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小林信彦「うらなり」

2012.12.18.12:36


うらなりうらなり
(2006/06)
小林 信彦

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漱石は大好きで、学生時代から繰り返し読んだ。一番好きだったのは「それから」だった。その後、松田優作が代助を演じた映画が作られた。間の緊張感がものすごく、なかなかに良い映画だと思ってもう一度原作を読んだ記憶がある。

それから [DVD]それから [DVD]
(2009/11/01)
松田優作、藤谷美和子 他

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だけどそんななかで「坊ちゃん」はどうもあまりおもしろいと思わなかった。痛快とか青春小説とか言われてたけど、赤シャツと野太鼓はボコボコにされても、校長の狸はまったく安泰だし、ボコボコにしたところで赤シャツはマドンナと結婚して、どんどん出世するんだろうし、野太鼓は相変わらず、男芸者みたいなまんまなんだろう。それに、そもそも本当に赤シャツは悪党なのかどうかだって、ひょっとしたら坊ちゃんの神経衰弱からでた妄想じゃないのか、っていう気もしたし。。。むしろ痛快だと思ったのは「野分け」の方だった。

図書館で大分前に出たこの本が目について借りてきた。まず40年ぶりかもしれない、「坊ちゃん」を読み直してから、読んでみたら、とってもおもしろかったけど、でも不満もある。舞台は昭和9年で、最初と最後に坊ちゃんと一緒に赤シャツをボコボコにした会津っぽの山嵐とうらなりの二人がが再会して、当時の話をする。その間に、延岡に転勤させられたうらなりのその後が、本人の思い出の形で描かれるとともに、「坊ちゃん」の中で坊ちゃんの視点から描かれた一連の事件がうらなりの視点を通して見直される。細かい道具立てや、うらなりからみた坊っちゃんや送別会の様子はおもしろいし、その後のうらなりの人生も、そこそこ幸せな人生だったはずなのに、なんか寂しげで哀しい。

ただ、マドンナの話は、うーん。作者がうらなりに同情しすぎたあまりなんだろうなぁ、こういう結末にしちゃうのはちょっと不満。それに、うらなりの性格からして、もっと引きずるんじゃないかなぁ。。。というか、漱石の登場人物たちはみんな昔の恋に祟られているんですよね。岩田宏の詩「いやな唄」のこんな一節みたいに。

むかしの恋が
借金取のきもの着て
ぼくらに歌ういやな唄
「忘れたか おい 忘れたか
忘れたいのか たくないか」

なんか出たばっかりの頃に買ったけど、まだ読んでない水村美苗の「続明暗」も、まず漱石の「明暗」を読み直してから 笑)、読んでみたくなりました。


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  うらなり (文春文庫)    昭和9年、銀座四丁目で古賀先生(うらなり)は堀田先生(山嵐)と再会する。  カフェでお互いのその後や近況を交換し、古賀先生は帰宅後、寝る前に今までの人生を振り返る。  うらなり先生の視点から見たもう一つの「坊っちゃん」。    夏
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アンコウ

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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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