1955年にデンマーク人作家によって書かれた(当時の)近未来スポーツ小説です。ドーピングのことをいろいろ調べていて、こんな本があると知ったのでした。まあ、なんとも はちゃめちゃ ながら、結構読ませるところもありました。
舞台は1996年のハンブルク・オリンピックでの男子陸上800メートル決勝。決勝に残ったのはアメリカ人2人、ソ連人2人、ドイツ人1人、デンマーク人1人の6人。200ページ足らずの小説の前半100ページがこの6人の出自と紹介に費やされ、後半はレースが克明に描写されます。
アメリカ代表の一人は遺伝操作されたような身長2メートル30の大男だったり、ドイツ人はスタート直前に強力な薬を注射され、優勝できなければ自決すると公言したり、ソ連の優勝候補筆頭は恋に落ちて、それを成就させるために国歌の歯車から脱落するためにわざと負けることを決意したり。。。まあ、無茶苦茶な話。
「おじゃま虫」と言われたデンマーク代表以外はすべて大国の威信を賭けた競技用マシーンと化した選手たちばかり。ドイツはフォン・プロイス総統をいただく大国なっているようで、ひょっとして作者ルンベアはすでにこの小説の舞台となる時代にはドイツは統一していると見越していたのかもしれません。ドーピングもルール違反ではないし、レース中もライバル選手のスパイクで太股から血が出たり、コーナーでのつばぜり合いで殴ったり肘打ちを食らわしたり、勝つためならなんでもありのようで、まるでローラーゲームです 笑)
前半の6人の紹介の所は、現在から見れば、かなり笑えるのですが、後半の約80ページのレースそのものの描写はかなり緊迫感があって、なかなかおもしろかったですね。コーナーで相手に外側を走らせて消耗させる作戦や、ピッタリ後ろに付いて風よけにする作戦、同国人同士二人でコースをふさぐ作戦、最後の短距離スプリントに絶対の自信を持つ小柄なアメリカ人とドイツ人や、先行逃げ切りタイプの長身アメリカ人、イーブンペースでハイスピードを維持するソ連人二人、そしてロングスパートを得意とするデンマーク人。最後はけっこうハラハラします。もう絶版のようですから、図書館でリクエストするのがよろしいかと思います。私もそうしました。

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