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ファラダ「ベルリンに一人死す」(ネタバレ注意)

2015.03.21.00:40


ベルリンに一人死すベルリンに一人死す
(2014/11/21)
ハンス・ファラダ

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1946年、ナチスが崩壊してすぐに一気呵成に書かれた大傑作長編小説です! 先ほど読み終わったんですが、最後の「アンナ・クヴァンゲルの再会」の最後のところでは嗚咽が漏れそうになりました。事実に基づいているこの小説の結末はわかりきっていることだし、主人公たちを待っているのは残酷な運命であることを知っていても、前半は読み物(サスペンス)としても、ものすごく面白いです。

主人公の寡黙で堅実で頑固な家具職人の夫とその妻は、フランスが降伏した日、つまり1940年の6月に一人息子の戦死の報告を受けて、ナチスに反対する文言を書いた葉書をビルなどに置くことを決意し、それから2年にわたってゲシュタポの必死の捜査の中、それを続けます。

今の僕らの感覚ではナチス反対のビラをそっと置いてくるだけなんて、なんとまあショボいレジスタンスだ、と呆れるかも知れませんが、当時のドイツではこれだけで完全な国家反逆罪(=ギロチンによる死刑)でした。映画にもなっていて有名なショル兄妹も同じ罪で死刑になっています。

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最初に書いたように前半の主人公夫婦とゲシュタポの捜査はハラハラドキドキで一気に読ませますし、それと平行して描かれるどうしようもない二人の男とその妻と子供のエピソードも後々につながる伏線になり、とてもうまくできています。しかし、後半の数多くの死と拷問の詳細な描写は、正直に言って、読むのかがかなり辛いです。

さて、自分たちの葉書に影響された人々がヒトラーを引きずり降ろして戦争を終わらせることを夢見た主人公夫妻の葉書は、実際には即座に警察に届けられ、何の影響力もないだけでなく、それを拾った人間たちにとってはただの迷惑にすぎず、恐怖と不安を引き起こすだけです。拾った人間たちは、ここにナチスの邪悪な意図があるのではないか、ナチスは自分がどんな反応を示すかを確かめているのではないか、と疑心暗鬼に陥り、最初の数語を読んだだけで当惑し、恐怖に駆られて、ほとんどの人が最後まで読むことすらせずに警察に届けてしまいます。

普通の人たちはみんな、残酷でとんでもない不正が行われていることに気が付いているのに声を上げず、監視や密告を恐れて暮らしています。ナチスの過酷な恐怖政治のなか、狂った世界のなか、孤立無援のなか、自分が正しいと信じた夫婦の行ったささやかな抵抗は、結果だけを見れば、完全な犬死にでした。いや、犬死にどころか、彼らの行為が原因となって、彼らと関係ある何人もの人間が死ぬことになります。ネタバレしてしまえば、この小説の中では、そもそも良心を失わなかった人たちはみな死にます。

だけど、生きるというのがどういうことなのか、何に価値をおいて生きるのかが、ナチスのような極限的な社会では極端なかたちで問われることになるのでしょう。考えることをやめて「従っていればいいんだ。考えることは総統がやってくれる」(p.185)という犬のような生活でいいのか、それとも「死の瞬間まで、自分はまっとうな人間として行動したのだと感じること」(p.502)ができる方が良いのか。ナチスに「黙って同意」し、大切なものを「売り渡し続け」て「ぴしっと折り目のついたズボンをはいて、爪にマニキュアを塗って」生き続けるのが良いのか、それとも「俺は少なくともまともな人間でいられた(。。。)共犯者にはならなかった」(p.559)と死を前にして胸を張って言うべきなのか。「正義のために死ぬより、不正のために生きるほうがいい」(p.503)のか、それとも「生き方を変え」(p.511)て、「全く別の人生」(p.117他)を送るべきなのか。

だけど、その結果として自分だけでなく無実の人間まで巻き添えにしてしまうとしたら、それでも精神の自由を守るために抵抗し続けるべきなのか、そんなものは自己満足に過ぎないのではないのか、そして自己満足のために他の人間を巻き込んでよいのか、しかし、それでは、自らの自由と主体性を放棄して、ナチスに決定権を丸投げした犬の生活に甘んじるべきなのか。それぞれ読んだ人が考えるべきことなんでしょうが、そんな決断を迫られるような社会にならないように祈るばかりです。

少し前に安倍に丸投げすべし、とコメントしてきた「りべおれ」君に、是非とも読んでもらいたいところです 笑)



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comment

アンコウ
書き忘れました。

そういやあ、キミ、あの太平洋戦争の僕の反論にも全く答えてないよね。是非キミの再反論が聞きたいな。でも、これも自分で調べろよ!っていうのかな? それとももう忘れちまったかな?

そもそも、キミのコメントって、意見表明じゃないよね。まるで僕の意図など関係なく、キミの「妄想」で僕をこういう奴だと決めつけて(最初のころの年金不要の恵まれた人間云々がまさにそうだったよね)、仮想敵として自分の鬱憤を罵詈雑言で晴らそうとしているだけ。当然鬱憤晴らしだから、僕の質問なんかに答えない、答えられない。当然、憂さ晴らしにつごうがいいように、僕が言ってもいないことも言ったことにする。まさに「不毛!」
2015.03.21 23:15
アンコウ
あのね、キミこう書いたよ。

>>ナチスの功罪には必ずこれだぜっ、てノリで、今の時代なら「阿倍」、とか出してくる

これって僕のことだろ? そんなことひと言も聞いてないって言うけど、きみがそう書いているんだよ?? このキミの書いた文章、どういう意味だったの? ひと言も聞いてないって? 

議論にならないね。日本語ちゃんと通じてる? せっかく小学校から習った日本語、もう少し勉強しましょう。

それぐらい独力で調べろよ、って、僕はあなたの意見を聞きたいから質問したの!

知らないから質問したわけじゃないし、もし仮に知らないとしても、「笑えます」とか「さびしいよな」とか、議論以前の低レベルの罵詈雑言で相手を論駁した気になっているような低レベルなキミに教えを請う気はないよ。

ナチスの功罪の功の部分、キミの意見を聞きたいな、と書いたら、自分で調べろ?? 結局いつかのファシズムと同じだね。書けないよね、いつかの太平洋戦争の7つの話みたいに馬脚を現すのは明らかだからね。

これじゃあ何のためにコメントしているのか、全く分からないよ。僕の書いたところに不満があるなら、それを理由とともにきちんと指摘しなくちゃ無意味だろ??

まったくね。 「進撃の巨人」のミカサじゃないけど、ひと言。「不毛」
2015.03.21 22:53
リベラルっぽいオレってなんかカッコ良くね?でも短絡で、何でも教えて君
>まず、なぜナチスの話をすると安倍の名前が連想されるのかって?

そんなこと一言も聞いていないんですけど。。。ただ笑えます。


>ナチスの功罪って説明してよ。特に「功」の部分は...

何でも人に聞かないでそれぐらい独力で調べろよ。
ナチスを断罪することしかできないっていうのも人間としてさびしいよな。
2015.03.21 22:33
アンコウ
ほらね、やっぱりキミは僕の言ったことを正面から受け止めない。僕の質問にも答えない。そもそも答えたことってほとんどないよね。読んでみてよ、という僕の言葉にも反応はない。

もう少しまともな話をしようよ。まず、なぜナチスの話をすると安倍の名前が連想されるのかって? 戦後これほど爆走している内閣はないからだよ。その手法がヒトラーを連想させるというわけだ。

逆に質問するけど、ナチスの功罪って説明してよ。特に「功」の部分は是非お願いするよ。

しかし、なぜキミは僕をナチス=日本帝国主義と主張する人間だと思っているようだけど、僕はそんなことは書いたことはない。いつものとおりのわら人形論法だよ。僕が書いた文章のなかで、どこの文から、こういう思い込みがでてくるのかを説明して欲しい。

だけど、それ以上にやっぱりこの小説を読んでみて欲しいな。
2015.03.21 20:15
リベラルっぽいオレってなんかカッコ良くね?でも短絡だから面白っ
ナチスの功罪には必ずこれだぜっ、てノリで、今の時代なら「阿倍」、とか出してくるその短絡さがいと可笑しくて投稿しました。これからも笑かしてくさい。
2015.03.21 19:43
アンコウ
おお、リベオレ君、

こんな話題まで読んでくれるとは感激ですよ。

ただ、これまでも何度かあったように、キミの書いている文章の意味が良く読み取れないんだなぁ。

「〜と言うコトにしておかないと何にも説明できない人」って僕のことを揶揄しているのかな? つまり、この文章はこの本を僕が読んでも全く意味がないし、作者に失礼だと言うコトなのかな? 

それはともかく、いつものように、まるで読み違いをしているよ。ナチス=日本帝国主義などと、僕は書いていないよ。過去にもナチス=日本帝国主義なんて書いたことは一度もないよ。

だけど上の文章では、そもそも日本の「に」の字もでてきてないよ。ほらほら、キミの妄想が始まった、っていうのはキミが僕に書いてきたコメントの内容だったけど、どちらが妄想なんだろう?

「阿倍ちゃんに決めてもらって全然構わない。 彼が今日本で信任されてその全権を委任されている指導者だから」なんて書いちゃうキミに言いたいのは、上にも書いたように「従っていればいいんだ。考えることは総統がやってくれる」という犬のような生活でいいのかっていうことだよ。

まずは読んでごらん。読まずに「作者に失礼」とかいう使い古された決まり文句を書いても、それこそ「作者に失礼」だから。
2015.03.21 18:58
リベラルなオレってかっこよくね?短絡で
こういう本をナチス=日本帝国主義ということにしておかないと何にも説明できない人が読んでも全く意味がないし、却って作者に対して失礼だと思うんですけど。。。
2015.03.21 14:13

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アンコウ

アンコウ
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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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