ナチスドイツ時代のハンブルクで、ナチにより退廃芸術として禁じられたジャズにうつつを抜かす青年たちを描いた日本人作家による小説です。
津島佑子の「狩りの時代」に、ヒトラーユーゲントの話が出ていました。そこから当時の青少年たちについて知りたいと思って読んだ「ナチ独裁下の子どもたち」という本で、スウィング団という反ナチ(?)グループがあることを知り、それを扱った日本人の小説が出たと聞いていて、やっと読んだのでした。
このスウィング団、思想的な反ナチではなく、自分たちがここちよいと思うものを禁じられたことに対する抵抗として、ゲリラ的にパーティーを開いたりしますが、主人公たちは富裕層のボンボンで、兵隊にもならずに済むような恵まれた奴らです。
しかし、そんな彼らも時代とともに。。。
ハンブルクというと、第二次大戦中に
ドレスデンとともに、連合軍の激しい爆撃にさらされたことで有名です。昔、20世紀の時代にはシムシティという、街を作っていくゲームがありました。僕は友人のところで数回やったら飽きましたが、その中にハンブルク1944というのがあって、ハンブルク市の火災を消し止めつつ、街を復興させていくシミュレーションになっていました。
そういうわけで、この小説でもハンブルクが爆撃にさらされるシーンが出てきて、このシーン、私は電車の中で読んでいて乗り過ごしました 笑)
事実に基づいた小説で、時代背景や史実をかなり克明に追いかけ、細部の道具だけのリアリティもあるし、実在の人物も出てきたりして、すごい小説だと思うんですが、文章がどうにも気に入らない。特に会話の間の地の文が、主語のない、いわゆる体験話法みたいな文章を多用していて、僕としてはとても読みづらく感じた。
会話自体も現代の若者ことばで、ちょっと違和感を感じます。特に最初の数十ページは、読むのやめようかと思ったぐらい。ただ、読み終わった今はやめなくてよかったと思っています 笑)
登場人物たちの名前も覚えづらく、冒頭の地図と登場人物のページをコピーすることをお勧めします。さらに、その登場人物一覧も前半の人物がメインなので、後半には、ここに名前が出てこない重要人物も出てきます。書き加えていった方がいいでしょう。
読みながら、70年以上前の話ではなく、近未来ディストピア小説ではないか、と思ったりしたけど、今の時代にこういう話を書くことに、作者には、言うまでもなく、なんらかの含意があるのでしょうね。

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