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大江健三郎「セヴンティーン」覚え書き

2019.01.27.22:17

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大江健三郎は今から40年前、遅れてきた読者でしたが、随分読みました。昔の新潮社の「大江健三郎全作品」シリーズもまだどこかにあるはず。ただ、「同時代ゲーム」以降はほとんど読んでません。その後障害者との共生を高く評価されてノーベル賞を取ったわけで、その後の大江もいつか読もうと思ってはいるけど、障害ある子どもの親となって、逆にどうも手が出ないままです。

今回、これまで全く読むことができなかった「セヴンティーン」の第二部「政治少年死す」が収録されているというのが売りの「大江健三郎全小説3」を市の図書館から借りてきました。

なぜこれまで読むことができなかったかというと、これが文芸誌に発表された時代に、右翼による殺人事件「風流夢譚事件」なんかがあって、この作品もその流れで皇室を愚弄していると批判され、出版社が腰が引けてしまったためでした。初出の雑誌も図書館から撤去され、あっても大江のページだけ切り取られていたりしたそうです。

今読んでみると、確かに大江健三郎の露悪趣味全開だけど、17歳の少年が持つ自己嫌悪と自己顕示欲、さらにはその自己嫌悪の社会(他者)嫌悪への変化、あるいは何か支えとなるものを求める気持ちなんかに、結構感動しながら読みました。

20歳ぐらいの頃って、何か支えになるもの、それで世の中を一刀両断できるようなものを求めていたのは実際覚えがあるし、僕の場合だと遠藤周作のせいで一瞬キリスト教にそれを求めようとした瞬間があったような気がします 苦笑)

ただ大江の場合、どうしてもよく理解できないのが性的なものと天皇制のつながり。大江の中でも「性的人間」も読んだ記憶があるけど、読んでる最中は面白いけど、なにこれ?だったと思いますね。今回も正直にいうと実感としてはよくわからない。右翼少年の存在の支えとなる天皇に対する愛が性的オーガスムにつながるなんて、??です。

しかし文章はうまいしやっぱりノーベル賞作家です。すごいわ。右翼少年の心情を揶揄したり愚弄するのではなく、そのまま真摯にストレートに描き出せるというのにびっくりさせられます。自分の信じるものとは全く相いれないことを信じている人間を主人公にして、しかもそれを否定的に描くのではなく、その人物になりきったかのように描くというのが驚きですね。自分の信じるものをそのままむき出しで書くことはできても(というか昨今の小説はそれが多い気がします)、こういうのってなかなかできないでしょう? 

大江健三郎、本当のことをいうと、昔読んだと言っても断片的なシーンで覚えているところがあるにしても、ほとんど忘れていて、例えば「芽むしり仔撃ち」なんて読んだ時にはものすごく感動して興奮して友人と話したはずなんだけど(話したことは覚えているんだけど)、ほとんど忘れています。時代も変わってしまったし、この「セヴンティーン」にしてもこの時代の政治的な熱はもう遥か昔のことだし、そもそも戦中生まれの人たちの、明日にも死ぬ覚悟というのは僕らには実感できないです。そういう意味では大江健三郎の初期の作品群は古典になってしまったのかもしれませんが、しかし、古典は面白い! 来月中にきっと「芽むしり仔撃ち」を読み直すぞ!と言っておきます 笑)


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アンコウ
ミニさん、

こんにちは。コメントをありがとうございました。

私はリアルタイムではなく、完全に10年以上遅れて読んだのですが、それでも同じ価値観が続いていた時代だったので、夢中になりました。私がリアルタイムで大江健三郎が発表した小説は同時代ゲームで、ただ、このあたりから、私も今ひとつ面白く感じられなくなりました。なので、ノーベル賞後の小説は全く読んでません。そして私もミニさんと同じように、戦後民主主義者としての大江健三郎を尊敬しています。
2019.02.09 13:21
ミニ
初期の大江の作品は確かに面白かったように思います。小説は「万延元年のフットボール」まで、随筆なら「厳粛な綱渡り」あたりまでは読みましたが、そこらで面白くなくなり止めました。現代文学に縁がなかったのでしょう。後に、「ヒロシマノート」と「沖縄ノート」だけは必要があって読みましたが。
「セブンティーン」を読んだのは文字通り高2頃で、感動しました。「政治少年死す」も受験で東京に出てきた時に、神田の古書店街で海賊版を買いました。
懐かしくはありますが、年をとってから読めるか、というと難しい気がします。少なくとも、同時代の時のような没入は無理ですね。

戦後民主主義者としての大江健三郎は尊敬しています。
2019.02.08 15:00

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アンコウ

アンコウ
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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、クラシック音楽(特にバッハ)、友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎても困るが)。少し前から草食動物と化そうと「努力」しています。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

* 時々コメントが迷惑コメントとして、こちらにも通知されないまま、ゴミ箱に入れられてしまいます。これは管理ページで迷惑メールをチェックすれば見られるのですが、そんなところは滅多にチェックしないので、承認待ちの印が表示されない場合は、ご面倒でも書き直しをお願いします。2017年8月3日記す

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