リベラルな人たちの間で、きっと今上天皇のファンは多いんじゃないだろうか。たしかに、その発言には、深読みかもしれないけど、昨今の日本の社会に対する否定的な気持ちが込められているように見えなくもない。
今朝の発言も、人生でもっとも印象に残っていることとして、《「先の戦争」を真っ先に挙げ、約三百十万人とされる犠牲者について「若くして命を失ったことを思うと、本当に痛ましい限りです」と述べた。
さらに日本が戦後、「平和と民主主義を守るべき大切なもの」として新憲法制定などの改革を行い、国土を立て直してきたことに「当時の人々の払った努力に対し、深い感謝を抱いています」と感慨をにじませた》(東京新聞より)そうだ。
安倍政権がいま向かっている方向はとても危険な方向(日本を戦争のできる国にしようとしている、というのはかなりの部分で当たっていると思う)だと思うし、はっきりと憲法改正を目指している(憲法99条にある「国会議員。。。は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」というのに明らかに違反している)。その上でこの発言を読んでみれば、今上天皇の願いは戦争反対と平和憲法を護るということに尽きるように見える。
遡って見れば、嫌韓ブームに冷や水を浴びせるような、先祖の桓武天皇のお母さんが朝鮮出身ゆえに特別の気持ちを抱いている発言とか、石原や橋下が凹むような、国旗の掲揚は強制せぬのが望ましい発言とか、まあ、リベラルな人間にとっては、なんともありがたいお言葉の数々。
特に桓武天皇の発言などは、高橋源一郎の「恋する原発」の中のセリフじゃないけど、「でも、その発言で、よく『非国民!』って、いわれなかったよね。あれ、おそろしいほどの、御決意で語られたと思うんだよ、ぼくは。で、陛下は絶対、翌日の新聞を見たと思うわけね。『ミチコ、ぼくの昨日の発言、ちゃんと新聞に載ってるかな?』『いえ、あなた、ほとんど載っていないみたいですわ』『ダメじゃん、この国!』っていってたと思うね」(74ページ)
だけど、これってずいぶんねじくれてるよね。昭和天皇が生きていた時代なら、リベラルな人たちは天皇制に対しては、濃淡はあったとしても、どちらかと言えば反対という人が多かったはずだし、皇室に対する好感度も低かったはずだ。だけど、いま、リベラルな人たちにとって、今上天皇はひょっとしたら、最後の砦かもしれない。またまた高橋源一郎の上の小説には、こんなセリフもあった。
「あのハシモトとかいう知事、日の丸を条例で強制させようなんてさ。あんな、大御心がわからない知事なんか国賊だ! 大御心は言論の完全なる自由に決まってる!」(75ページ)
たしかに、天皇の政治発言を解禁したら、ほんとにこんなことを言うんじゃないかって期待しちゃうし、絶対に原発反対って言うだろうな。本当は山本太郎議員の手紙についても何か言いたいことがあるだろうし、あの主権回復の日とやらに安倍一派がやらかした「天皇陛下万歳」事件についても、あの当惑したような表情(間違っても嬉しいという顔ではなかった)から、絶対に否定的なことを言っただろうと思いたい。
しかしぼくもリベラルな側のつもりだけど、これってかなり歪んでいるよねぇ。。。

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