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映画「誰でもない女」(ネタバレしてませんが。。。)

2018.11.27.00:53



参った。むちゃくちゃ暗い映画でした。ドイツとノルウェーの合作で、ナチスに占領された時代のノルウェーでドイツ人の子供を産んだ女性とその子供の悲劇と、戦後の東ドイツの国家保安警察シュタージの酷さを背景にしたミステリー映画。

いずれにしても、ナチスってどこか頭のネジが弾けとんじゃったんだとしか思えません。頭蓋骨の形で人種的優越性がわかるとか、雑種化してない純粋民族であるアーリア人が世界一優れているとか、どう考えたって、まともな頭の人が信じられるはずがないのに、当時の優秀なエリートたちですらそれを信じて、結果ありきで、なんとかそれに沿うようなこじつけ理論を色々考えたりしちゃったんだから。

もっとも今の日本でもやたらと人種にこだわるネトウヨなんかがいたりするわけだけどねぇ 苦笑)

で、この映画、レーベンスボルンってのが出てくるんだけど、これは「優秀なアーリア人」の子供を保護育成するための施設で、特に未婚の母たちの産んだ子供のための施設でした。少し前に紹介した田野大輔の「愛と欲望のナチズム」にもあったように、要するに、ナチスとしては兵士になってくれるか、兵士を生んでくれる国民がたくさん必要だったわけです。だから母が未婚だろうと、不倫の子だろうと「アーリア系」でありさえすればここで丁重に保護してお世話したわけね。

それと同時に、レーベンスボルンは、アウシュヴィッツをはじめとする絶滅収容所とは逆の意味も持っていたそうです。絶滅収容所がユダヤ人のような「劣等民族」を絶滅させるためのものだとすれば、レーベンスボルンは「支配民族」であるアーリア人を保護する意味合いを持たされていたわけです。だから、「劣等民族」のポーランド人の子供だけど金髪碧眼だとアーリア系とされてここに送り込まれ、ドイツ人の養子になったりしたそうです。ましてや、ノルウェーなんか、北欧の人はもともとアーリア系だと考えられていたから、占領軍のドイツ人との混血が積極的に促進されたそうです。だけど戦争が終わり、ナチスの神話が完全に崩壊した後、そうしたドイツ占領下でドイツ人と現地の女性との間に生まれた子供たちは(無論母親も)辛い戦後を送ることになりました。

ヴィキペディアで見ると、特にノルウェーは、戦後ナチと関係したノルウェー女性とその子供を酷薄に扱ったらしいです。え? 北欧の福祉国家として有名なノルウェーが?? と思うぐらい酷い話で、ようやく21世紀になって国家として謝罪するとともに補償を行ったそうです。この映画の中でも、ドイツ人を父に持つノルウェーの子供が、戦後たくさん殺されたというセリフが出てくるし、そもそもノルウェー国内にもレーベンスボルンの施設が作られていたそうで、映画の中でも母親はトロンハイムのレーベンスボルンで娘を産んだと言っています。

で、やっと映画にたどり着きました。この映画の主人公は、母がナチス占領下のノルウェーでドイツ兵と恋仲になり生まれた娘で、生まれてすぐに母と別れてドイツ国内のレーベンスボルンへ送られたという設定。彼女は戦後東ドイツの施設で育てられ、1969年にボートで亡命を企ててデンマークに漂着、その後ノルウェーに来て母と再会し、ノルウェー軍の潜水艦の艦長と結婚、娘が生まれ、さらにその娘はシングルマザーで息子を育てています。

そして現在、1990年、東西ドイツが再統一し、戦中戦後にドイツ兵の子供を産んだノルウェー女性に対する差別迫害について、ドイツとノルウェー両国家に謝罪と補償を求める訴訟の証人を求めて、母と娘の元にひとりの弁護士がやってくるのですが、母はともかく主人公の娘はなぜかその話に乗り気ではない。。。

というわけで、この後驚愕のどんでん返しが 笑) まあ、どんでん返しというには、途中で、特に回想シーンで、だいたいある程度はわかるんだけど、それでも最後の最後に明かされる事の真相にはちょっと驚かされます。前半のポイントがレーベンスボルンだとすると、後半のキーは東ドイツの国家保安警察シュタージ。

アカデミー賞をはじめたくさんの賞をとった「善き人のためのソナタ」でも主人公がシュタージの職員でしたが、実際、ドイツ統一後いろんなことがわかってきます。何しろすごい組織だったらしく、東ドイツの名のある人たちはみんなシュタージに協力させられていたようで、「善き人のためのソナタ」が公開された時も、あんな善良なシュタージはいなかったと言われたそうですからね。統一後、旧東ドイツでは国民みんながスパイだった、みたいなトンデモない疑心暗鬼の状態になったそうです。

主役の女性は「ヒトラー最後の12日間」でヒトラーの愛人エーファ・ブラウンをやったり、アカデミー外国語映画賞を取った「名もなきアフリカの地で」の主役をやった人です。でも個人的にはシュタージのボスをやったライナー・ボックという俳優が相変わらず良いです。この人、前に紹介したハネケ監督の「白いリボン」でものすごいインパクトでしたが、何しろあのご面相なので、やれる役柄が決まってくるんでしょうけど、今回も、若い時のシーンでも現在のシーンでも、とってもいいですねぇ。顔を見てるだけで楽しいです 笑)

というわけで、この「誰でもない女」、大して期待しないで借りたんですが、個人的には☆4つ。ただし、冬のノルウェーの荒涼とした風景と、誰が聞いても悲劇的と感じられる音楽も相まって、例によって後味悪いです 笑)



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アンコウ

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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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