
実はこのドキュメンタリー、先日書いた
「サタンタンゴ」と同じイメージフォーラムで1週間前に見たものです。
副題は「日中15年戦争・元皇軍兵士の告白」で、14人の元兵士たち、いろんな階級の兵士たちが、自分たちが中国でしたひどいことを語ります。軍医もいれば士官や一兵卒もいます。しかし、2001年公開なので、ここに出てくる元兵士たちはみんなすでに鬼籍に入っていることでしょう。
この映画をみて、ここで自分がしたとんでもないことを語っている老人達に、憎しみを感じる人はいないと思います。だけど、今では好々爺然とした老人達が語る内容はものすごいものがあります。そして、結局、拙ブログのモットーと完全につながります。つまり、
この世の中には0.01%の悪人と99.99%の普通の人がいるわけではない。普通の人がとんでもないことをするから、人間は恐ろしい。
本当に恐ろしいのは、偉そうなことを書いているこの僕だって、この14人と同じ状況に置かれたら全く同じことをしていただろうということです。
元兵士達が語る内容についてはすでに
似たような話をいくつも読んだり、
TV で見たこともあるし、
武田泰淳や堀田善衛の小説や、
辺見庸の本でも似たような話は出てきます。
だからこの映画の見所は個人的には彼らが語る内容ではなく、カメラの前で語っている彼らの姿でした。ほとんど普通の顔で、深刻ぶることもなく淡々と自分が行った残虐行為を語りながら、なんであんなことができたんだろうと訝る姿に圧倒されます。1つだけ上げれば、若い母親を井戸に放り込み、井戸の周りを泣き叫びながら右往左往する幼児も井戸に放り込むと手榴弾を投げ込んだことを、淡々と語る老人のギャップに愕然とさせられます。
何であんなことができたんだろう? その回答の1つは軍隊の中での理不尽で、陰湿極まりない上級者による新兵いじめにあったとされます。キューブリックの「フルメタル・ジャケット」でも同じように徹底的な罵倒と暴力によって新兵達が人間性を失っていきますが、日本の場合はそれにさらに、上官の命令は天皇の命令だということで理不尽度がアップします。さらにそこに差別感を増幅させた、中国人は人間ではない、という感覚が追加される。。。ナチスがユダヤ人やスラブ人を劣等民族扱いしたのと同じです。多分この2つが相まって、さらには相手が抵抗できない農民達であったことから、何でもできる万能感が彼らを無意味な殺人に駆り立てたのでしょう。
彼ら元兵士達は皆一様に、初めて人を殺した時の恐れと慄きを語ります。つまり、彼らは最初から人殺しではなかった。当たり前です。そして、それはきっと忘れられない記憶なのでしょう。だけどその後何十人、何百人も殺すうちに殺すことがなんでもないどころか楽しくなってくる。笑いながら今日は何人殺したかを仲間と自慢し合うことになる。恐ろしい話です。
観ながら、ここで
何度も書いたことがあるソ連映画「炎628」や、有名なところでは「戦場のピアニスト」を思い出しました。日本軍がやったこととナチスの特別行動隊(アインザッツグルッペ)というSSのユダヤ人虐殺部隊がやったことは、何の変わりもなかったどころか、日本軍はそこに強姦が加わりもっと酷かったかもしれないわけです。少なくともアインザッツグルッペはユダヤ人をレイプはしていません。数が多すぎてそんな暇がなかったとも言えるのかもしれませんが。。。まあ、こんなことを比べても無意味でしょうね。。。
ただ、見ながら、中国にはアジア版の「炎628」を作る権利はあるな、と思いました。
よければ、下の各ボタンをポチッとお願いします(まあ、大した意味ないですので、ポチッとしなくても構いません。おまじないみたいなもんです 笑)

にほんブログ村
- 関連記事
-
スポンサーサイト
trackbackURL:http://tatsuya1956.blog48.fc2.com/tb.php/3621-af2bc9b3