書評で面白そうと思って読んでみた。そして、面白かった。まあ、基本的に面白くなかった本については、拙ブログで書くことはないけどね 笑)伏線はいろいろ張り巡らされているし、途中からは年表を作りながら読んだ。
失踪や保険金殺人、生活保護や貧困ビジネス、派遣労働やDV、ネトウヨや風俗産業などを絡めながら、どこにでもいる普通の女(名前まで鈴木陽子という平凡さ)が、追い込まれ、転落していく話。現代の日本の社会の閉塞感、息苦しさを切り取って、見事にこの平々凡々な女主人公の人生に重ねていく。ある意味盛り込み過ぎと言えそうなぐらい。同時にこの女が生きてきた日本の社会の変質についても重ねていて、たぶん10年後に読んでも、これほど面白くはないだろうと思う。
この女の人生が「あなた」という言葉で、呼びかけるように描かれるが、それによって、この女は「私だ、俺だ」と読者に思わせる、良くできた仕掛けだと思う。そのせいもあって、かなり後半に至るまで、主人公の女に同情するし、いとおしくすら感じられるのだけど。。。少なくとも僕は平行して語られるもう一人の主人公の女性刑事よりも好きだと思ったんだけど。。。最後は、あらゆるものを振り切って逃げていきながら、あっかんべーをされた気分。
繰り返し現れるのは、人間とは単なる自然現象だ、すべては運であり、選択などない。それなのに自分の人生を自分が選んだものだと思い込んでいる。しかし、神さまがいない以上、そうした自然現象に過ぎない人間には、逆説的だが、何でもできる自由があるわけである。こういう考え方は昔からあるだろうけど、主流にはならなかった。それが今はかなり説得力を持っているのではないだろうか?
読み始めると、読みやすいしなかなかやめられなくなります。おすすめです。

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