最初取っつきにくいけど、読み始めてしばらくするとやめられなくなりました。ただ、読み終わって今の気持ちは今一つ納得できん!という気持ち 笑)
中国の内陸の耙耬山脈に受活村という障害者ばかりが住む受活村という農村があって、住民たちはそれぞれができることで助け合いながら「受活」(楽しく生活)している。そこへ県長の柳鷹雀(リュ・インチェエ)という男が、ソヴィエト崩壊でお荷物になっているレーニンの遺体(クレムリンで展示されている)を購入して自分たちの県に記念館を作り展示すれば、世界中から人々が見に来て、入場料などで莫大な金額が手に入り、県は大金持ちになって、そこに住む住民たちはみんな幸せな生活を送れると考える。しかし、レーニンの遺体を購入する金はどうするのか。そこで、この受活村の障害者たちによる特技(絶技)で見せ物団を作って都市を巡回し、それにより購入資金を得ようと考える。まあなにかハチャメチャな話だ。
最初のうちはなんとなく中国映画の「黄色い大地」とか「双旗鎮刀客」の舞台をイメージしながら読みました。ちなみにこの映画はどちらも個人的に一番好きな中国映画です。とくに「双旗鎮〜」のほうはチャイニーズウエスタンという感じで、誰が見ても面白いと思うでしょう。お勧め。まあ、中国映画ってそれほどたくさん見ているわけじゃないけど。
閑話休題。この小説、へんに奇をてらったようなところもある。突然、語りが「〜なのじゃ」とか「〜してしもうた」という老人の口調に変わるところがある。だけど、ほとんどのところはごく普通の「〜だった」「〜である」調で、これになにか意図があるのかと思ったら、訳者あとがきに方言のところをそんなふうに訳してみたとある。ただ、これはどうなんだろうなぁ。。。なお、語り手は一番最後の最後で「私は受活に一年あまり滞在したが」と一人称で言って、一気にこの小説のリアリティが増します。
それから各章や註の番号が奇数の章しかない。これもきっとなにか意味があるのかと思いながらも、よくわからない。それから、注釈が一つの章になっていて、そこにこの障害者たちの村の由来や、主役の茅枝(マオジ-)という紅軍(日中戦争時の共産党軍)の足を悪くした女性兵士が住み着き、戦後この村を共産党政権のもとに組み込むことで、村は文化大革命時や大飢饉の時代にひどい目に合うことになるという歴史やエピソードが書き加えられる。この注釈(「くどい話」という表題がついています)で語られるエピソードに、ものすごく面白い昔話風のものや伝奇風のものがある。
障害者たちの見せ物団は大金を稼ぐけど、それが果たしてどうなるのか、また茅枝(マオ・ジー)は革命を村に伝えたことで村人たちをひどい目に合わせた歴史の責任を負って、自分の落とし前をつけることができるのか、そして県長の柳鷹雀(リュ・インチェエ)はレーニンの遺体購入を果たすことができるのか(まあ、これはできるわけないと言ってもネタバレにはならないでしょうね)。なにか昔の大江健三郎や井上ひさしの「吉里吉里人」なんかを思い出しました。とっても面白い小説でした。

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