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映画「疑惑のチャンピオン」

2016.07.09.01:44

僕はスポーツ映画が苦手です。だからあんまり見てないけど、「ロッキー」のシリーズは嫌いだし、当時評判になった「炎のランナー」は退屈だっただけでなく、スローモーションで感激を煽るようなレースシーンには白けた。ドイツサッカー映画の「ベルンの奇蹟」なんてのも、ハンガリーチームの悲劇を描けよ! と怒っていた。

いずれにしても、どんなにリアルであっても劇映画のスポーツシーンは何か白けてしまう。感動的なシーンであればあるほど、嘘っぱちを意識させられてしまう。ま、私はそういう性格なんです 笑)

こういう劇映画に比べて、例えばグルノーブルオリンピックの記録映画「白い恋人たち」や市川崑の「東京オリンピック」の持つ、本物の迫力には圧倒された。特に「東京オリンピック」の女子ハードルの依田選手といったか? クレヨンしんちゃんの隣のおばさんみたいに、ひっつめ髪のこめかみに絆創膏を貼って、スタート前に鼻歌を歌い続けるシーンなんか、本当に震えた。

というわけで、当初、この映画は見るつもりは全くありませんでした。そもそもアームストロングが嫌いだったし、多分アームストロングをある程度美化しているのではないかと思われたこともあります。でも、ある人から見て来たと言われたので、時間もあったし、見に行ってしまいました。この映画、自転車の疾走感はなかなかなものだけどね。感動はしませんでした 笑)


で、唐突に、全く変な連想ですが、ヒトラーを思い出したのは拙ブログらしいのではないでしょうか 笑) 以前にも書いたことがあるけど、ヒトラーの暗殺計画は40回ぐらいあったのに、そしてその中には本当に際どかったものがいくつもあったのに、ことごとくそれらを逃れているんですね。しかも、きわどく暗殺計画を逃れ続けたヒトラーは、ますます、自分は神によって選ばれた人間だという誇大妄想に取り憑かれていき、最後まで自分はドイツのために善を為しているのだと信じ込んで、ドイツを破滅に導きました。

アームストロングも何度か危ないところでドーピング疑惑を逃れ続けたわけです。この映画でも描かれているようにコルチゾン検出は股擦れの薬と言い、ツール・ド・スイスでの陽性反応はUCIを抱き込み、自分は検査で陽性になったことはない、がん患者のために走るのだと、批判しづらい結界を張り、ますます、何をしても大丈夫と思い込むようになったのではないか? さらには美談が好きなマスコミには飴と鞭で批判を封じ込め(安倍政権を連想します 笑)、良心的な選手たち(映画でもバッソンやシメオニが出てきます)は脅して黙らせ、自分が勝つことで自転車競技の世界的な人気が高まるのだと盲信、自転車競技に破滅的なダメージを与えました。

まあ、当時リアルタイムで最初からアームストロングの疑惑については様々な情報を聞いてましたから、この映画で描かれていることも、ああ、あのことだ、と思ったんですが、それでも不満はあります。アームストロングはフェラーリを出会う前はドーピングをしていなかったような描きぶりですが、それはどうなんだろう? 映画ではフェラーリと出会って、ドーピングに開眼することになっているようだけど、そんなはずはないと思うんですよねぇ。

だけど、最大の不満はUCIの当時の会長二人、拙ブログでも散々批判したフェルブリュッヘンとマッケイドが全く出てこなかったことですね。この点はものすごく不満です。他にも当時のサルコジ大統領に進言して、フランスのアンチドーピング施設の責任者をクビにさせたり、権力ある者たちとツーカーになって、かなりとんでもないことをやっているわけで、そうした共犯者としての権力者たちをもっと大きく取り上げて欲しかったと思うんですよね。

それから、ランディスの描き方。アーミッシュの家庭に育ったことが強調されているけど、これってどうなのかなぁ。映画でもランディスが告白するのは、アームストロングに救いを求めて拒まれたことが原因となっているけど、同時にアーミッシュであることが余分に強調されているような気がしました。

映画だからしょうがないんだろうけど、小児癌の施設訪問のエピソードのように、アームストロングという人を複雑な人間にして、ドーピングをめぐる事件を単純化しているような印象を受けました。主役は複雑に、ストーリーは分かりやすく単純に。これって非常にハリウッド的な感じがします。

ちなみに、アームストロングは、ベルギーで小児癌施設の訪問を拒否したこともあると聞いているし、ファンの集いでの酷い話も聞いたことがあるから、必ずしもああいう人間的な感情の豊かな人だったかどうか。むしろもっと単純な、異常に上昇意欲の強い、なんでも自分を守るために利用する人間だったのではないか。映画の中で、サイン会でガンの女性から、勇気をもらったと言われて感謝されるシーンがあって、そこでアームストロングが非常に複雑な表情をします。でも、このエピソードがどれだけ事実に基づいているのか知りませんが、もしこういうことがあったとしたら、アームストロングはほくそ笑んだのではないか、何て思っちゃいます。かなり意地悪かな。何れにしても、上に書いたように、悪に手を染めてバレなければ、どんどんエスカレートしてしまう人だったんでしょうね。

ところで、ダスティン・ホフマンが保険会社の社長として出てきましたが、この人、80年代にコロンビア映画で製作された「イエロー・ジャージ」という映画で主演をつとめたんだそうです。ただし、この映画は完成したのに公開されることはなく、いわゆるお蔵入りになってしまったのでした。何か変な因縁を感じます。

ところで、金曜3時からの渋谷の映画館でしたが、客の入りは惨憺たるものでしたねぇ。15人いたかなぁ。。。



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comment

Arturo
アンコウ様。
  まあ、皮肉にも以前S田が自身のサイト内でいつか、オリンピックに取材できない腹いせか、そんなに価値のあるものかなあ?等と、アンコウ様の意見に類似した事を書いていたのを思いだしました。ところが、今回のリオではついに取材出来ると、嬉々としてその旨誇示する事も書いていましたが、、、。
  でも確かに、オリンピックジャージと言うものが存在しない以上、(なぜか手元に1枚アリ!?いや話に出したか、高田馬場かなんかで、、)確かに実感は乏しいですよね。00年パリツールのスタート地点にヤンが5輪ジャージで現れないかと期待して、実際はいつものテレコムジャージでガッカリしたのを思い出した次第です。まあ5輪としては5輪マークを商業利用されるのを忌み嫌うでしょから、(利用したかったら
カネ払え、というスタンスでしょうしで、、、)リシャールのジャージもこの時点では、5輪入っていましたが、露骨なスポンサー文字は入れてなかったですしね、、。

 でも、僕も結論は、商業上も、マイヨージョウヌの方が価値があるだろうとは思います、、、。
2016.07.13 22:59
アンコウ
Arturo さん、

オリンピックとツール、どっちに勝ちたいって、総合狙いの選手にとってはやっぱりツールでしょう。ワンデーのオリンピックはたぶんに運がありそうだし、オリンビックの優勝者って、すぐに思い出せます? リシャールなんかはオリンピックマークをマイヨにつけていたことがあるけど、ウルリッヒはつけてなかったし、そのあとは誰だっけ、この前は誰だっけ?? サミュエル・サンチェスが勝った年もあったっけ? なんかツールの優勝者よりも印象は薄いなぁ。
2016.07.13 21:54
Arturo
アンコウ様。
  なるほど了解しました。
  しかし、コンタドールの人気の件は、遠ざかっている分のせいかもしれないですけど、なんかこういずれにしてもピンと来ないですね、、、。逆に現代だったら誰のファン?と聞かれても答えられない自分がいますが、、、。
  いずれにしても、「僕、レモンのファンなんで、、、。」「なんだコイツは!?。」なんて感情を持ったのは遠い昔の事なんですね、、、。

  そう言えば昨日のガゼッタにはカッサー二のコメントが載っていて、「(このツール)イタリア(ナショナル)チームのスピリットで走るべきだ。」とのコメントが載っていて(どうも話はリオのようです、、、)もはや、このツールは、イタリアのファヴォリーティには、調整レースとなった!?。との印象をもちました。さてマイヨージョウヌ、そしてリオのメダル、価値があるのはどっち?。
2016.07.13 16:15
アンコウ
Arturoさん、

もちろんそうだろうとは思っていたけど、ひょっとして知り合いに連れて行かれたかと 笑)

ああ、本当だ、オジャンドルは25年生まれでした。

コンタドールは、日本ではやっぱり人気度はトップクラスじゃないですか? マッサーの影響はわかりません。サガンには負けるだろうけど、フルームやニバリのレベルにはあるんじゃないかなぁ。?
2016.07.13 00:37
Arturo
アンコウ様。
  いやいや、勿論、今更現場に行っている訳ないですょ。現場知識はもう10年以上前の話です。今回気がついたのは、現場ではなく、TV画像からでした。(注意して読み返すと解る!?)
 (ちなみにもう今日から又又FRーTVを見る事はありませんが、、、)
 しかしじゃあもう全くチンプンカンプンな話ですね。完全にOマエに聞け、系な話!?(今回はアンコウ様のセリフとして、、、)
  でもオージャンドルは90歳、だと思ったので、コッピより年下じゃあ、、、。日本に来る事もないだろうなぁ?!。(昔来た事があったと思ったけど、、、。)とにかく未だ生きてるんですよね。でも仏語版ならウイキにも出てくる人物なので、その気で調べれば直ぐにわかる!?。

  しかし日本ではコンタドールは人気があった?!。これは知りませんでした、、、。N野君の功績もある!?。
  
2016.07.12 05:01
アンコウ
Arturo さん、

返事が遅くなりました。うーん、バントゥのシーンは全く記憶にないです。あ、これはフレッシュ・ワロンヌだ、とか、あ、これはツール・ド・スイス、とか思い当たるシーンはありましたが。パンターニもウルリッヒもでてきません。ヴィランクはこれは完全に記録映像で例のフェスティナ事件で泣くシーンが出てきますが、映画ではなし。

あ、表彰台でチラッと全く似てないウルリッヒと思しきテレコムとか、同じくバッソとクレーデンかな?これまた似てない。さらにはツュッレも似てない 笑)なんてのが出てましたが。。。

でも一番似てないのはコンタドール。ヴィランクを悪辣にしたような顔で、愛想も悪いし、日本ではコンタドールは人気あるから、見た人は怒るだろうなぁ、なんて笑ってました。

オジャンドルってコッピと同じ年だったんじゃなかったっけ? しかし、また、オリビエ以外はよく知らない名前(ペシューは以前聞いたけど)で、ついていけまへんわ。

ところで、Arturo さん、今、ツールの現場に行ってるんですか? 
2016.07.11 23:21
Arturo
アンコウ様
  なるほど、(似てないけど雰囲気は出てるを含む)じゃあバントゥーの事も解らないですよね。僕も見てない以上、Oマエに聞け状態になってしまいますが(本人が投稿したりして!?笑っちゃうけどね、、、)、個人的な憶測では00年だと思います。(他にランスの絡みでは想像つかない!?。しかしパンターニは出て来ない?!。じゃあビランクが獲った時!?。)

  そう、後半の話はランディスです。しかしランスと言うより、あくまで江夏戦法の絡みで書いたのではありますが、、逆にコンタドールが出てくる、と言うのは、09年だっけ、あの時も流れ上、出てくる、と言う事なんですね。

  全然関係ないけど、先にジャラベールどうこう、、、と書きましたが、ここに来てあちこち世代交代が感じられました。
  FR-TVでもフィニョンがいないのは当たり前としても、同じ繰り返すJRゴダールとか、百科辞典のJPオリヴィエの姿が見当たらず、唯一健在なのは進行役のJホルツと言ったところでした。90年代にもやっていたから進行役も随分と長い。(但し、一回ケーブルTV系に引っ張られたらしくブランクはある、、、)
 かくいうASOの方もルブラン時代の最後の男!?とも取れた、ペシューの姿が見当たらず、代わってTクブヌーがレースディレクターになった!?。(ここでのディレクターは競技面)、よってさいたまにペシューが来る事はないなぁ、等と思ってしまいました。
 いずれにしても、僕の時代の人物が確実に減っている、と言うのは確実!?。そう言えばアンコウ様もかかわりのある出版社にて著書が和訳されていた、Jオージャンドル、久しぶりにインタビュー映像を見かけましたが、かれも偉い歳をとったなあ、等と思いました。まあ生きているのが不思議なレベル!?。まあ、オージャンドルについてはこれも随分前に投稿しましたので、ここでは割愛します。

  そう書いていたら、N野君には申し訳ないけどコンタドール降りちゃいましたね。(でも反面N野君なら察知は出来たろうとは思いますが、、、)1年前にも彼が勝つ気はしない、と投稿させて貰った記憶がありますが、さしずめ、パリまで付く感じがしない、でした、、、。
2016.07.10 21:36
アンコウ
Arturo さん、

バントゥーは覚えてないですね。ただ、実際の映像はほとんどないという印象です。少なくとも、本物のアームストロングの顔が映るような映像はほとんどなかったと思います。バントゥーはいつ?パンターニとの時? そもそも映画ではパンターニは出てきません。

それってランディスのやつ? まさにそれも映画に出てきます。アームストロング役の役者は似てないけど、雰囲気はOK、ランディスは似てましたね。コンタドールは全く似てませんでした。フランキー・アンドリューも似てないし、ブリュイネールも似てなかった。でもみんなそれなりの雰囲気は出てたかな。
2016.07.09 22:01
Arturo
アンコウ様
  なるほど、バントゥーの件は、見てもいないのに、、ですが、実際の映像を使っているのかと思っていました。(これ位は未だ覚えている!?)
  でも江夏戦法もどうなのか?。でも10年くらい前にありましたね。30分遅れた選手が結局逃げて再度取り返し、結局2位で終了、しかし買った選手は言えば、一回10分遅れていたのがモルズィンで逃げて更にひっくり返し、優勝、なんだこの展開は!?と思いきや、二日後に、優勝した筈の選手のヤク使用が発覚、すったもんだの末、2位だった選手が優勝、一体この展開はなんだったんだ状態。これは江夏戦法とは言えない!?。

  それと以前書いたアクセスしにくい事この上ない状態ですが、改善して元に戻りました。今は問題ありません。アクセスすると何やら画像上と下真ん中に広告が入り込み、肝心の画像が見えない、見づらい、と言う展開でした。
2016.07.09 16:37
アンコウ
Arturo さん、

フランスですか? 

フォトグラファーはまるで気がついてません 笑) 記録映像で出てくるなら、限られているんだろうけど、役者がやっているなら、誰かの役でやってることになるのかな?

ニバリはすでに優勝候補たちに7、8分遅れてるから、ある意味、これで自由にアタックできる立場になったのかも。ここから大逃げしてひっくり返す? 昔、江夏がピンチにわざと3ボールにして、相手にフォアボールかと油断させてから勝負するという話をしていたけど、ニバリもこの戦法? 笑)
2016.07.09 09:50
Arturo
アンコウ様。
  なるほど、僕は見てないので、かつ19日までは見れる可能性がないので、何も語れないのですが、見てみたい気もしてきました。
  でも、見ていたのが3人と言うのは、いつかのパンター二映画の件ではないですがうなずけるものがあります。(やっぱ日本ではね、、、状態!?)と同時に19日には映画館の方もバカバカしくて上映してないかも!?。等と思ったりしました。(他にもやっぱアメリカのお姉ちゃん系のドーピング系の映画があった気がしましたが、これら二つ同様な顛末なんだろうなあ、、、等とも思いました。
  それとOマエのサイトによると、なんでもジャポネのフォトグラファーが写っているので、バントゥーのゴールは要注目、みたいな事が書いてあったように記憶していますが、これって誰か解りましたか?。やっぱS田?!もし解ったら又教えて下さい。宜しくお願いします。

  それからついい数日前の筈なのに、当該の下りが見つからないので、こっちに書いときます。
  ニーバリの件ですが、今日のステージ彼は、敢闘賞で表彰台に上がる前(上がった後!?)のインタニューに答えていましたが、この時のジャラベールの口ぶりからすると、どうも彼は、ツールにはアーリのアシストの為に来ているようです。昔と違って、こんな形でしか情報を得ることはありませんが、先のアンコウ様の見つからない記事にあった、”予定通り”と言うのもその通りかも!?。
  質問の調子も「~と言うのは予め承知しているが、その前提で、今年のツールの目的は?」「出来たら区間も獲りたく思っていて、今日獲れる可能性もあった。しかし、、、、」と言った調子で答えていました。
2016.07.09 04:05

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アンコウ

アンコウ
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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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