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自転車レースと映画(色々ネタバレ)

2019.10.22.23:44

自転車と映画といっても、パンターニのドキュメンタリーアームストロングの映画のように正面から自転車レースや選手がテーマになっている映画ではありません。本題とは全く無関係に、さりげなく出てきたり、会話に出てくる自転車レースのシーンや話題のことです。そんな映画を4篇ほどご紹介。

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ルイ・マル監督の「鬼火」(1963)
アル中の治療入院からシャバに戻った男が、かつての友人たちが幸せそうなのに嫉妬して、ただ単に彼らに冷や水を浴びせたいだけで、嫌がらせのように拳銃自殺するまでの二日間を描いた映画です 笑) エリック・サティのピアノ曲が、この映画のなんともやりきれない暗い雰囲気を高めます。

この映画、街中でプロの自転車レースがおこなわれているんですね。先導車について集団が走って行くシーンと拡声器での放送が聞こえます。最初に映画館で見たとき、主人公のモーリス・ロネが道を横断しようとして立ち止まると、風のように自転車が二台かすめすぎるシーンがあったと記憶しているんですが、その後TVで2、3回見てるんですが、そのシーンが見当たりませんでした。あれって記憶捏造したのかなぁ。。。それとも版が二つ(以上)ある可能性もあるかなぁ。。。

暗い顔をしたモーリス・ロネの前を全速で風のように過ぎ去る自転車の姿に、何か「刹那」という言葉を連想して、この映画のテーマとも関係するのか、と思ったのですが、どうもそのシーンがその後見つけられずにいます。

「ルシアンの青春」(1974)
この映画では親ナチスの自転車のチャンピオンという登場人物が出てきて、バルタリなんか怖くなかった、むしろベルギー人のシルベール・マースの方が手強かったとかいうシーンがあったことはすでに書いた通り。

監督は「鬼火」と同じルイ・マルで、この監督はおそらく自転車レースが好きだったんですね。1962年のツール・ド・フランスのドキュメンタリー「ツール万歳」なんて短編も撮っています。もう10年前に銀座のエルメスで見たことがあるんですが、まるで記憶に残ってない 笑)

この映画はフランスがナチスに占領されていた時代、たまたまナチス側についてしまった10代?の青年の悲劇で、映画そのものとしてはものすごい映画だったと思います。

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ジャン・ルノアール監督の「大いなる幻影」(1937年)
第二次大戦の始まる2年前に作られ、まさにこの映画に描かれたことが幻影となってしまいました。第一次世界大戦中の話で、捕虜となったフランス人貴族や平民たちとドイツ人貴族の捕虜収容所の所長(エーリヒ・フォン・シュトローハイムという怪優が演じています)の話で、特に仏独の貴族階級の二人の友情が泣かせます。

この映画の最初の方で、主人公の平民労働者のジャン・ギャバンが、ユダヤ人銀行家のマルセル・ダリオと話すシーンで、ツール・ド・フランスが最高だ、ファベール、ラピーズ、ガリグー、トゥルスリエ、みんなものすごいぜ、と、第一次世界大戦前、ツール黎明期、ほとんど神話の世界のような選手たちの名前を列挙するのでした。
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「かくも長き不在」(1961年)
戦争が終わって15年、パリで、廃墟になった教会の前でカフェを経営する女(オーソン・ウェルズの「第三の男」で有名なアリダ・ヴァリ)が街で戦時中ゲシュタポに連れて行かれて行方不明になった夫と思しき浮浪者を見つける。しかしその男は記憶を失っていて、親類を読んで面通ししてもらうけど、近しい親類にも関わらずわからない。むしろ別人ではないかと助言する。茫漠感が残る映画で、同じ年のアラン・レネの「去年マリーエンバートで」みたいな、記憶ってなんなのかという眩暈感を感じさせる映画です。まあ、それよりはずっとメロドラマの色合いが強いですが、最後の夜の街で点在する人影とか、終わり方が謎めいて寄る辺ない感じが、なんとなく「マリーエンバート」を思い出させたのかもしれません。

さて、この映画は最初の方でカフェでみんながラジオに耳を傾け、ネンチーニはどうなってる?と言っているシーンが出てきます。1960年のツール・ド・フランスの優勝者ガストーネ・ネンチーニです。イタリア人。この日はパリ祭という設定なので、1960年のツールの第18ステージということになり、コースはアルプスです。ところがここに、今日のコースはどこだ?と聞く常連客の男性がいて、それに対してツールに関心のない客の女性がトゥルマレでしょ、と答え、それに対して男が、トゥルマレ?じゃあアルプスか?と聞くシーンが続きます。ん? トゥルマレ峠はアルプスではなくピレネーの峠ですねぇ。。。ここはツールにあまり関心のない二人のやりとりが、どちらも違っていて、結果、正解になっているという変なシーンで、知っているフランス人なら笑うシーンなのかなぁ?

それから、よくわからないんだけど、あそこで出てきてネンチーニを気にしている人たちはイタリア系なんでしょうか? それとも、この時ネンチーニが総合トップだったから気にしているのでしょうか? 

以上、ここに挙げた映画はどれも映画史に残る傑作に数えられています。日本語版のウィキペディアでも「ルシアン」以外は乗っているし、ヴェネチア国際映画祭(鬼火と幻影)やカンヌ国際映画祭(不在)で賞を取っているし、「ルシアン」はノーベル賞作家が脚本に参加と錚々たる映画です。特に「大いなる幻影」はオールタイムベスト100で繰り返し上位に入ってます。

ただ、どれもフランス映画ですねぇ。イタリア映画でジロを話題にしているシーンが出てくる映画があっても良さそうな気がするけどねぇ。。。思い当たらないなぁ。


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comment

Arturo
アンコウ様
  すみません!。僕の勘違いでした。投稿してしばらくして、なんか違和感があると思い、思考を巡らせた結果、いやまて、あれって、ドッジボールだったんじゃあ、と言う事に気づいた次第です。
  いずれにしても、仮に見たとしても、当人の出番はほんの一瞬だったと思いました。(カメオ出演!?)なんか決戦の試合の前に偶然現れ、(空港のラウンジ!?)主人公に、何か助言をする、みたいな展開だったような記憶があります。(ストーリーそのものには何ら絡まない。)一回ポッキリ、ずいぶん前に飛行機の中かなんかで偶然見ただけなので、僕の記憶もアテになりませんが、、、ウイキのリンク一応貼っておきますが、、、
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%83%E3%82%B8%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%AB_(%E6%98%A0%E7%94%BB)

 自転車泥棒の方はもし「ああ、それね!覚えてるよ!。」となったら、逆ににのけぞったと思われます。
 これは25年ばかり前、ある友人が、当該画像、コマ送りで再生して発見した、と言う展開でした。逆ににこっちもよくやるぜ!等と思ったのを覚えています。

 しかしオリンピックのマラソン騒動盛り上がってますね。(笑)
 さっき、たまたま読んだのですが、元大阪市長が、(こんなIOC言いなり展開ではなく)「オリンピックやめるよ。って言えばいいんですよ。僕だったら言いますね。」と言うのを読んで、これだ!(但し、本当に出せた場合に限る)等と思ってしまいました。

  それとオマケもう一件、こっちに書いちゃうと、さいたまのプロレース(縮めるとプロレス!?)見に行かれたんですね。天気良さそうでよかったです。こっちは同じ日、とあるマラソン(見物)に行ったのですが、雨にたたられて、雨中ミニサイクル走行、ビタビタに濡れてもう散々な日でした。(苦笑)
2019.10.31 20:22
アンコウ
Arturoさん、

自転車泥棒はなんども見たけど、最後に見たのはもう30年ぐらい前だから、そんなシーンありましたかね?まるで記憶にないや。でもレースじゃなさそうだね。あの映画については言いたいことがあるけど、ちょっと場違いかな。そのうち、見直したら書いてみます。

アームストロングのバスケット映画? それは知らないや。題名はわからない? まあ、わかっても見るかどうかわからないけど。

2019.10.29 07:06
Arturo
アンコウ様
  そう言えば、ですが、アンコウ様の”規定”に合致するか?ですが一つ思い出したのは、かの有名な映画、”自転車泥棒”(伊物です。違った意味で自転車がテーマ!?)の中でチャリをパクられた二人がトボトボと路肩を歩く前を、プロトンが横切る映像があった、しかも、いつかアンコウ様が驚愕していた、後ろのハブ軸が移動してテンションを取る変速機を搭載した自転車も横切ります。そんな映像があったのを思い出しました。
 気が向いたら何らかの方法で見てください。但し、この変速機の画像を捉えるにはコマ送りにした方が良いかも?!超人的な動体視力があれば別ですが、、、、(苦笑)
 後はそう言えばその2ですが、バスケットボールの映画(もち米物)でアームストロング本人が、本人役でチョイ出ていたのも思い出しましたが、しかしこっちは”規定”に合致しないか!?。(あくまで主テーマが非自転車系と言う点では合致!?しかし登場人物がそっち系と言うだけで、レース関連はセリフも含め、出ていなかった!?よって規定外!?)
2019.10.26 18:34
アンコウ
CYPRESSさん、

いや、自転車と映画ではなく、自転車レースと映画です。自転車やレースを扱った映画になっちゃうと、またちょっと違うんだよね。

映画のテーマは自転車(レース)ではなく、自転車レースは映画の中の点景に過ぎない、そんな映画の紹介です。
2019.10.25 18:11
CYPRESS
へ、へ、へ、へ、映画と自転車ですと?(笑)。

英国物の本を2冊紹介いたそう(笑)。


“Cycling and Cinema”
日本のアマゾンで、
https://www.amazon.co.jp/Cycling-Cinema-Goldsmiths-Press-Bennett/dp/1906897999/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&keywords=cycling+cinema&qid=1571841842&s=english-books&sr=1-1

アマゾンの紹介文

“Cycling and Cinema”は19世紀後半から今日までの映画の中での自転車の歴史を探訪する。
ゴールドスミス・プレスのこの新刊は、ブルース・ベネットが世界中の広範囲にわたる映画を調査する。
その範囲はハリウッドの大ヒット作やドタバタ喜劇、シリアスなドラマ、実験作までだ。
自転車の複雑で流動的な文化的重要性を考察する。

自転車はありふれたテクノロジーであるが、映画で使わる自転車の使い方を調査することで、ベネットはこの目立たない機械が持つ豊かな社会的、文化的な重要性を明らかにする。
本書で論じられる映画に現れる自転車には様々な機能がある。
無声映画の中では不合理喜劇の源になり、スポーツ映画と社会派映画の中では持ち主の生計の手段になる乗り物だ。
メロドラマと子供向け映画の中では独立と逃避の道具になり、女性に政治部局と開放を提供する道具にもなる。
この様に世界中の映画で表現されてきたのだ。

自転車の映画史を詳述することにより、ベネットはこの機械は単なる移動の手段や子供のオモチャだけではないことを思い出させる。
この乗り物には意味があり、自分探しの道具、社会階級、国籍と帰属意識、家族、社会的な性差、性別、そして楽しみ等広大な範囲にわたる。
本書で示す様に、発明から200年、自転車は革命的なテクノロジーでありその中には世界を一変する力がある。



これより、こっちの方が面白そう。

Sunday in Hell: Behind the lens of the Greatest Cycling Film of All time

日本のアマゾンで、
https://www.amazon.co.jp/Sunday-Hell-Behind-Greatest-Cycling/dp/0224092022/ref=olp_product_details?_encoding=UTF8&me=&qid=1571841842&sr=1-4

アマゾンの紹介文

“Sunday in Hell”は1976年のパリ~ルーベを映像的に記録したドキュメンタリーだ。
製作したのはデンマークの有名な監督Jorgen Leth。
Lethの使命は北フランスの石畳の道を走る壮大な1日だけのスペクタクルとエディ・メルクスやロジェ・ド・ブラマンク等の伝説的選手のスピリットを捉える事だった。
Lethはやり遂げ、革命的なカメラと音声システムを使い、ロードレースをスクリーン上で見る事を永遠に改善したのだ。
本書はこの映画のレンズの反対側にいた男達と場所を見る。
Lethと作品、メルクス、ド・ブラマンク、不幸な勝者マルク・ド・メイヤー等の選手だ。
そして今日と殆ど変わらない数々のロケ地を再訪する。
2019.10.25 00:26

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アンコウ

アンコウ
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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

* 時々コメントが迷惑コメントとしてゴミ箱に入れられることがあるようです。承認待ちが表示されない場合は、ご面倒でも書き直しをお願いします。2017年8月3日記す(22年3月2日更新)

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