
1944年、ドイツ軍がすでに敗色濃厚のフランスブルターニュのサン・マロの町で、アメリカ軍の爆撃により無線機器担当のドイツ人少年兵が地下防空壕に閉じ込められ、一方全盲のフランス人少女が砲撃に怯えながら自分の家の中で隠れている。彼らはその数日後に出会い、半日ほどでまた別れる。その合間に時代を遡って少年と少女の戦前からの人生が描かれ、彼らをつなぐものが説明される。
以下、ネタバレ含みます。
小説内の現在と過去を交互に描きながら、全体の接点がわかるようになっていくというのは、よくあるやり方で、
拙ブログでも紹介した「ベルリンは晴れているか」でも同じようなことが行われていたけど、こちらは最終的に現在まで繋がってもっと込み入っているし、安易な謎解きを用意していない。
彼らをつなぐものは、つまり、少女の祖父が戦前にサン・マロから放送していた科学のラジオ放送、それを少年は妹と一緒に自分で組み立てたラジオで聞いていたのである。そしてそれが接点となって、のちに少年と少女が出会うことになる。ラジオ放送に代表される無線電波は、多分表題の見えない光のことなんだろうと思われる。
主な登場人物はそう多くないけど、どの人も主役にして良さそうな魅力がある。僕は特にこの小説のキーになるダイヤモンドを追う末期癌の上級曹長が、あんまり出てはこないけど気になった 笑)
少女の父はパリの博物館で鍵の管理をしていた。彼は娘と一緒にドイツ軍を避けてサン・マロへ移住するのだが、その際、博物館の秘宝の巨大なダイヤモンドを託される。それは父娘が匿われる大叔父の家の町の模型の中の一軒の家に隠される。このダイヤモンドを追って、上記の末期癌の上級曹長が登場するんだけど、最終的には彼はダイヤモンドを目にすることができるか、というのも、僕としては結構ハラハラした。
ただ、このダイヤモンドが最後どうなったのかが、よくわからない。最後まで読み終わってすぐにダイヤモンドはどうなったんだ? と思って少年と少女が別れるシーンを読み直したけど、これがかなり入り組んでいるし、謎めいている。このあたり、単純に謎解きしてしまうエンタメ小説とは決定的に違うところだ。
文体が現在形の短い文章を積み上げていくもので、正直に言ってちょっと読みづらい。それからドイツ語のカナ表記でフォルクゼンプフェンガーとかホイシャンと出てくるけど、これは絶対ヘン。フォルクスエンプフェンガーだし、ホイスヒェンだよ。まあ、大筋とは関係ないけど。
500ページ以上の長編だけど、少年のナチスのエリート養成学校(いわゆるナポラ)での学校生活も、出てくる校長や鳥の好きな親友、大男の上級生や少年の才能を認めて助手として優遇する教師など、古典的な少年小説のようだし、少女を取り巻く善意の人々や密告屋、第一次大戦のPTSDを患う大叔父や家政婦の老女たちのレジスタンス活動のエピソードも面白い。少女が点字で読む「海底二万マイル」の中からの引用やラジオ放送での文句、壁を通り抜けて現れる死者たちの亡霊も詩情がある。あっと驚くような結末ではないけど、最後の余韻も良いし、お話の展開も予想を裏切る。星4つというところかな。
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