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岡田一郎「革新自治体」を読んで思った事

2016.07.25.23:13



僕は1976年に選挙権を得たけど、当時、選挙でどこに入れていたか、誰に投票したかは、実はあまりよく覚えていない。

当時の僕の大学は、正門前にゴザを引いて、「●●学部、何の誰べえ、学費値上げを当局が撤回するまでハンスト決行中」と書いた看板を立てて座っている人がいたり、4年間で2回もロックアウトになって試験がレポート試験になったりするという、70年代半ばになっても、まだ学生運動の激しかった大学だった。当時の狭く汚い中庭には立看板が並び、時々ヘルメットをかぶった連中が集まってシュプレヒコールを叫んでいた。学生部の教授が台の上で吊るし上げにあっているのも見たことがある。吊るし上げって言っても別に絞首刑になっちゃうわけじゃないよ。また、帰宅してTVをひねったら夕方のニュースで見覚えのある汚い中庭が映し出され、内ゲバ(こんな言葉も今の若い人たちにはわかるかなぁ)で死者が出たと報じられていたこともあった。

だけど、実際は、政治の時代はとうに終わり、ほとんどの学生がいわゆるノンポリだった時代。共産党の青年組織に所属している友人もいたし、創価学会のクラスメイトからは選挙前には電話がかかってきたけど、生返事をしてあしらっていた。さすがに革マルや中核みたいな過激派の友人や知り合いはいなかったが。

棄権は一度しかしなかったと思う。以前書いたように当時は卓球に夢中で、同好会だったんだけど、リーグ戦と選挙が重なって、棄権したという記憶がある。

では、普段はどこに投票していたんだろうか? 多分社会党に入れていたと思うけど、それに何か理由があったかと言われると、よくわからない。心情左翼という言葉が自嘲気味とはいえ、普通に言われていた。共産党は入れたことがあったかもしれないけど、自民と公明には入れたことはないと思う。まあ、その程度のリベラルということだったんだろうけど、要するに何もわかっていなかった。ただ時代の空気は「反権力」だったと思う。僕も当時の空気に流されていた、といえばそうだったのかもしれない。

というわけで、まさにその時代に各地で発生した革新自治体の栄枯盛衰と、その意義を書いたもので、読んでいて、僕の世代としては、なるほど、そうだったのか、と思ったりするところが多かった。名前も当時聞いた名前がたくさん出てきて、今年60になった僕にはすらすらと読めた。

先日、革新都政を望むと書いたら、コメントでネトウヨに絡まれたが 笑)、そこでの美濃部批判が、公営ギャンブルを廃止してパチンコを野放しにした、という呆れるような頓珍漢さ。

そこじゃないだろ、批判するのは!! 

結局批判できる事柄(=理解できる事柄)が、あのネトウヨ氏にはここしかなかったんだろう。ただ、きっとネットにはこういう低レベルの、サルでもわかる批判が蔓延しているんだろう。安倍のやり方だって、まさにそうだしね。ヒトラーは大衆はバカだから、同じことを何度も繰り返さなくてはならない、聞いている人間のうちで一番物分りが悪い者のレベルで話をすべきだと言っているけど、今の日本でもそれが通用しちゃうんだね。

当時批判としてよく言われたのは、福祉と公務員の人件費が財政難を引き起こしたということだった。だけど、福祉や保育所、環境問題(公害問題)を国に先駆けてレベルアップさせたという功績は、絶対にあった。美濃部都政があったおかげで、老人や障害者や公害に苦しむ人たちがずいぶん助けられたのは間違いない。

当時を回想した政策室長の文章には「『おかげさまで、私が死ぬ前にこの子を殺さないで済みました』と、知事宛に寄せられた手紙を、私は目頭を熱くしながら、何通読んだかわからない」(p.88)とある。

また、美濃部は「バラマキ」という批判に対して、こんなことも言っている。「財政危機(の)ニューヨーク市の福祉予算は総予算の30%をしめるのに対し、東京都のそれは、(。。。)未だに12%に過ぎません。(。。。)誤解を恐れずに言えば、東京の、そして日本の福祉は、もっともっとばらまかなければならないのであります」(p.161)

無論良いことばかりではなかったのは当たり前の話だが、しかし社会党内の左派と右派による権力闘争、共産党との軋轢、中道と言われた民社党や公明党のヌエのような、その場その場で、権力に近い方へすり寄ろうとする姿勢、自治省のデマを含むバッシング、さらには、市民参加という理想を掲げながら、有権者たちのおまかせ他人事の態度のはざまで、潰えるべくして潰えたのが革新自治体だったのだろう。

当時の高度経済成長の歪み(公害、社会資本未整備、福祉の遅れ)に気づいた人々が選んだ革新自治体に対して、現在、グローバル化の歪みで、人々が選んでいるのが、限りなくファシズムに近い方向だというのは(それも日本だけではない)、これはどう考えればいいのだろう? 

副題の「熱狂と挫折に何を学ぶか」というメッセージは、言うまでもなく現代にも通じる。先日の川上弘美の「大きな鳥にさらわれないよう」にもあったように、なにしろ人間は同じ過ちを何度でも繰り返す学習能力のない生き物なのだから。


追記(2016、7、26、15:45) 文言を付け加えました。



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comment

アンコウ
有田さん、

あなたの主張はあまりに低レベルだと思うけど、やっぱりきちんと反論と質問をしておきます。ちょっと長くなりますよ。きちんと読んだ上で、私の質問に答えていただきたいところです。

(1)挑戦総連とズブズブでパチンコ経由の金の流れを見て見ぬふり。

これは何を根拠に言っているんでしょう? 朝鮮大学を認可したことからの類推でしょうか? 見て見ぬ振りをしたという根拠は何でしょう。

(2)必要な公共事業を妨害し、

必要な公共事業を妨害とは何のことでしょうか? 外環道でしょうか? いわゆる有名な「橋の論理」のことでしょうか? しかしこの記事で紹介した書物に、「橋の論理」についてはきちんと書かれていますよ(p.120以下)。

また、あなただって外環道の予定地近くに住んでいたら、当然反対したのではありませんか? 少数の反対者がいて、しかし多くの人にとっては便利になる時、それをどうするか、これはものすごく難しい問題で、一言で決めつけることなんかできない、いまだに世界中で議論されている問題です。だからこそ、美濃部は有権者との話し合いを重視したのです。

(3)公務員天国の世の中にさせ、

これは結果的にはある程度その通りでしょう。ただ、当時の考え方(というか、西欧の考え方と言ってもいいでしょうけど)には、「公務員の給与を基準に国民の給与体系や各種年金や保護費を決めるべき」という発想があったわけです。公務員の給与が一般企業の給与や社会保障の基準になるという考え方です。それはどうやらこの国では通用しなかったようですが、それは美濃部の責任ではなくその後の問題でしょう。

(4)病院を老人の憩いの場にしましたよね。

病院を老人の憩いの場にしたという表現も、老人の立場に立ったら、とても納得いかない表現でしょうね。あなたはご両親は健在でしょうか? 世の中には本当に老人医療費が無料になって生き延びられた人たちがたくさんいたことでしょう。
これは例の生活保護費不正受給の話と同じです。不正受給者がいるから給付額を下げろ、と言われましたね。しかし、不正受給率ってたった1%ですよ。99%が正当な使われ方をしている予算なんてあるんでしょうか? これについてもすでに書いたことですので興味があればこちらをどうぞ。http://tatsuya1956.blog48.fc2.com/?no=1210

(5)選挙権のあるものに対して徹底的に犬になった美濃部。

これは全く意味不明です。何を称してこのような表現ができるのか、ぜひとも教えていただきたいものです。

(6)子供の育成なんてそっちのけの政策は弱者の味方だなんてとんでもありません。

子供の育成なんてそっちのけの政策とは何のことでしょう? 無認可保育所への助成のことでしょうか? それがなぜ子供の育成なんてそっちのけの政策になるのでしょう? これも全く意味がわかりません。あなたはお子さんがおありでしょうか?

(7)おかげで財政破綻です。美濃部の責任です。

おかげで、と言いますが、任期中にオイルショックがあり、さらに高度経済成長が終わる都税収入が伸びなくなった時代背景を考えなければいけませんね。財政破綻というなら、美濃部の前の東龍太郎の都知事時代にすでに赤字が続いていたのですよ。さらに、美濃部の時代の都債残高が1兆円強、その後鈴木青島時代に7兆5千億強、石原になったら15兆円強というのは、どう説明するんでしょう?

(8)少子化も美濃部の責任です。

こうなってくると、もう答えようがない。論拠も何もないでしょう? そもそも少子化の原因が何なのかなんて、まだ何の結論も出てませんよ。先進国はほとんどどこも少子化に悩んでいるけど、それもすべて美濃部が悪いんですか?そもそも美濃部の政策の何が少子化の原因なんですか?

要するに、社会民主主義的な政策を否定したい新自由主義者たちが美濃部を否定したいがゆえに、福祉と財政赤字云々を結び付けたいのでしょうけど、この記事の本や、その他、冷静に数字を見たりしていけば、かなり無理な論理だということがわかります。ちなみに、きっとあなたはこの本「革新自治体」も左翼の本だとでも思うのでしょうけど、著者の父上は機動隊員で、極左過激派の襲撃により殉職しているそうです。だからなんだと言われれば、それまでですが。

以上、あなたのご高説に対して、きちんと番号を打って反論したつもりです。番号ごとの分かりやすい、真摯にして誠実な再反論をお待ちします。
2016.07.26 23:46
アンコウ
有田さん、

私は、気に入らない相手なら誰でもレイシストとかネトウヨという言葉を使うわけじゃないですよ。そんなの当たり前じゃないですか、あなたがレイシストである、いわゆるネトウヨと総称される人々に属している、そう確信を持つ理由があるから、そう言っているのです。その理由は前のあなたへの返信に書きました。

電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、み〜んな〇〇が悪いのよ〜という歌がありました。あなたの美濃部批判、なんだか、馬鹿馬鹿しくなってきますね。きちんと答える気にもならないですよ。

美濃部の功績、こんなのは美濃部都政で検索すれば、まともな記事はいくらでもみつかるけど(無論悪意に満ちた、多分あなたが参照したような記事もたくさんあるけど)、まあこんなところでも読んでみてください。財政破綻という悪口が、その後の知事と比べても、それほど当たっていないということもわかります。まあ、この記事はちょっと褒めすぎだなと思うけどね。でも、高校から大学生だった当時の僕の世間に対する感覚では、至極まっとうな冷静な指摘だと思いますよ。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1056609850

何れにしても、美濃部都政がなく、そのまま自民党の知事が東京を率いていたら、国基準の低レベルの福祉と公害政策だったでしょう。少なくともこのレベルを国に先んじて高めたのは美濃部都政の功績だし、国はその都基準に導かれるように後追いしてきたわけです。

いいですか、この記事にも書いたけど、あの時代、高度経済成長による公害や社会資本の未整備、社会福祉の立ち遅れが生じていたわけで、それに対して、ちょっと待てよ、と思った人たちが美濃部都政を支持したわけです。ここをきちんと抑えることもなく、ただ感情的に罵詈雑言を故人に浴びせても、何の意味もありませんよ。
2016.07.26 18:46
有田ヨシヲ
気に入らない相手をレイシストとネトウヨという言葉で罵るあたりは
まさにパヨチンパヨクである証明ですね。

美濃部の功績って何ですか?
パチンコなんて序の口ですよ。
挑戦総連とズブズブでパチンコ経由の金の流れを見て見ぬふり。
必要な公共事業を妨害し、公務員天国の世の中にさせ、病院を老人の憩いの場にしましたよね。
バラマキという言葉では済まされませんよ。
選挙権のあるものに対して徹底的に犬になった美濃部。
子供の育成なんてそっちのけの政策は弱者の味方だなんてとんでもありません。
おかげで財政破綻です。美濃部の責任です。少子化も美濃部の責任です。
いつも政権批判してるけど、少しはその責任を感じてください。

うまいこと言って労働者、公務員、老人を洗脳してカタワにしたんです。
共産圏の甘い汁を吸わせてしまったんですよ。
人と組織を元に戻すのは簡単ではないんです。
このようなことが解っている日本国民ですから自民が圧勝するんです。
革新なんて聞こえはいいですが、その中身は非常に危険なものでしかなく
一部のパヨクしか評価してないですよ。
2016.07.26 17:02

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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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