fc2ブログ
2023 05 << 123456789101112131415161718192021222324252627282930>> 2023 07

若杉冽「東京ブラックアウト」(ネタバレ注意)

2015.02.21.14:26


東京ブラックアウト東京ブラックアウト
(2014/12/05)
若杉 冽

商品詳細を見る

以前紹介した「原発ホワイトアウト」の続編。前回は某国のスパイのテロによって原発が二度目のメルトダウンを起こすところで終わった。今回はそれを少し遡って、原発マネーをめぐるおどろおどろしい政財官の仕組みを説明しながら、新崎原発の二度目のメルトダウンで首都圏が住めなくなるが、国民は相変わらず権力者の思うがままになり、良心的な官僚たちは無力感を感じるだけという話。

黒澤明の映画に「悪い奴ほどよく眠る」という映画があるけど、あの映画では一番悪いヤツ(画面には一度も出てこないけど、政治化であることは明らか)が想定されているんだけど、ここではもっと組織的なもので、その悪循環に対して一員である人間たちは自分の意志ではどうしようもないわけ。

正直に言ってツッコミ処は満載だと思う。そもそも某国のスパイがなんのためにテロを起こしたのかわからないし(だって、この小説みたいなことになれば放射能で汚染されるのは日本だけじゃないし、小説中でもその後の混乱に乗じて某国が何かしでかすわけでもないらしいしね)、原因究明や捜査が行われたのかどうかもわからない。また、天皇まで登場しちゃうのはどうなんだろうねぇ。確かに今上天皇はここに書かれているような人かも知れないけど、これはちょっと禁じ手じゃなかろうか? それから、反原発意識が露骨すぎることで、かえって読者をヒキ気味にさせてしまうんじゃないだろうか? デマゴギーが前面に出すぎた二流のプロレタリア文学(失礼)を現在読むような感じもある。確かに原発反対派の中にはそうだ、このとおりだと溜飲を下げるかも知れないけど、やや反対ぐらいの人は、こんなことあるかよ、ばからしい、となっちゃうんじゃないかと不安も感じる。

でも、そうは言っても、前回の「原発ホワイトアウト」より面白く読んだのは、語り口に慣れたからだろう。前回書いたように、官僚たちの一般の人々を軽蔑しきった本音があちこちに現れていて、しかも語り手の口調もそういう口調で、作者が本当にエリート官僚だと言うこともあって、なんとも不愉快な読書だったけど、まあ、あたりまえだけど、作者=語り手ではないからね。読者にハッパを掛けるという意味もあるんだろうね。いずれにしても、現実の世界はこんなにひどくないと思いたい。



にほんブログ村 自転車ブログへ
にほんブログ村
送料無料!お取り寄せ通販特集
関連記事
スポンサーサイト



comment

post comment

  • comment
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackback

trackbackURL:http://tatsuya1956.blog48.fc2.com/tb.php/2017-d56f0995

プロフィール

アンコウ

アンコウ
**********************
あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

* 時々コメントが迷惑コメントとしてゴミ箱に入れられることがあるようです。承認待ちが表示されない場合は、ご面倒でも書き直しをお願いします。2017年8月3日記す(22年3月2日更新)

カテゴリー

openclose

FC2カウンター

Amazon

月別アーカイブ

検索フォーム