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映画「ヒットラーを狙え! 運命の7分間」(ネタバレ)

2014.11.06.22:40

今回の映画、見たことのある人はほとんどいないだろう。劇場公開しなかったしね。少し前に読んだ「ヒトラー暗殺」に、戦争が始まったばかりの時に、ヒトラーを殺そうと爆弾をしかけ、失敗したゲオルク・エルザーという人の話が出ていた。そしたらこの人のことを描いた映画があるというので、アマゾンで探して購入。レンタル落ちのビデオしかなかったけど、値段も送料込みでも1000円しなかった 笑)

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ストーリー。1939年のミュンヘン、ゲオルク・エルザーはみんなが参加する防空訓練も無視するような硬骨漢で、自宅で時計を使った爆弾を作っている。また、夜になるとビュルガーブロイケラーというビアホールに忍び込んで壁に穴を開けている。同時に、ここのウェイトレスと懇意になり、婚約する。アパートのユダヤ人が密告により出て行くのを見たり、ナチ式の挨拶をしなかったことから突撃隊員にリンチにあったりしながら、いよいよ爆弾作りに力を入れ、レストランの壁の穴にその爆弾を仕込む。このビュルガーブロイケラーというのは、1923年にヒトラーが武装蜂起したビアホールで、毎年ヒトラーはここでそのことを記念して演説をするのである。エルザーはそれに合わせてヒトラーを爆殺しようとしたわけである。ところが婚約者が演説をするヒトラーに水を運ぶ役に選ばれたことで、エルザーは彼女にそれを断るように言い、それが原因で親衛隊の隊長に疑われる。いよいよヒトラーがやって来て、爆弾は爆発するが、ヒトラーはすでに7分前に会場を去った後だった。エルザーと婚約者はスイスへ行く列車に乗るが、二人は他人のふりをする。国境前の駅でついに列車は停車させられ、親衛隊の隊長にエルザーは捕まるが、婚約者は他人のふりをしていたおかげで、無事列車に乗ってスイスへと旅立っていく。

うーん、事実を読んでしまっていると、ちょっとねぇ。映画の出来としても、どうなんだろう?? そもそも親衛隊の高官がなぜ主人公のエルザーを怪しいと思ったのかも、よくわからない。婚約者の態度が怪しいと思うのもおかしい。なんかむりやりサスペンスに仕立て上げた、っていう感じだ。

先日の「HHhH」を読んだ後では、こういう事実をもとにしながらもでたらめなストーリーにしてしまう臆面のなさに、なにか居心地の悪いものを感じる。この小説の中のこんな文言を連想したからだ。

「ずっと前に死んでしまって、もう自己弁護もできない人を操り人形のように動かすことほど破廉恥なことがあるだろうか!」(HHhH p.124)

まあ、映画だし、ハラハラドキドキにしなければならないっていうことなんだろうけどねぇ。

またエルザーのテロ行為を行うまでの義憤に感情移入させるための前提が、圧倒的に弱い。密告によって住居を終われるユダヤ人一家のエピソードが出てきたり、突撃隊のちんぴらに暴行を受けるシーンがあるけど、ハイル・ヒトラーと言わなかったからと言って、ユダヤ人でもないのに、突撃隊にションベンを引っかけられることはなかったと思う。

先の「ヒトラー暗殺」によれば、史実のエルザーは、なにか高潔なテロリストではない。エルザーがヒトラーを暗殺しようとした理由には多分に、彼自身のにっちもさっちもいかない生活という自爆的なところがあったようである。もちろん、映画のような妊娠した婚約者がいたわけではないし、捕まったときも、スイスへの国境を越えようとして国境警備兵に不信感を抱かれて、ポケットの中から爆弾の設計図やヒューズなどが見つかり、追い詰められて自白するのである。

というわけで、実際は救いが全くない。これじゃあ映画にならない、と考えたんだろうなぁ。だからエルザーの婚約者という登場人物を作って、彼女はお腹にエルザーの子どもを宿したまま、スイスへ脱出できるという一抹の希望を持たせる作りにしたんだろうね。アメリカ映画のご都合主義がよく見える。

むしろ、実録風に、もっと史実通りに映画化した方が良かったと思う。また、ヒトラーが7分差で爆発を免れるという点が、この映画のポイント(原題も「7分」)のはずなのに、その点はまったく触れていない。ヒトラーの演説の後、突然爆発するので、最後に親衛隊の隊長の台詞から暗殺が失敗したことが告げられるけど、いかにも拍子抜け。

「ヒトラー暗殺」によると、ヒトラーの暗殺未遂事件は40以上あるそうで、以前書いた「ワルキューレ作戦」を除けば、このエルザーが一番ヒトラー暗殺の可能性が高かったとされる。ただ、一方できわどいところで逃げおおせたヒトラーは、それによって、自分は神によって選ばれた人間だという誇大妄想的な考えにますます取り憑かれることになったと言われる。

戦争が始まったばかりの、ドイツ軍は負け知らずの破竹の勢いの時に、エルザーの計画が成功してヒトラーが暗殺されていたら、その後の世界史はどうなったんだろう。でも、結局ヒトラーの代わりが出てきただけで、やっぱりドイツは負けただろうし、かえってヒトラーが生きていれば。。。という変なヒトラー崇拝(英雄化)が生じただけだったのかもしれない。

というわけで、このところナチス関連の本や映画ばかり見ているのです。



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アンコウ

アンコウ
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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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