
いやぁ、前半はドイツ人がナチスの暴虐を描いた映画、例えば「戦場のピアニスト」を見た時に感じるであろうと思えるような居心地の悪さ、もちろん怒りでも悲しみでもなく、恥という言葉ではちょっと強すぎるような妙な気持ちにさせられました。
金子とパクは関東大震災の朝鮮人大虐殺事件の時に逮捕され、皇太子に爆弾を投げようとしたというでっち上げによって裁判にかけられることになるのですが、このあたりの経緯が飽きさせません。テーマが植民地時代に日本の権力に歯向かった朝鮮人と日本人のアナーキストということで、鬼みたいな日本の官憲が出てくるんだろうと思ってある程度の覚悟はしていたんですが肩透かしでした。
上記の「戦場のピアニスト」で言えば、後半に主人公のスピルマンを救うドイツ人将校ホーゼンフェルトが出てきます。きっとドイツ人観客も彼の出現にホッとしただろうなぁ、と想像するのですが、この映画でも人道的、良心的で仁徳のある検事(ホーゼンフェルト1号、ただし本物の検事はホーゼンフェルトとは違って、こんな良心的ではなかったらしいですが)と、人権派の布施弁護士(ホーゼンフェルト2号、こちらは本物も、没後ですが韓国から勲章もらってます)が出てきてホッとします。政府の要人たちも首相の山本権兵衛を始め、ほとんど差別意識などなさそうな良識的な人たちとして描かれています。
ただ、一人、すべての悪の権化みたいなのが内務大臣の水野錬太郎。こいつが震災時に朝鮮人が暴動を起こそうとしているというデマを流し、金子とパクを強引に大逆事件で死刑にしようとし、最後まで悪を一身に背負っていきますが、まあ、史実はきっとこんな単純ではなかったでしょうね。
何れにしても、ちょっとやりすぎじゃないかと思えるほど日本人に好意的です。裁判官は明らかに二人に同情的だし、留置所の係官も最初は抵抗するパクをボコったり文子を言葉でいたぶったりするんだけど、徐々に二人のやりとりや文子の書いた文書を読んで同情的になっていきます。この強面の留置所係官はちょっといい役です。
また内閣の面々も何かどこか変なドタバタ感がありながら、水野錬太郎以外は良心的な人物のように描かれていますし、あれだけ法廷で天皇制批判をしたのに、最後は天皇からの恩赦によって終身刑に減刑されて、二人とも地団駄を踏むわけですが、そこなんかも日本人としては、やっぱり少しホッとしたりしちゃうわけです。
それはともかく、何よりやっぱり金子文子がむちゃくちゃチャーミング。この人のことは(無論パク・ヨルのことも)全く知らなかったけど、こんなすごい人がいたのね。早速図書館で「何がわたしをこうさせたか」を予約してみました 笑)
ところで、映画館の右に座ったおばさんは中盤でコックリコックリ始まって、左に座ってるおばさんは途中の文子が裁判で話をする感動的なシーンから後はずっと鼻をすすりっぱなし。時々嗚咽が聞こえてきたりして、いやぁ、俺ってとんでもないところに座っちまったなぁ、と思ったのでした 笑)
よければ、下の各ボタンをポチッとお願いします(まあ、大した意味ないですので、ポチッとしなくても構いません。おまじないみたいなもんです 笑)

にほんブログ村
- 関連記事
-
スポンサーサイト
trackbackURL:http://tatsuya1956.blog48.fc2.com/tb.php/3410-d530fdb2