ですから、ラストの市街戦などは十分重いんだけど、映画全体は軽快な喜劇の雰囲気があって、笑ってしまうところが多いんだけどねぇ。特にゲシュタポの一群がやってきて、一人一人いちいち「ハイル・ヒトラー」と挨拶し合うシーン(ハイルヒトレリングなんて言ってました)や、ヒトラーユーゲントの太った女性教官なんかワルキューレのパロディーでしょうか、最後の方なんか絶望的かつ悲劇的状況なのに重機関銃を抱えて戦いに向かうところなんかも笑わされました。
冒頭、当時のヒトラーに熱狂する人々、特に若い女性たちの熱狂ぶりを写す写真にかぶせてビートルズの名曲「抱きしめたい」のドイツ語版が流れ、当時のヒトラーは今で言えばロックスターのような熱狂的人気を誇っていたというのを暗示する秀逸な出だしです。
ラスト、ソ連軍に捕まった少年を逃すヒトラーユーゲントの教官も、ただの嫌なナチではなく、深みがあってよかったです。ユダヤ人少女の身分証明書の嘘を見抜いていたのに素知らぬ顔で見逃すのも、最後の突撃の時の閲兵式用軍服の姿も、なかなかに魅せます。個人的にはもっと観ていたかった役柄でした。
最後にどうでもいいイチャモンをつけると、ヒトラーはこめかみを撃って自殺したのではなく、拳銃を口にくわえて自殺(こちらの方が確実。最悪は東条英機のように心臓を狙うという奴。失敗が多いそうです)したと言われています。それから、これはどうやっても見逃せないのが、詩人リルケは母親がユダヤ人だったというセリフ。リルケの言葉は映画の最後にも出てくるので、重要なので明言しておきますが、リルケの母親ってのは有名な困った人 笑)で、ユダヤ系ではありません。
しかし、ナチスもので英語で作られた映画ってのはいいものが多いです。拙ブログでも
「善き人」とか、
「ヒトラーへの285枚の葉書」とか、
「縞模様のパジャマの少年」を紹介したことがありましたが、どれもすばらしい映画でした。でもこれらに共通して気になるのは、手紙やポスターなど書かれているのはドイツ語なんだけど喋っているのは英語で、しかもそこにドイツ語の単語を混ぜ込むというのは、いや、ほとんど聞き取れやしないんだけど、それでもなんか違和感がとてもあります 苦笑)
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