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映画「サクリファイス」その他を見た(ネタバレ)

2017.05.13.18:53

例によって東京の渋谷でやっているタルコフスキー監督特集。昨日は「ローラーとバイオリン」と「僕の村は戦場だった」、今日は遺作の「サクリファイス」と見てきました。少しメモしておきます。

ローラーとバイオリンは最初の作品だけど、短編映画で、すでにタルコフスキー哲学が出てます。ラスト、思いは現実を超えるという暗示でしょうか。晩年の「ノスタルジア」や「サクリファイス」の人類救済のおまじない見たいな話につながるように思います。

「僕の村は戦場だった」は冒頭の樹木のアップ。カメラがだんだんアップの樹木を登っていくシーンで始まるんですが、遺作の「サクリファイス」のラストが全く同じように、カメラがアップの樹木を登って終わります。タルコフスキー映画の円環が閉じたような形で、すでに癌で余命幾ばくもないことを知っていたタルコフスキーは多分意図的にやっているんじゃないかと思います。この映画は主役のニコライ・ブルリャーエフという少年がいいんですね。思い出の中と現在との顔がまるで別人のように違う。思い出(=夢)のシーンも疲れ切ったブルリャーエフが爆睡、その間、遠くで常に雫がポタン、ポタンとリズムを刻んでいます。ブルリャーエフのベッドからはみ出た手がアップになると、なぜかその手から水の雫が落ちています。あれ?と思う間もなくカメラが上に向くと、そこは井戸の底、上から母親とブルリャーエフが覗き込んでいます。何度見てもゾクゾクします。

この映画は、偵察のためにドイツ軍の様子を伺いに行き、殺された少年の話が原作のようですが、映画の最後に死んだゲッベルスの6人の子供達の遺体や、家族を道連れにして自殺したナチの将軍?の子供達が出てきます。メッセージは明らかで、戦争で一番大きな被害を受けるのは子供達だ、と言っているのでしょう。ただ、これはソ連が願う戦争の描き方とは違っていたのでしょうね。

さて、「サクリファイス」です。何しろワンカットが長い。冒頭のシーンからして、計ってないから正確にはわかりませんが、おそらく10分近くワンカットだったんじゃないでしょうか。カメラがあきれるぐらいゆっくりと移動し、登場人物たちが移動していくのに合わせて、少しずつ横に移動しながら近づいて、最初は人物の顔もはっきりわからないぐらい遠いところから始まり、10分近くかけて、気がつくと、すぐそばまで近づいています。全編そんな調子で、カメラは気がつかないぐらいわずかずつ近づいたり横移動したりしますが、そのリズムがなんとも眠気を呼びます 笑) 

ストーリーを言うと、あまりにバカバカしさに笑っちゃうかもしれません。世界戦争が始まり、主人公は神に、もし全てをなかったことにしてくれたら、全てを犠牲に捧げると祈ります。翌朝、目がさめると、全ては何もなかったかのような世界に戻っています。そこで主人公は神との契約通り家に火を放ちます。最後の家に火をつけてからの、約10分のワンカットシーンは、おそらく映画史上に残るものすごいシーンです。全てが計算し尽くされているように家は燃え上がり、煙を吐き、横の車が爆発し、煙が止まって炎だけになり、崩れ落ちる。その前を人々が右往左往し、カメラもそれを追って移動していきます。そのスペクタクルに圧倒されます。

さて、あと月曜に「ストーカー」を見れば、今回のタルコフスキー特集で上映された映画を全制覇になります。「ストーカー」は、多分、また書きます 笑)



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アンコウ

アンコウ
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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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