拙ブログでも書いたことのあるヴェルナー・ヘルツォーク監督。今東京の新宿で特集を組んでいて、20世紀に作られたものだけですが、10本を上映中です。僕は「ヴォイチェック」とこの「問いかける焦土」を見てなかったので、この二本と、大好きなんだけど、しばらく見ていない「カスパー・ハウザーの謎」をなんとか時間をやりくりして見てこようと思った次第。
で、今日、まず、表題の映画を見てきました。1991年の湾岸戦争のドキュメンタリーですが、印象としては「コヤニスカッティ」みたいな感じでした。コヤニスカッティではフィリップ・グラスの不思議な音楽が魅力的でしたが、こちらではワグナーやアルヴォ・ペルト、あるいはヴェルディやマーラーやグリーグの音楽がBGMで、しかもワーグナーだとジークフリートの葬送行進曲とか、ヴェルディはレクイエムだし、ペルトはもう言うまでもなく暗いし、こういう美しくも、人間の愚かさを感じさせる映像によく合ってました。
イラクがクウェートへ突然攻めて行った1991年の湾岸戦争、この映画ではイラク軍によって息子を殺された母親や、父親を殺されて口をきかなくなった子供などのインタビューも出てくるけど、戦闘シーンがあるわけではないし、ただ捨てられていった砂漠の壊れた車などのガラクタが延々と空撮で映され、石油の真っ黒い大きな水溜りがアップで撮られ、だけど、やっぱり印象に強く残るのは砂漠の空撮と、なによりイラクが撤退時に火をつけていったクウェートの油田火災の風景でした。
ボッシュの絵の地獄図のような火と真っ黒な煙の物凄さ。残念なことにそれがとても美しいんですねぇ。環境破壊だし、資源の無駄遣いだし、美しいなんて言っていいのか、とも思うんだけど、あの映像はちょっと忘れられない。
ヘルツォークの映画はいつでも風景とともに、意外なものにびっくりさせられるんですが、この黒煙もうもうの砂漠の火災の消火活動をしている人たちが、最後に火が消えて吹き上がっている石油に、なぜか、もう一度火をつけます。茶色い石油が棒状に吹き上がっているところへ火の付いた松明のようなものを投げ入れると、石油が一気に燃え上がり炎の柱になり、黒煙を噴き出します。何故あんなことをしたのかの説明は全くなし。まあ、ヘルツォークらしいといえばそれまでですが。

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