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テオ・アンゲロプロス監督の「アレクサンダー大王」

2019.06.09.23:17

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いやはや、半分は苦行だわ 苦笑) だけど、時々、もう本当にハッとするような美しい場面が出てきて、観てよかったと思わされます。特に始まって15分ぐらい? の森の中の円形の空き地が黄金色にスポットライトを当てられたように輝き、そこに白馬がいて、「アレクサンダー大王」がかぶとをかぶり馬に乗るシーン。延々と10分近くワンカットワンシーン。

前から何度か書いているように、ワンカットの長いシーンってどうも心惹かれる。ただ、何しろアップが全くないし、構図のわざとらしさやセリフの少なさ、説明の少なさに、これってなに?と思う。まあ、はっきりいって予習した上で見るべき映画で、ネタバレ? それってなんのことですか? という映画。

テーマはアンゲロプロス監督ですから、例によって19世紀から20世紀にかけてのギリシャの近代史。ある村が一人の教師のもとで原始共産制で営まれ、義賊のアレクサンダー大王と呼ばれる脱走犯が英国貴族たちを人質にしながら、部下を連れてその村へ合流する。そこにイタリアから亡命してきた無政府主義者たちも合流。さらに政府軍がやってくるけど、カリスマ性があるアレクサンダー大王においそれと手は出せないままにらみ合いが続く。

アレクサンダーは英国貴族たちを盾に自分たちの罪を問わないことと、英国資本によるギリシャの地の搾取をやめさせることを求める。

そんな話を例によってアップのない長回しのカットで描いていきます。何しろカットが長く、動きがない。カメラはゆっくりと360度パンして周囲の風景を映し出し、その間、緑のないガレ場のような斜面に黒い衣装の人たちが泰西名画のような配置でポツンポツンと、まさに絵画のように動かずに立っている。

ギリシャらしく神話のようであるとともに、混乱のギリシャ近代史が暗示され、極めて政治的(この言葉はこの映画が作られた1980年ごろには反資本主義的という意味です)であって、それが何か古典芸能のような様式化された動きで描かれていく。

最後は無政府主義も原始共産制も、そしてアレクサンダー大王の持つカリスマ性も国家権力の前に全て敗北するわけだけど、非常に象徴的な映像でそれを見せる。これが英雄に対するオマージュなのか、それとも独裁者の末路と考えるべきなのか。。。

最後のアレクサンダーの名前を継承した子供が大都市へ逃げていくのは、アレクサンダー的なもの(独裁的であったり反資本主義的だったり反権力だったり)の芽がギリシャの地に入っていったということの暗示なのかな。この映画が作られた頃のギリシャは社会主義政権だったから、アンゲロプロスの政権に対するエールなのかな、なんて思ったりした。

アレクサンダー大王をやったのはイタリアのオメロ・アントヌッティという名優。タビアーニ兄弟の監督した「父・パードレ・パドローネ」や「サン・ロレンツォの夜」、スペインのビクトル・エリセ監督の「エル・スール」、同じくスペインのカルロス・サウラ監督の「エル・ドラド」でアギーレ役をやった禿頭の印象的な顔をした人でした。


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アンコウ

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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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