おもしろかった。土井選手の成長の物語でもあり、最後はほとんど泣きそうになった。だいぶ前に話題になった某ロードレースラノベなんかよりずっとおもしろく感動的だった。なんといっても作り物じゃないし、話に無理がないし、へんに感動させてやろうという作為がない。
ドーピングについてもかなりきわどい話が出てくる。むろん土井選手個人は禁止薬物に手は出さない。しかし、ここに書かれているドーピングについての書き方は、きっと不満を持つ読者もいるだろう。土井選手のドーピングに対する態度が、「仕方がない」と言っているように読めるところもあるからだ。明け方のホテルの隣のベッドで注射器を片手にしたルームメイトに対する態度も、もっと批判的に書いても良いような気がしないでもない。
でも、逆に、きっと、そういうものなのだろうというリアリティも感じられる。まだ現役の選手として、偉そうにドーピングをするような選手を批判はしたくないのだろう。
ちょっと以外だったのだけど、陽性になった後もなかなか認めず、すっかり悪役のシューマッハーも良い奴だったりする。
「悪いヤツがズルするためにドーピングに手を出す。それが日本での「ドーピング」のイメージだと思う。でも、現実はそんなに単純じゃない。」(p.60)
これは拙ブログで繰り返し述べてきたように、この世の中には99.9%の普通の人と0.1%の悪人がいるわけではないというのに通じると思う。さらに、禁止薬物リストに載っていない合法薬はどのチームもレース中にも使っているという話。まあ、これはある程度聞いたことのある話ではあったけど、自分の体験も赤裸々に語っているのは潔い。
以前僕が書いたドーピングをめぐる話が、まだまだ甘いことも感じさせられた。
個人的には拙ブログおなじみの選手たちの名前が次々上がり、キッテルがとっても良い奴だったり、デーゲンコルプが豪快ながら、なかなかの心配りをする奴だったり、その前に出てきたパウル・マルテンスも含めてドイツ人選手たちがみんな良い奴らなのが楽しい。
最後のブエルタは拙ブログでも熱心に追いかけ、フレーリンガーやデーゲンコルプのブログを紹介したりしたので、とても印象に残っている。それだけにこのラストはほとんど泣きそうになった。
ロードレースファンなら絶対にお勧め。

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