以前書きましたが、ドレスデンは東西ドイツが統一した直後の冬に行ったことがあります。まだ当時は聖母教会ががれきの山でした。その時、歩いていたおばあさんに、このがれきは何?と聞いたら、世界で一番美しい教会だったけど、1945年2月13日に爆撃で破壊されたと、日付まですらすらと教えてくれたことも書いたことがあります。ちょっとリンクしておきましょう。
うちなる差別意識を憎め!へさて、その世界一美しかった聖母教会を破壊したドレスデンの空襲については、そのとき捕虜としてドレスデンにいたカート・ヴォネガット・ジュニアの小説や、それを映画化した「スローターハウス5」でも出てくるし、すでに絶版のフランスのアンリ・クーロンジュという人の小説「野生の女よ、さようなら」でも出てきました。
ヴォネガットの小説は大昔読んだんですが、ほとんど覚えてない、というか、映画の方が印象が強くて、映画を見てから原作を読んだので、両方がごっちゃになっているんだろうと思います。映画は間違いなく傑作です。
それから、クーロンジュの「野生の女よ、さようなら」は主人公がドレスデンの12、3歳の女の子で、空襲で家族が死んで焼け出され、プラハへ逃げ延びて終戦を迎えるとともに、そこでひとり死ぬという悲惨な話で、フランス人がこういう小説を書くんだ!と、これも30年近く前に読んだのですが、ビックリしたものでした。おかげでまだ覚えているわけです。
最近ではドイツ映画でも「ドレスデン」というこのときの空襲をメインに据えたメロドラマがありましたが、この映画については、主役のねえちゃんが女子ハンマー投げの選手みたいだし、話の展開が「ふざけるな!」だし、他にもいろいろボロカス言いそうなので名前を挙げるだけにしておきます 笑)
で、本題です。ニュースでもやっていましたが、その式典が、僕が行ったときにはまだがれきの山だった聖母教会で行われたそうです。先日、ヴァイツゼッカーの葬儀でも紹介したガウク大統領が言った言葉が、今回も非常に印象的です。
「ドイツの犠牲者を追悼するとき、ドイツの侵攻による犠牲者を決して忘れない。単に、相手に罪を着せる記憶のしかたでは、対話によって互いの距離を近づけるのではなく、対立を生むことにつながる。」
むろんこの言葉は、これまでのドレスデン空襲がドイツのネオナチをはじめとする極右や歴史修正主義者によって利用されてきたということを意識してのものです。この連中はドイツは加害者ではなく被害者だと強調し、そこからナチスは悪いことをしていない、ユダヤ人虐殺は嘘だ、とつなげるわけです。
だから、ガウク大統領は被害者意識だけを言うのではなく、加害者であることも忘れないと強調するわけです。でも、それはともかくこの姿勢、どこかの国のお偉方たちに聞かせたいよねぇ、と思いませんか?

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