去年図書館で予約したのだけど、結構予約が入っていてやっと読めた。何しろ私、経済ってやつがまるでわかってないからね。果たしてついていけるかな、と思いながら読んだけど、ものすごくわかりやすく書いてあるので、なんとか振り落とされずに読み終えた。たくさんの人に読んで欲しいと思った。
要するに、あれだけ無茶苦茶やっても安倍の支持率が下がらないのは経済的な面で民主党時代よりずっとマシだとみんなが思っているからなのだろう。ところがこの本によると、そこにはかなりとんでもないごまかしがあるということになる。びっくりさせられたのは実質GDPで、同じ3年間で比較した場合、なんと、アベノミクスは民主党政権時代の3分の1しか伸ばせなかったというのである。
安部が誇っている株価上昇も日銀による異次元の金融緩和と年金資金投入によるもので、実体経済を反映していない。また円安によって恩恵を受けたはずの製造業ですら実質賃金は大きく下落している。
一方で、雇用が改善されたというのは、民主党政権時代から続いてきたものをアベノミクスの成果にしてしまうという盗人的まやかしである。こうしたことが公的なグラフ(全て出展が明示されている)を多用することで、はっきりと分かるように説明されている。詳しくはぜひ手にとって読んでみて欲しいと思う。
拙ブログでも何度か書いたが、自分の足元から見なくてはならない。大所高所から物を見て偉そうなことを言っても自分の足元がぐらついているなら無意味だろう。自分の足元を見て、株価が上がって得したと喜んでいる人は安倍を支持すればよろしい。でも、僕もそうだが株なんかやってない人間にとって、景気が良くなったなんて感じられるだろうか? 言葉に踊らされてはいけない。
結局、「アベノミクスって選挙対策としてはいい(。。。)中身は知らないけどなんか「頑張ってる感」は出るし、株価とか為替とか目立つ数字だけは好調に見えるから「民進党よりマシ」って考えにつながりやすい」(p.216)っていうことなんだろう。
何より第6章の「働き方改革」という美名のもと(実際は「働かせ方改革」だという人も多い)、今まさに強行突破されんとしている残業代ゼロ法案の説明は恐ろしい話である。実に簡単なことだけど、この法案が通ればブラック企業がやりたい放題になるし、そうなればホワイト企業もブラック化せざるをえない。そうしないと競争にならないからだ。
確かにこの法案の一つ「高度プロフェッショナル制度」は、当初こそ年収1075万円以上の人を対象としている。こんなに稼いでないから関係ないなんて言っていたらバカを見る。何より経団連は年収400万以上の労働者の残業代をゼロにしろと言ったのだ。次の改正では800万以上と言い出すだろう。上の方は既にゼロになっているから反対しない。800万が通れば600万になる。既に0になっている800万以上の層は反対しないどころか賛成するだろう。年収600万が通れば400万、300万。。。。まるで前から何度も引用したマルティン・ニーメラー牧師の詩のようだ。
*
ナチスが共産主義者たちを連行したとき
わたしは黙っていた
だってわたしは共産主義者ではなかったから
やつらが社会民主主義者たちを投獄したとき
わたしは黙っていた
だってわたしは社会民主主義者ではなかったから
やつらが労働組合員たちを連行したとき
わたしは黙っていた
だってわたしは労働組合員ではなかったから
奴らがわたしを連行したとき
抗議してくれる人は
もうだれもいなかった (アンコウ訳)
*
この本で一番ショッキングなのは、ここまで来てしまったアベノミクスは、今すぐやめても国債暴落とともに円と株も暴落する。だからといってこのまま続けていけば、円の信用が失われ、円が暴落する可能性もある。この本に書かれていることを信じる限り、アベノミクスをやめても続けても、もう、日本経済は近い将来とんでもないことになる。
まさに、「余計なことをした自民党より特に何もしなかった民主党のほうがマシ」(p.54)ということだ。しかし、これを安倍は無論の事、政治家が考え出したはずはないので、官僚たちが後ろで画策した結果なのだろう。そして彼らは失敗に終わろうが、何が起きようが責任を取るつもりなどない。戦時中の参謀たちと同じだ。責任を取るつもりもなく、場当たり的に兵士たちを使い捨てして、ぐずぐずと敗戦を先延ばしし、無駄に国民を殺した連中と同じだ。これはおかしいと考える前川前次官のような良心的な官僚たちもいるんだろうけど、現在、そういう人たちには発言力がないんだろう。

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