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普天間をめぐるデマ

2019.08.16.23:46

 はじめに
なんども書いてきたけど、私の連れ合いは東京生まれだがその両親は石垣島出身で、戦後沖縄復帰前に東京に出てきて結婚し、連れ合いはいわゆる高齢出産だった。25年前に亡くなった義父は沖縄本島に家族が疎開し、本人だけ石垣に残って死ぬ覚悟で飛行場建設に従事している間に、米軍は石垣を素通り、疎開したはずの家族は全て行方不明になった。今年で94になる義母は有名なひめゆりの生き残りで、毎年ひめゆり同窓会からハガキが届く。

僕が沖縄に行ったのは20世紀の末。平和の礎(いしじ)の除幕で前年に亡くなった義父の名代みたいな感じで出席した。礎には義父の家族の名前が全て刻まれていた。当時の総理大臣橋本龍太郎が除幕式で話していたのを覚えている。当時は今ほど政治に関心はなかったので、あまり印象はない。ただ、この時代になって思い返せば、橋龍もいろいろ言われたけど、まあ、至極真っ当な政治家だったんだね。

 普天間飛行場はもともと田んぼの中にあった??
さて、2015年6月の自民党議員らの勉強会で某ネトウヨベストセラー作家がこう言った。「米軍普天間飛行場はもともと田んぼの中にあった」

しかし、これは完全なフェイクだ。問題は、このフェイクが今もネット上のあちこちで拡散されていることだ。しかも拡散している人たちは、その多くが匿名で触れ回っているのである。最近、FBでも同じようなことを言っている人がいて、思わず噛み付いたが、まあ、要するに歴史的経緯も何も知らないまま、このようなデマをネットのどこかから拾ってきて、自分の中にある嫉妬心や差別意識をストレートに発散しているんだね。この病理はなかなか根深く、ほとんどカルト信仰みたいなものなので、矯正のしようはない。本人が気づくかどうかだろう。

閑話休題。宜野湾市史には沖縄戦前の1944年、宜野湾村(当時)には22の字(あざ)があり、人口は13500人余りとある。現在の普天間飛行場に当たる土地はそのうちの14の字にまたがり、その人口は9000人弱。ここには宜野湾村役場や宜野湾国民学校があり、また1932年に国の天然記念物に指定された「宜野湾街道の松並木」や、墓や信仰対象の井戸もあった。

この信仰対象の井戸というのは拙ブログでも紹介した直木賞受賞作の「宝島」(真藤順丈)にもキーになる場所・御願所として出てくる。もっとも小説の方は嘉手納基地の中だけど。

在日米海兵隊のHPにも「普天間基地内にあるこの場所へは、普天間基地司令官の許可が必要で、文化的に重要な遺跡などへのアクセスは在日米海兵隊の厚意の一環で行われています」と書かれている。つまり、普天間飛行場は地域住民の土地や施設等を接収し、ここには歴史的文化的に重要な施設などがあることは米軍も認め、それを「厚意の一環」(!)で、住民の参拝を許しているわけだ。ハーグ陸戦法規違反(戦時中であっても私有財産の没収は禁止)との指摘があるのに、「厚意の一環」なんだそうだ。盗人猛猛しいとはこのことだ。

 住民は普天間飛行場の周りに商売のために集まってきた??
さらに冒頭のネトウヨ作家は住民が「商売になると集まって住み出した」と続けたが、これはすでに司法で決着がついていて、否定されている。詳しくは「普天間爆音訴訟」というのを調べてもらえばわかるが、要するに国は住民が自由な意思決定により、危険な場所に移転してきた、つまり「危険への接近」(=自己責任)という主張で、騒音の違法性を主張した住民に対抗したが、裁判所は「原告(=住民)は地縁などの理由で止むを得ず周辺に転居したもので非難されるべき事情は認められない」と国の主張を退けている。

普天間飛行場=危険なところというのは今では誰でもが同意するだろうが、1969年時点で普天間飛行場に所属していたのはヘリ4機と固定翼機16機に過ぎなかった。それが70年に神奈川の厚木基地のヘリを普天間に移動させたことなどにより、所属機はヘリ80機、固定翼機26機に増えて、一気に危険度が増したわけだ。つまり、もともと危険度が高いところへ住民が商売目的で移り住んだわけではない。

普天間爆音訴訟原告団団長は当時の様子をこう言っている。「住民は戦後、故郷と離れた収容所に集められ、いざ宜野湾に戻ると、基地が作られていた。住民は残された土地で簡素な木造の掘っ建て小屋で暮らし、基地内では軍人が庭付きの広い家に住んでいた」。

 普天間の地主は六本木ヒルズに住んでいる??
さらに先のネトウヨ作家は基地の地主は年収何千万で六本木ヒルズに住んでいると言った。これについては具体的な数字が出ている。普天間の地主は3900人弱、うち半分以上が年間100万円以下の地料で、200万以下に広げれば75%近く。500万以上になれば7%強だ。確かに年間1000万以上の人もいるそうだが、それは別に普天間だからではなく、ご先祖様がしっかり確保していた土地で、日本中どこだって同じことだ。普天間だということが強調されるいわれはない。

そもそもなぜ沖縄だけ「軍用地主」が問題になるか、それは沖縄以外の在日米軍基地の土地はほとんど国有地だが、沖縄では上に書いたように米軍が沖縄の人々の土地を強制接収して基地にしたからである。米軍に貸しているから地料が良いかどうかは以下参照。

 地主は基地がなくなると困る??
これは普天間だけの問題ではないが、基地がなくなれば地料が入らなくなるから、地主たちが辺野古への移設を反対しているというフェイクを流す人もいるが、返還された軍用地の跡利用で雇用や直接経済効果で数十倍の効果が現れているのに軍用地主が基地撤去・移転に反対していると断定するのは悪意あるフェイクだ。

2012年4月には「跡地利用推進法」が施行され、国の責任で原状回復、土地が利用可能になるまで地主の所得が保証されることになった。つまり、この法律以前なら米軍基地から返還された場合、地主の所得保証は半年しかなく、返還後に不発弾や汚染物質が発見され、原状回復が遅れれば地主は無収入になったので、返還を積極的に求める気持ちになれなかったかもしれない。しかし、今は「土地が利用可能になるまで」地主の所得は保証される。だから地主も返還要求を言えるようになったということである。

何より軍用地主たちで構成されるいわゆる土地連の真喜志会長は、くだんのネトウヨ作家の「地主たちは基地なんて出て行って欲しくない。もし基地移転ということになったらえらいことになる」という発言に対してこの「見解は(実態と)全然違う」と指摘し、「北谷や天久、泡瀬ゴルフ場跡地(北中城村)の事例を見ても、跡地利用の合意形成がうまくいけば、返還後の方が雇用や固定資産税など経済の観点から有効に活用されている(。。。)返還が決まっている嘉手納より南の基地について、跡利用の観点から部分返還や細切れ返還とならないよう、計画的な返還を求めたい。県全体の発展を我々軍用地主も支えていく」と言っている。

つまり軍用地地主の組織である土地連会長が返還を求めているわけである。

 普天間がある方が経済効果がある??
そもそも沖縄の経済が基地に好影響を与えているというフェイクも流布しているが、2017年の宜野湾市長選に出馬した二人の候補者はどちらも普天間即時返還を主張し、宜野湾市議会の与野党も同じように返還要求を出している。経済的に基地に依存していたらこんな主張しないだろう。

普天間飛行場の日本人従業員は200人程度、宜野湾市の全従業員34000人弱の約0.6%だ。これに対して、普天間飛行場は宜野湾市面積の4分の1を占めている。市の担当者は「収入も雇用も返還後の跡地利用によって何十倍になるだろう」と予想し、基地の存在が経済面での発展を阻害していると言っている。

もっと明確に数字で示そう。最新の数字である2013年度の県内総生産と県外からの所得を合算した県民総所得はやく4兆1200億円。県が基地関連収入と位置付ける軍雇用者所得と軍用地料、米軍への財・サービスの提供などを合計すると2088億円。額だけ見るとすごいが、要するに県民総所得の中で約5%。

確かに沖縄の経済が基地に依存していた(基地関連収入が50%)時代はあったが、返還前の話だ。返還時で15%、今はもう5%でほとんど動かない。

このパーセンテージで「基地に依存している」と言うのは無茶苦茶である。例えば年収400万(日本人の大雑把な平均所得)のサラリーマンが、そのうち副業で20万稼いでいたら、彼の収入はその副業に依存していると言うだろうか?

とにかくこれまで返還された沖縄の基地跡地(那覇新都心地区、北谷、那覇市小禄金城地区)では、直接経済効果が返還前の31倍、112倍、14倍となっていて、普天間も返還による経済効果は、返還前の32倍になると試算されている。


と言うわけで、沖縄に関する様々なフェイクに対して、普天間だけに限定して書いてきたが、フェイクニュースはネット上で匿名の人々によって拡散され、事情を知っている学者や識者がそれを否定しても多勢に無勢だし、現場の一般関係者の声など「かそけき」ものだ。

そもそも人は自分が信じたいと思うものを信じるものだ。沖縄など興味もない人間にとって、沖縄の問題を考えて自分の気持ちに波風を立てたいとは思わない。むしろデマを信じていた方が安心できるし、楽チンなのだろう。

しかも最初のフェイクを流した者はそれを撤回したり謝罪したりしない。ほったらかしだ。嘘でも撤回しなければみんなが勝手に信じるというヒトラー並みの悪意。

ちなみに私の書いた元になっているのは以下の書物で、どこの公立図書館でも、普通に借りられるものばかりだ。

●沖縄タイムス社編集局編著「これってホント!?誤解だらけの沖縄基地」
●岩波ブックレットN.962 佐藤学・屋良朝博「沖縄の基地の間違ったうわさ」
●琉球新報社編集局編著「これだけは知っておきたい沖縄フェイク偽の見破り方」高文研

これらの本がフェイクではないのか、という反論もあるかもしれない。しかし、学問というのは先人の主張に対して反論や同意があり、それに対してさらに反論や同意が積み上げられるという形で、少しづつみつ重ねられていくものである。そうである以上、これらの本に書かれていることに対して、これがフェイクだというのなら、きちんとした論拠を示した上で反論するべきものだろう。その意味で、ネットに氾濫する数々のフェイクに対して、論拠を示して反論しているこれらの本は、現時点ではまず信頼するに足るものだと言える。


以上は、某FBグループでネトウヨと言ってよい人物とやりあったことが元になっている。絵に描いたようなフェイクの連続で、逐一反論するために、こちらも色々本を読んで勉強になった。ある意味で彼には感謝した方がいいのかもしれない 苦笑)


さて、このエントリーをまとめるに当たって、月並みだけど、こんなことを書いて〆としたい。

74年前の6月6日、沖縄戦の大田実司令官は自決一週間前に有名な電文を発した。その最後は「沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」と求めていた。

だが、戦後ヒロヒトは沖縄に米軍が留まり続けるよう願い、在日米軍基地の75%近くが沖縄に置かれ、そして今も辺野古では新基地が建設されようとしている。連れ合いの血族は今も沖縄本島と石垣に何人も住んでいて、それぞれ様々な考えを持っているので、僕としてはこの件をあまり深入りしたくない気持ちもあるが、少なくとも大田司令官の言葉はいまだに本土に届いていない。これは間違いない。

* 追記。2019年8月17日、16:25、いくつか表現を改めるとともにいろいろ加筆しました。


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アンコウ

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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、クラシック音楽(特にバッハ)、友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎても困るが)。少し前から草食動物と化そうと「努力」しています。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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