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西部戦線異状なし

2013.08.15.13:02

ちょっと捜し物をしていたら、本棚の奥の方から出てきました。第一次大戦を舞台にしたドイツの作家レマルクの小説。奥付を見ると昭和46年とあります。高校生の頃にまず映画を見て、それから原作を読んでみたのだろうと思います。ただ、これ、当時読んで意味わかったかなぁ。無理して背伸びして読んでいたのは間違いないだろうと思いますね。

西部戦線異状なし (新潮文庫)西部戦線異状なし (新潮文庫)
(1955/09/27)
レマルク

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本箱から出てきたのは同じ 新潮文庫なんですが、表紙の絵はちょっと違いますね。上のはあきらかに映画の最後のシーンからですね。

映画のほうはTVで見たはずです。白黒の1930年のアメリカ映画。淀川長治が解説していたのを覚えてます。なんと、いまは500円で買えるんですね。

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(2006/12/14)
リューエアーズ、レイモンド・グリフィス 他

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高級な軍靴が次々と人手に渡っていくシーンとか、砲弾の穴の中で、主人公が銃剣で刺した瀕死のフランス兵と二人だけで過ごすシーンとか、たぶん今見たらずいぶん古風だと思うだろうけど、白黒だけにリアリティがすごくあって、その後、池袋の文芸座の地下でも見た記憶があります。塹壕戦のシーンが延々と続いたところでは完全に凍りついたみたいに動けなかった記憶がありますね。シーンが変わった瞬間、あちこちでため息や姿勢を変える音がざわざわとしたのでした。僕にとって反戦映画としてはこの映画とソ連映画の「炎628」の二本が双璧かな。その後のプライベートライアンとかも、冒頭20分ぐらいはものすごい臨場感で、その場に居合わせたような怖さがあるけど、やっぱり作り物じみた印象が強すぎて、どこかで白けている自分がいます。

レマルクは同様に「愛するときと死するとき」というロシア戦線を舞台にした映画があって、これもドイツ軍の若者を主人公にしているアメリカ映画で、そういうのが好きで、同様に高校時代に原作を読みましたっけ。主人公と恋人の交情シーン 笑)、古文の授業中に読んでいて見つかり、教師にむちゃくちゃ怒られましたっけ 笑) こちらはさすがにもう古本しかありませんね。映画のほうも今は手に入らないようです

さて、「西部戦線異状なし」からです。映画の中にも同様のシーンがありましたが、本から。ちょっと訳が古風かもしれませんが、今読んでも通用します。戦闘の合間にみんなが、「戦争ってものは、どういうわけで起こるのか」を話し合っているところです。

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「大がい何だな、一つの国が、よその国をうんと侮辱した場合だな」

「なに、一つの国だって。それがわからねえ。一たいドイツの山がフランスの山を侮辱するなんてことは、できねえ話じゃねえか。山でなくったっていいや。河でも森でも麦畠でもいいや」

「貴様はそもそもそんなことのわからねえ馬鹿なのか、それともわざとそんなこと言いやがるのか。おれの言ったなあ、そんな意味じゃねえ。ある国民がよその国民を侮辱した場合だ…」

「そんならおれたちはここで何にも用がねえじゃねえか。おれはちっとも侮辱されたような気がしてねえものな。そんならおれは家へ帰ってもいいな」

「なに言ってやがるんだ。国民と言ったって、全体だよ。つまり国家ってやつだよ…」

「なにが国家だい。憲兵のよ、警察のよ、税金のよ、それが貴様たちのいう国家だ」

「貴様初めて本当のことを言ったぞ。国家というものと故郷というものは、こりゃ同じもんじゃねえ。だがそいつは両方とも一つものにくっついてるからなあ。国家のねえ故郷というものは、世の中にありゃしねえ」

「それはそうだ。だが考えてみねえ。おれたちはみんな貧乏人ばかりだ。それからフランスだって、大がいの人間は労働者や職人や、そもなけりゃ下っぱの勤人だ。それがどうしてフランスの錠前屋や靴屋がおれたちに向かって手向いしてくると思うかい。そんなわけはありゃしねえよ。そいつはみんな政府のやることだ。おれはここへくるまでに、フランス人なんか一度だって見たことがねえ。大がいのフランス人だって、おれたちと同じこったろう。そいつらだっておれたちと同じように、何がなんだかさっぱり知りゃしねえんだ。要するに無我夢中で戦争に引っ張り出されたのよ。」

「そんなら一たい、どうして戦争なんてものがあるんだ」

「なんでもこれは、戦争で得をする奴らがいるに違えねえな。戦争の裏にゃあ、確かに戦争で得をしようと思ってる奴が隠れてるんだ」(秦 豊吉 訳)

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まさに真理です。この本は世界中で大ベストセラーになったんですがね。 それでも二度目の世界大戦が防げなかったわけです。



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comment

アンコウ
CYPRESSさん、

まあ、ロシア映画らしく、美しいのですよ、風景が、あの映画は。

モツレクと最後のシーンについてはすでに書いたのでパス。

「俺たちは仲間だ、強制されたやったんだ」という彼らの言葉と、その前の喜々として村人を殺害する姿とをどうみるのか。数日前の小学生をよってたかって殺害しちゃった事件も、主犯格の少年は命令したけど、ホントにやるとは思わなかった、命じられた誰かがもうやめようと言ってくれればやめた、というようなことを言ったそうだけど、命じられた方は命令されて、従わなければ自分に危害が加えられたと思ったんだろうから、やめるはずはなかったという話を連想します。

先週まで東京新聞で週一で連載していたミルグラムテストの話も同じで(エスというドイツの映画もある。これもなんどか拙ブログで触れたけど。)、アイヒマンにしてもそうだし、ハンナ・アレントは凡庸な悪といったわけだけど、恐れ多くもアレントに反対するつもりはないけど、やっぱり「悪」なんて言う言葉を使ってしまってはいけないんじゃないか、そんな気持ちがあります。そういう、「いわゆる悪」というものを本気で考えさせられる、そういう映画だと思います。数年前にタランティーノがこの映画に比べたら「プライベートライアン」の冒頭なんて日曜日の砂浜の散歩のようなもの(正確な文言失念)といったそうですけどね。深みがまるで違うと思いますね。ただ、この前書いた「サウルの息子」や友川カズキと同じで、誰にでも勧めるというのはちょっと躊躇するかな 笑)

私は映画館で20年前に見たのを最後に見てないので、いつか貸してくださいな。
2016.02.08 22:06
CYPRESS
『炎628』
ロシア語は全く分からんし、ドイツ語もその昔やっても"ich"ぐらいしか分からん(笑)。
でもですな、最後、ドイツ兵が捕らわれ橋の下に集められるシーウェンスでロシア人もその中にいて「俺たちは味方だ。強制されてやっただけだ」と喚いてます。
だから誰が観ても分かる作りです。
だから私でも(笑)、分かった。

ドンパチやる場面は少ないけど、最初の爆撃か砲撃の場面、これはかなり効果的、凄い演出。
ダイナマイトなんかじゃなくて本当に迫撃砲の小さいのでやったんじゃないだろうか?
ここ以降耳鳴りらしきものの効果音が入り、以後音楽や効果音が最後迄続きます。
こんなにうるさかったら真面に考えられるはずなし。
戦争が始まっちゃえば、真面な思考不可能、続行のみ、って演出なんだろうなぁ。

最後のシークウェンス、
確かにヒットラーの幼児期の写真では撃たなかった。
その後、モーツァルトのレクイエムの「涙の日」が流れていたのを覚えていますかな?
(ヒットラーの写真を撃ってる所はタンホイザーの序曲、ワルキューレの騎行、ジャズの何か(笑))

>涙の日、その日は
>灰の中から罪を犯した者が蘇り神の裁きを受ける日
>神よ、この罪深きものをお許し下さい
>慈悲深きイエスよ、彼らに安息をお与え下さい

こんな歌詞だから、映像と同じことを表してますな。

また、主人公フリョーラは最後のシークウェンスまで銃を撃ちませんでした。

第三帝国の軍服を久し振りに見たけど、開高健先生が書いた様に確かに男のロマンチシズムを極めていてカッコいい。

小津安二郎の映画みたいにバストショットが多いねぇ。

前半はどうも単調で退屈だったけど、ドイツ軍が侵攻してくる後半は画面釘付けでした。
俄然内容に緊張感、緊迫感、恐怖への身構え、が満ちた(@_@)。

実はタルコフスキーの『僕の村は戦場だった』もBDをBookoffで見つけ購入済み。
2016.02.07 19:04
アンコウ
CYPRESSさん、

「炎628」は何度か書いてるので(http://tatsuya1956.blog48.fc2.com/blog-entry-279.htmlなど)、たぶんこれをテーマに記事にするのはもうパスです。ただ、ハリウッドの戦争映画なんか足元にも及ばないおぞましい映画ですね。

ところで、あの中で笑いながら大虐殺にいそしむ連中の何人かがロシア語を話しているのが分かりますか? あまり言われていませんが、あれはロシア人なんですよ。ナチスの虐殺部隊に混じってウクライナやベラルーシのファシストたちがナチスと一緒に大虐殺に加わったんですね。そういうのも隠さずに描き出している。どこかの国とはレベルが違う映画です。戦争映画をどういう方向を向いて作るか、っていう意識のレベルがまるで比較にならないと思う。そして最後のじいさん顔になったアリョーシャ(って言ったよね?あの少年)がヒトラーの写真に向かって発砲する銃の音。逆回転していく時間。最後に母に抱かれた幼児ヒトラーの写真に向かって発砲出来ないアリョーシャ。これがキーでしょう。これが連鎖を断ち切るための知性なんでしょう。

「橋」のほうも、前半がちょっと冗長だし、教師の描き方がちょっと甘い(西部戦線異状なしの教師とは逆)けど、貴族の家系の少年がアメリカ兵を殺してニヤリとするシーンなんかに、単なる少年たちが戦争に「巻き込まれる」悲劇とは違うものをかんじます。でも、やっぱり「炎628」に比べるとかなり甘いかな。ま、私の意見では「炎628」はもう突出してます。他の追随を許さないっていうのはこの映画のためにある言葉ではないか、そんな感じです。
2016.01.23 23:42
CYPRESS
「炎628」、買った。
ついでに1959年のドイツ映画「橋」も。
そう言えば「炎628」の記事、まだですな。
2016.01.23 22:20
アンコウ
CYPRESSさん、

こんにちは。細かい分析ありがとうございます。

ただね、作画法や映画術ってどんなもののことを想定しているのか分からないけど、一般的な映画の作法やモンタージュの技法などはすでにサイレントの時代に確立されていて、現在の映画の画面もカット割りも古典の焼き直しに過ぎないと言われています。まあ、映画作りにおいて新しいことなんかやれないでしょう。CGなんて映画をつまらなくしただけだしね。

役者の表情の大げささは、なにしろ1930年の映画です。トーキーになりたての時代ですから、それまでのサイレントの時代の演技が混じるのは致し方ないところで、そういうのが拙いところだと思うべきかどうか。。。わたしなどは
、とくに表情の大げさなあの教室のシーンなどは窓の外の風景とともに、おもしろいと思いますけどね。
2013.08.17 17:59
CYPRESS
まずは、映画の方から。
bookoffで買ったんだけど、¥500のコーナーには無かった(涙)。

作画法とか映画術なんかが確立する以前(→いつだ?(笑))の映画だけあり、役者の表情は歌舞伎並の大袈裟、説明的なカットも非常に多い。
しかしながら、こうした拙さを忘れさせる全体の出来の良さ。
特に戦闘場面の緊迫感は映画史に残る優秀さ。


砲弾の着弾の黒煙の中、全員突撃を横から動かしながら撮ったカットの緊迫感(溜息)。

塹壕での乱戦は、非常に写実的。
塹壕戦での敵対距離200m超を想定した全長が長いライフルを使ってるから狭い塹壕の中で敵に銃を向けらず、ライフルが棍棒になる説得力。
この辺、日本の17世紀初頭までの合戦と同じで非常に興味深い。
(→刀での斬り合いより棒切れで殴り合いになる方が多かったらしい)
そしていつ敵に頭をかち割られるかもしれぬ恐怖感。
これが緊迫感が有り、素晴らしい。

また砲撃を受け震動し、土埃が落ちてくる地下壕のカットも素晴らしい。


塹壕か砲撃の穴を次々と飛び越えていく兵士を下から撮ったカットは、
最も素晴らしい。
どう考えても戦死した兵士が見上げるとしか思えず。
死者の瞼を閉じ永遠の眠りにつく事も許さぬ戦争の異常さと冷酷さを表してるでしょう。
この映画の拙さを帳消しにしている最高の映画的表現。

チャップリンの『独裁者』は未だに同じ事が行われていて全然おかしくなし笑えないけど、
この映画の戦闘場面の緊迫感に匹敵する映画が生まれた方がいいのか悪いのか…

この映画、アメリカの戦争報道と非常に関係深いカットが有るんだけど、
年代の関係でドルトン・トランポの『ジョニーは戦場へ行った』かデ・パーマの『カジュアリティーズ』が記事になったら書きましょう。
そこのカットから反戦映画と解釈出来ます。

小説の方も読んだけど、ルイス・マイルストーンの映像に圧倒されたらしくほぼ記憶無し(^_^;)。
負傷した兵士が破傷風に罹った描写が有った記憶が…

ビデオの頃と違ってレンタルも驚異の安さですから、借りてから買うかどうするか、迷う楽しみを味わって下さい(笑)。
個人的にはロードショー並の¥2,000以下は即決即買いデス(笑)。
2013.08.17 13:55
アンコウ
Maderna さん、

こんにちは。映画はむろん80年以上も前のですから古風ですが、古典的映画なので機会があれば是非どうぞ。

うん、確かにマルクス主義的単純化かもしれません。ただ、レマルクという作者はユダヤ系ではなかったようですが、アメリカへ亡命、国籍も取って映画女優とつぎつぎと浮き名を流したりしたようです。あまりマルクス的ではありませんね 笑)

前にも記事にしたことがあるけど、ひとびとが愛国っていったときの国ってなにをイメージしているんでしょう? いつの間にか国と自分を同一化して、国が強ければ自分も強くなれるとでも思っているんでしょうかね? 
2013.08.15 21:00
Maderna
こんにちは。
恥ずかしながら私はこの映画、全編をちゃんと観たことはなく、小説の方も読んでいません。なので偉そうなことは言えないのですが、その上で引用された部分を読んで思ったのは、いささか理想主義的すぎるのではないか、ということです。
諸国民はみな平和を望んでおり、戦争をしたいのは国家権力と軍事産業だけ…だとしたらいいのですが、いわゆる「ネトウヨ」達の言動を見ると、むしろ諸国民の中に存在している他民族に対する差別意識こそが戦争を起こす根本的な要因なのではないでしょうか。
第一次大戦の頃はドイツはまだ民主国家ではありませんでしたから、よく分からないまま動員された兵隊も多かったかもしれません。しかし民主的なワイマール憲法期を経てナチが台頭した時、「ユダヤ人を滅ぼせ、スラヴ人をやっつけろ」というナチの主張を多くの人々が熱狂的に支持したわけですし、日本でも過去、多くの人々が軍国主義を熱狂的に支持しました(一部に、命を懸けて戦争に反対した人がいたことも事実ですが)。

原作の小説はまさにワイマール期に書かれているようですが、引用されている部分に関して言えば、「民衆に罪はなく、悪いのは常に権力」という、当時影響力の強かったマルクス主義の影響のようにも思われてなりません。
マルクスの思想には現代でも通用する部分は多いと思いますが、現代において戦争を防ぐ為には、古典的なマルクス主義的発想とは違う視点も必要になってくるように思います…

重箱の隅をつつくような投稿で済みません…。
2013.08.15 15:30

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アンコウ

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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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