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ルーカス・クラーナハ展

2016.10.22.01:31

上野の西洋美術館で見てきました。僕は自己紹介にも書いてあるように15、6世紀のフランドルの、ファン・エイクからブリューゲルあたりまでの絵が特に好きなんですけど、なんでそんな古い絵が好きなのかな、と考えてみると、実は、絵じゃなくて、あの時代の雰囲気が好きなんだろうな、という気がしてきます。

ホイジンガというオランダの歴史学者がいて、その著作に「中世の秋」という本があるんですが、その時代のメランコリックな雰囲気とか、敬けんで静謐な宗教的な情感とか、そんなものに憧れていた、とともに、これらの画家たちの絵に描かれている人々の佇まいに惹かれたんでしょう。実際の画家たちは、ホイジンガの本でも指摘されていたけど、そうした静謐で敬けんで宗教的な世界とは真逆の、宮廷や貴族や金持ち階級のけばけばしい世界で活躍してたんですけどね。

まあ、それはともかく、クラーナハといえばやっぱりファム・ファタルというやつ。普通運命の女とか訳すんですかね? 男を破滅させる女のイメージ。敵将を色仕掛けで酔わせて文字通り寝首をかいてしまう美女、ユーディットの絵が一番有名でしょうか。この絵、画集なんかで見るよりずっと明るいのに驚いたんですが、どうやら最近修復されたようです。

クラーナハは工房で大量生産したんで、ものすごい数の作品があるらしく、女性の顔は魅力的なのもあれば、なんか下手くそな印象のもある。ヌードも、やたら妖艶な魅力的な(まあ、俗にいえば「いやらしい」)のもあれば、腹ぼて気味でなんかゴツゴツ腰骨が浮き出てんじゃないのって感じの、あまり魅力的じゃないのもある。今回来ていた中では、やっぱり会場に入ってすぐの聖母子像とユーディットが一番でした。それと、今回実物をたくさん見て思ったのは、なんか黒い色がものすごく黒いという印象です。それは肖像画の背景だったり、森の木々の間の影の色だったり、ルターの僧服の色だったり、いろいろなんですが、恐ろしいぐらい黒いというのが印象に残りました。

デューラーの版画なんかも一緒に展示されていて、見比べると、クラーナハはデューラーより、やっぱりワンランク下なのかな、なんて思いました。例えばクラーナハのルターの肖像とデューラーのメランヒトンの肖像の差は、モデルの違いを別にしても、同じ銅版腐食版画であるにもかかわらず、迫力がずいぶん違います。デューラーもそうですけど、なんとなく無骨な感じで、イタリアルネサンスの絵画なんかと比べると、逆に写実的なのかな、とも思えます。なんか、みんな田舎の姉ちゃんみたい 笑)

金曜の3時ぐらいから見たんですが、けっこう人は入ってましたね。



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comment

CYPRESS
嫌な奴だった?
カラヴァッジョと同じじゃん(笑)。
ところで、聖トマスの左手に注目しましたかな?
左手のチョイ上、槍と直交している「線」がある。
オマケにのその「線」の画面上左端、白で光が当たっていると描いとります。
隠しながらも、注目して欲しいとラ・トゥールが言ってる訳(笑)。

暗示するのは、十字架以外にないでしょう。
師匠イエスの教えの一つ、祈りは人の目の無い所でやれ、でしょう、これ。
それで信仰心と解釈。

国立西洋美術館の彫刻だと、屋外のブールデルの「弓を射るヘラクレス」が楽しい。
南側に向かって設置され、弓を射ようとしているから、晴れた昼間だと太陽を射ようとしてます。
後ろに回って見ると、イカロスの敵討ち気分を味わえます(笑)。
2016.10.25 00:45
アンコウ
CYPRESSさん、

だから、前から言っているようにラ・トゥールはすごいんだってば 笑) 書いたことがあるけど僕は高校の図書館で薄っぺらい画集を眺めていてこの画家を知った。当時はタイプとして似ているカラヴァッジョよりもずっと好きだった。

ラ・トゥールは田中英道という人が書いた「冬の闇」という本があって、資料から推測するに、ものすごい嫌な奴だったらしいよ。それがああいう静謐で敬けんな絵を描くということで、かなり面白く読んだ記憶がある。きっと絶版だろうけど、図書館にはあるんじゃないかなぁ。この著者の本は日本美術史のものもあって、それもかなり感動したけど、最近日本回帰というか、なんかちょっと右翼がかってきたらしい 笑)

聖トマスは信仰心ではなく、逆に復活したイエスを信じなかったことで、ああいう猜疑心の塊みたいな顔をした絵になっているんじゃなかった? 僕はあの絵を見たときに、田中英道の本のことを思い出し、これは自画像に違いない、と思ったよ。

高校時代はラ・トゥールが一番好きな画家だったかもしれない。常設展では僕もラ・トゥールとロヒール・ファン・デル・ウェイデンは外せません。それとロダンの荒野のヨハネのあの手の形を真似ながらスロープを登るのが、一つの儀式だな 笑)
2016.10.23 23:57
CYPRESS
私も行った(^.^)。
私にとって「クラーナハ」ではなく、「クラナッハ」でありんす(笑)。
私にとってクラナッハと言えばマルティン・ルター。
帽子を被ってるのと被ってないの、両方見られて満足(^.^)。
よく見るとジーコじゃん(笑)。

確かに画力はアルブレヒト君の方が上。
銅版画の線描の素晴らしさだけでなく、今回改めて見ると絵が強い。
視線と関心を捉える雰囲気が強い。

ただ、アルブレヒト君より強く、凄い絵があった。
常設展のジョルジュ・ドゥ・ラ・トゥールの「聖トマス」。
遠目からも「あ~、あの絵か」と分かる有名な絵。
2003年に購入したとか。
この絵の前を見る前に、「聖トマス」のちょうど反対側にロイスダール初め17世紀オランダ絵画が掛かっていてこちらも褐色中心の色使いで遠目からも「あ~昔のオランダ絵画ね」。
ロイスダールの描くオランダの森はなんで褐色の掛かった緑なんだといつも同じ感想で振り返ると、光り輝く絵が一枚あった(@_@)。
「?」
ラ・トゥールの「聖トマス」でした。
この絵も褐色だけしか使ってないのに、エラく輝いている。
同じ褐色系なのにロイスダールと全く違う、当然だけど(笑)。
カラヴァッジョも光り輝いていたけど、雰囲気が少々違う。
カラヴァッジョの「エッケ・ホモ」はピラトが3Dの様に飛び出してきたけど、「聖トマス」は動かない、微動だにしない。
そんな動きが無い物に人間の視覚は反応しないんだけど、目を離せない力を放射している。
それでも、生命感とでも言う現実感、写実感はカラヴァッジョと同じ。
とても生き生きしている。
両手の汚れの描写なんか、正に「種まく人」。
キリストの教えを自ら地道に説き回った使徒に相応しい汚れ。
そしてトマスの象徴と言うか持ち物の槍をよく見ると、十字架が槍の裏側にあるのが分かる。
この辺まで見るとこの絵の雰囲気、力の正体が分かってきた。
日本人には分かりにくい信仰心、敬虔な信仰心。
それも並の信仰心ではなく、巌の如く強固な信仰心。
疑問の余地の無い、不動の決意。
殉教の覚悟の信仰心。

ふ~ん、だから強力な力だけど、動かないんだぁ…
こんな絵初めて見た(@_@)。
宗教と信仰心と言うモノの強さを初めて実感。
何年か前の回顧展を見逃したのが惜しい(涙)。

ジョルジュ・ドゥ・ラ・トゥール、もっと評価されてもいいんじゃない?
凄い絵師ですゼ、ほんとに。
2016.10.22 23:44

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アンコウ

アンコウ
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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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