
題名がちょっとキッチュだなと思いつつも図書館で借りてきたら、これが結構面白かった。
ナチスは政権を取るや否やすぐに結婚資金貸与制度を制定し、夫婦に1000マルクを無利子で貸与して、子供が一人うまれるごとに25%を返済免除、4人生まれれば完全免除になるような制度を作った。ただし無論健康な純粋なアーリア人種であることが絶対条件だけど。
あるいは1941年にはSS長官のヒムラーは子供のない結婚は国家が援助するに値しない。どこかの夫婦が幸福だったかどうかなどどうでも良いことで、大事なのは彼らが子供を作ったかだ。子供ができない結婚なら離婚すべしという規定を作りたいと言ったそうだ。
ナチスは徹底的に同性愛を否定した。同性愛者を目の前で売春婦と性交させて、うまくできなかったものを収容所へ送るようなことまでした例もあるそうだ。
それもこれも、国家が強くあるためには兵士になる(あるいは兵士を生む)国民が大量に必要だからだ。戦時下では子供を作ることが「崇高な義務」であり、女性たちは「母親となることが(。。。)崇高な使命」になった。だから「同性愛者は生産性がない」とみなしたわけである 苦笑)
当然のことだが性道徳は乱れる。未婚の母は増えるが、そうした母子を収容する立派な擁護施設も存在した。子供が生まれれば未婚だろうが不倫だろうが構わなかったわけだ。国家がそれを後押ししたのである。
そもそもがナチスというのはその前の民主的な、ある意味では自由で猥雑なワイマール文化を否定し、健全な道徳観や清潔さを売り物にのし上がってきたはずなのだけど、伝説の陸上スプリンター、ジェシー・オウエンスを描いた映画「栄光のランナー」でも準優勝したドイツ人ルッツ・ロングが子種を欲しがって次々に迫ってくるファンの女の子たちの話をしていたように、「民族の健全化を標榜し、性的不道徳の一掃に勤めたはずの政権のもとで、かくも無軌道な男女関係が幅をきかせるようになったのは(。。。)ナチズムによる性生活への介入の、ある種の逆説的な帰結だった」。
他にも例えば「売春の一掃に乗り出す」はずのナチズムは「売春の組織化」に舵を切り、制欲の充足を奨励して、それを国家目的(子供を増やす)に動員しようとした。
現在の日本の少子化を嘆く声は大きい。人口が減ると経済成長できないとか、年金制度が破綻するとかいうけど、新調45を潰す原因になった議員の発言なんかを聞くと、国家が少子化を心配するのは、この本で描かれるナチス的な発想ではないだろうな、と疑わしく思えたりする。

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