面白かったぁ。同時に、3日前に見た「未来を乗り換えた男」との類似性にびっくりした。
出だしの荒涼とした風景の中、脱走兵が銃弾をかいくぐって逃げる。泥だらけの顔でズタボロの服装でハァハァいう苦しげな声が響き、なんとか逃げ延びる。その後同じく脱走兵と思われる、これまたズタボロの中年兵士と一緒に農家の納屋に忍び込むが見つかって仲間を見捨てて一人で逃げる。彷徨ううちに脱輪した軍用乗用車を見つけ、食料を探すとトランクの中から大尉の軍服が出てくる。これを身につけた彼は、隊からはぐれた兵士や農家を襲った略奪脱走兵たちを部下にして豹変する。冒頭の彼は泥まみれの顔でビクビクとしているのに、この服を着た途端に態度までナチ高官風になる。
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ナチスの軍服って、少し前に似たような服を着たどこかのアイドルグループかなんかがユダヤ人団体から抗議されてたんじゃないかと思うけど、まあ有り体に言ってしまえば格好いいんだわ。服が悪いわけじゃないけどね。というと上記の「未来を乗り換えた男」の時にも書いたようにワーグナーが悪いわけじゃないんだけど、って話に繋がるね。FBで友人が、そうは言ってもワーグナーを聞くとナチスの悪行がオーバーラップするとコメントしてくれたけど、確かにそういう面は捨てきれない。少し前のNHKのドキュメンタリーでヒトラーの演説の魔力を語る90過ぎの老人が、まるでベートーヴェンの第九のフィナーレのような高揚感と言っていた。それってすごくわかる。軍隊マーチというものが存在するわけだし、音楽と暴力って親和性があるのかも 笑)
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大尉の服装を手に入れた主人公はそのまま「ちいさな独裁者」になり、部下たちと一緒になって蛮行はどんどんエスカレートしていき、ついには収容所の脱走兵たちを大量虐殺し始める。
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この関係ってよくわかる。今の日本の政治だって「森羅万象すべてを担当している」と豪語する(これって多分使い方が間違っているんだろうね 笑)安倍の周りで図に乗って8億円の値引きをしてもらって安倍晋三小学校を作ろうとする奴が出てきたり、レイプを揉み消してもらうジャーナリストや大学作るのを認可してもらう友人とやらも出てくる。周りの官房長官も偉そうに質問に答えなかったり無視したりするし、
この映画でも、部下たちの中には言われたことをクソ真面目に実行する奴もいれば、ハナからこいつは偽物の大尉だと承知の上でついていく奴も、自分の抱えている困難を解消してくれると思って一生懸命の奴も出てくる。さらに連想したのは森達也が言うオウム真理教の麻原と弟子たちの相互作用という言葉だ。
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さて、この映画では古いドイツ映画のファンなら知っている曲が2回出てくる。戦前の世界的に大ヒットし、日本でも昔はよくNHKなんかで放映されていた「会議は踊る」の中の「ただ一度だけ」と言う曲。主人公が大尉の服を着て上機嫌でこの曲を歌い、最後の方のどんちゃん騒ぎの中でも歌われる。この映画はいわゆるナポレオン戦争の後のウィーン会議を舞台に、ロシア皇帝とウィーンの街の娘の恋物語で、ただの娘が皇帝の恋人になるという夢のようなお話。まさにただの一兵卒が大尉の服でプチ独裁者になってしまうわけだ。
そして、最後のエンドロール。これはネタバレしないけど、冒頭に先日見た「未来を乗り換えた男」との類似性と書いた。ナチスの時代を映画にするのは歴史ドラマではないっていうことだ。それだけ現在のドイツに限らず世界の情勢に危機感を感じている人が多いわけなんだろう。このエンドロールがなくても、映画の最後の終わり方はなかなかすごかったが、このエンドロールがあることで、凄さが倍増する。
***追記(2/11, 10:45)***
ネットに出てる監督のインタビューを見ると、この映画日本以外では白黒だったらしい。日本でのニーズに従ってカラーにしたとある。びっくり。と、同時に白黒の方を見たかったという気持ちもあります。ただ、ラストのエンドロールのところはカラーにしたんじゃないかなぁ? と思ってYouTubeを探したら、ロシア語版が完全アップされてます 笑)いいのかなぁ、これ?? で、くだんのラストを見たら白黒ですね。ここだけカラーにした方がメッセージ性が強く出ただろうけど、やりすぎになっちゃうかなぁ。
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