CYPRESS
藤田嗣治の戦争画って、『アッツ島玉砕』
『サイパン島同朋臣節を全うす』
かな?
この2点は竹橋の何でもある東京国立近代美術館のもの。
今年初め、樂家15代の楽焼を見たついでに見たけど、
素人衆にどう見えるかは分かりませんが、
てきとーに描いてるなぁ。
依頼主は、絵心も無い、美意識も無い、風流も無い、無粋な人間の役人と軍人だから小馬鹿にして描いたな、あれは。
特に『サイパン島同朋臣節を全うす』は、ライフルの描き方が酷い、手抜き甚だしい。
ライフルが象徴する事は軍と戦争、その背後の人々。
馬鹿にしております、あれは。
東京国立近代美術館には明治以降の日本画、洋画、写真、何でもあってビックリするんだけど、その中の一枚に北蓮蔵の『提督の最後』って言う戦争画がある。
実はこの絵、今からちょうど50年前の1967年、毎日グラフ1967年11月3日号臨時増刊「太平洋戦争名画集 日本絵画史の一断面 アメリカ国防総省が押収した記録画」に載ってて、50年前から知ってた。
ミッドウェー海戦での山口多聞提督達の最後を描いた作。
これもなぁ、提督はじめ高級将校たちの描き方を見ると、戦意高揚、戦争協力とは思えんのです。
写真と見紛う細密写実描写だけど、無表情。
軍人ではなく、単なるおっさん達にすぎんね、あれは。
疲労感も無ければ、何人も犠牲になった部下に対する後悔や謝罪の念も無し、敗戦の責任を取り艦と共に運命を共にする覚悟や心の強さも無し。
「絵描きだから絵で表す、絵を見て判断してくれ」
なんですな。
…当時の政府の依頼と意向に従って描いたのも事実。
それを糾弾してもいい。
素人衆にはそこまでしか分からん。
しかし、好き好んで描いたんじゃないと分かってくれるのは、絵心のある好事家だけでいい…
藤田嗣治も北蓮蔵もこの覚悟で描いたんじゃないだろうか?
エドゥアール・マネの代表作『笛を吹く少年』はサロンにケンカを吹っ掛けたに間違いないと私は思ってるけど、藤田や北の依頼主は無粋者だからケンカにもならんかった。
特に北の『提督の最後』は写実描写で完全に騙したな(笑)。
惻隠の情を育てるのは謡曲であると新渡戸稲造の『武士道』に書いてあるけど、当時の軍人が武士道で育ってないのは明らか。
円谷英二も『ハワイ、マレー沖海戦』の特撮監督をやったけど、何の弁明もしなかった。
そのためか、糾弾されない、何も言われない。
私自身、藤田ファンじゃないけど、絵を見ると肩を持つ方になっちゃうなぁ。