fc2ブログ
2024 03 << 123456789101112131415161718192021222324252627282930>> 2024 05

映画「エゴン・シーレ 死と乙女」覚書き (ネタバレ)

2017.01.31.00:59



破戒なのか革命なのか
関節のゴツゴツした音は
たまげた構図の中で休む
エゴンシーレは誰なのか(友川カズキ「一人ぼっちは絵描きになる」)

というわけで、土曜日(初日)に見てきたんですが、忙しくてやっと覚書き程度にまとめました。エゴン・シーレという画家が好きかと言われると、嫌い、でも気になる、と答えますかね。

1979年に池袋の西武デパートの上の方にあった美術館で本邦初のシーレの展覧会があった時には見に行きました。その時の印象は死体みたいなグロテスクな色のヌードの女や自画像、しかも陰部を強調するかのように赤く塗ってあって、言葉として最初に思い浮かんだのが「痛ましい」っていう言葉でした。

その後マチュー・カリエールという、「陰鬱」っていう言葉を顔にするとこういう顔か、っていう俳優がやった「エゴン・シーレ」の映画も見に行きました。これは一回目に見たときには人物関係がよく分からなくて、多分その後も2、3回見たはずです。映画自体もあちこち話が飛んでわかりづらかった記憶がありますね。シーレの悲劇的な人生を描いたものでしたが、主役のカリエールの陰鬱な表情と枯れたヒマワリ以外、出てくる風景も女性たちもきれいだし、シーレのあの陰惨な絵のイメージがあまりなく、むしろシーレという人の悲劇性が強く前面に出ていたような印象があります。特に、有名な未成年女児誘惑事件で留置されたシーレが解放された時のシーンが、最後の、エゴンが死んじゃった、と叫ぶ妹の声の後に繰り返され、シーレにとってこの世とは留置場のようなものだったという暗示なのでしょう、そんな終わり方をしてました。

今回の「エゴン・シーレ 死と乙女」では、シーレを囲む女性たちを大きく扱っていて、前の映画では出てこなかった妹ゲルティとの関係や、踊り子モアも重要な登場人物です。特に妹ゲルティとの近親相姦じみた関係は前の映画にはなかったものです。前回の映画もそうですが、今回のはさらにシーレの人生を正確になぞっているようです。この画家が、描く事を何よりも大切にしていて、それこそ「コト」の最中にも、鏡を見てスケッチを始めちゃうような困った人であったことがよくわかります。そもそもが、自分にとって最も大切なはずの、長年連れ添ったモデルのヴァリーを捨てて別の娘エディットと結婚してしまい、あろうことかヴァリーには愛人でい続けてくれ、と頼んじゃうような非常識さ(しかも現実にはエディトの姉とも関係があった可能性が高い)。

このヴァリーという女性もクリムトのモデルだったのに、シーレに「払い下げられて」専属モデルになり、長年連れ添った挙句、シーレは別人と結婚し、第一次大戦の従軍看護婦として23歳で戦病死してしまうかわいそうな人ですし、シーレが結婚したエディトもシーレの死ぬ直前に同じスペイン風邪で死んでしまうわけで、お気の毒な方です。しかもその瀕死のエディトのスケッチをシーレは高熱に苦しみながら描くというすさまじさ。

映画は、シーレがまさに今瀕死の状態にあるところから始まります。瀕死のシーレを救おうと奔走する妹のゲルティと、それと交錯するように、10年ほど前の、妹のゲルティをモデルにしてヌードを描くシーレから始まり、踊り子モアと画家仲間たちと芸術家コロニーを作ろうとして失敗したエピソードが続きます。その後、クリムトから譲られたモデルのヴァリーとの生活、そして家出少女を泊めたことから未成年の少女誘拐・強姦の疑いをかけられた裁判という有名なエピソードが描かれます。この裁判は結局無罪になったけど、ポルノ画家扱いされて、作品の一つを燃やされてしまうわけです。その後、第一次大戦が近づく頃、エディトとアデーレの姉妹と知り合い、エディトと結婚して、兵役に就いた後、間もなくスペイン風邪で死ぬという始まりのところへ戻ってきて輪が閉じたように終わります。

歴史的事実としては死の半年ほど前に開かれた展覧会で大成功を収めるんですが、映画ではそれはあまりわからないですね。

シーレが好きなら、いろんなシーレの絵が出てくるし、「死と乙女」というシーレの有名な絵の題名の由来もわかって面白いのではないでしょうか。ただし、あの絵の成立と題名の由来が本当に史実に基づいているのかどうかは知りません。何れにしても、ネットででも予備知識をつけていった方が楽しめると思います。


よろしければ、下の各ボタンを押してくださいませ。

にほんブログ村 自転車ブログへ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト



comment

post comment

  • comment
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackback

trackbackURL:http://tatsuya1956.blog48.fc2.com/tb.php/2790-50d7d71e

プロフィール

アンコウ

アンコウ
**********************
あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

* 時々コメントが迷惑コメントとしてゴミ箱に入れられることがあるようです。承認待ちが表示されない場合は、ご面倒でも書き直しをお願いします。2017年8月3日記す(22年3月2日更新)

カテゴリー

openclose

FC2カウンター

Amazon

月別アーカイブ

検索フォーム