
いやぁ、面白かった。エンターテインメントとしてのレベルが高い。色恋もなければアクションもないけど、ハラハラするし涙も出るし悔しさや爽快感や怒り。先入観として、もっと明確な安倍政権批判が出てくるかと思ったけど、それほどでもなかった。
いや、特に前半は最近の政治の劣化をそのまま写し取って、というか、実際にあった出来事を連想させるエピソードが組み込まれていて、よくこれを上映できたな、と思ったが、後半のメインストーリーは見事なエンタメ。面白かったあ。
しかし、10年前、20年前なら、この映画に描かれた社会は「未来世紀ブラジル」とか「1984」とかオーソン・ウェルズの「審判」に通じるようなディストピアSF映画だったんだろうけど、今は現実になってしまったんじゃないだろうか?
実際『悪の巣窟』(笑)内閣情報調査室の雰囲気はキューブリックの映画に出てきそうな気持ち悪いほどの清潔感。窓を閉め切った薄暗い部屋の中で無数のパソコンのモニターの明るさだけ。顔が影になって判然としない無数のスーツ姿の男女が無言でパソコンを相手にキーボードを叩いている暗い室内の雰囲気は一種カフカ的なおぞましさがある。
主役の女性記者を韓国人の俳優シム・ウンギョンがやったことは、最初はどうしても日本語の発声の癖が気になるんだけど、途中で彼女はアメリカ育ちだという設定がわかると、そのあとはそれほど違和感を感じないし、なによりこの役をやれる日本人女優はいないだろう。たとえば、もう一人の主役の松坂桃李の奥さん役の本田翼がこの役をやったら、と考えたら 笑)、シム・ウンギョンにして大正解だったと思う。
松坂桃李も演技を見たのは初めてだったけど、思っていた以上に良かった。シム・ウンギョンに情報を初めてリークするシーン、後ろについてくる彼女に電話で見張られていないか確認した後、振り返って彼女を見る一瞬の立ち姿の格好良いこと! そして最後のシーン、憔悴しきった顔で口だけが「ごめん」(たぶん?)と動く。
こういう映画は悪役が本当に憎たらしくないとエンタメにならないんだよね。その意味で内閣情報調査室の参事官をやった田中哲司という俳優もすばらしかった。これ以上ないだろうっていうぐらいの悪役ぶり。なにしろ改ざんもみ消しは無論のこと、一般人すら陥れてフェイク情報をばらまくよう指示する。主役の記者を電話で脅し、しかも自分は日本のためにやっているのだという信念をもっている。
最後、新聞はスクープで政権の目論見を暴くけど、悪役はそれほどショックを受けていないようで、最後に彼が言う、日本には形だけの民主主義があれば良いんだと言うセリフは、権力者たちの本音以外のなにものでもないだろうね。
昨日の初日三度目の回、吉祥寺の映画館60数席は満席でした。
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