またまた映画の話。今日の午後新宿で見てきたんだけど、観客は10人いなかったなぁ。
「のっぴき」という言葉を辞書で引くと「退き引き(のきひき)」の変化形だと出ている。映画を見ながら、主人公がどんどん「のっぴきならない」状況に追い込まれていくのに、かなりイライラさせられた。途中何度も、主人公のお人好しな反応に、思わず、「あっ、バカ」と口に出したくなった。
主人公は人の良い善良な、だけどちょっと気弱なドイツ人の中年男。妻は作家で夫婦仲はあまり良くない。一人娘を連れてスイスへスキーに行くのだが、そこに上司の娘も一緒に連れて行く。そこには多少の上司へのごますりもあるわけである。ところがコテージに到着して早々に、コテージの管理人の息子と知り合った娘たちがパーティーに参加して、酒を飲んだ挙句に上司の娘がレイプされたと訴える。しかし警察に行くのは嫌だし、親たちには黙っていて欲しいと言われて、黙っていることにした主人公が、その嘘にどんどん絡めとられるように「のっぴきならない」状況に追い込まれていく。
話はとてもうまくできていると思う。妻との関係が今ひとつうまくいっていないというのもポイントで、普通なら女の子のことだし、妻に相談するだろうけど、もともと妻は上司の娘を一緒に連れて行くことに反対していたわけで、この辺りも設定がうまい。主役をやった俳優がまた、いかにもという感じでうまい。「ヒトラーの贋札」でナチス将校をやった役者だった。ヨーロッパ映画を見ていると、俳優たちが演技しすぎないところが、とてもいいと思う。映画を見ながら、なんとも言えない既視感を感じていた。最初の掛け違いからどんどんドツボにはまっていく、こんな話、どこかで読んでるよなぁ、と思いながら、とうとう思い出せないまま、今もなんとなくワジワジしている。大江健三郎の最初の頃の小説にこんなのなかったかなぁ?
ラストはちょっとびっくり。え?こんな終わり方でいいの? 僕の予想では「太陽がいっぱい」みたいなラストになるかな(雰囲気は全く違うだろうけど)と思っていたんだけど。まあ爽快感はないし、見る人が見れば、嫌な映画だと言うかも。

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