日本ではアームストロング事件はやっぱりアームストロング擁護が多いようですね。「嘘だと言ってよ、ジョー、じゃない、ランス!」って叫んでいる子供達も多いことでしょう。本人が告白したわけでもないのに、かつてのチームメイト十数人の告白だけで有罪になるなんて、陥れられたって言う可能性だってあるじゃないか、って言うことでしょうか。で、UCIもどうかしている、っていうランス擁護の立場からのUCI批判が続くわけです。
だから、これから書くことはきっと反対意見もあるだろうなぁ。。。
前回の記事で紹介したポール・キメイジの「ラフ・ライド」を読んで以来、90年前後からEPOという劇的に能力を向上させる薬が自転車界に蔓延し、それによって自転車レースの姿が変わってしまったと思っています。なお、この本を読むと、UCIの前会長のフェルブリュッヘンに対する怒りがわき上がりますね。
で、90年前後から、選手の睡眠中の突然死が増えたと同時に、競技の世界でも、それまでならあり得ないようなことが増えたわけです。その具体例は上記の本に譲るとして、ここからは思いつきとも言えそうな勝手なことを書きます。
たとえばインドゥラインはどうだったんでしょう? エレラが引退するときに捨て台詞のように言った「ケツのでかい奴らが山で千切れないようになったんだ、もう俺のやることはない」(正確な台詞ではありません)も、インドゥラインの山岳での強さを揶揄しているんじゃないのか?
あるいはフランスを代表するスプリンターから、世界戦のTTチャンプになり、さらにはツールの山岳賞まで獲得したジャラベールは? それまでにもたくさんの痩せたスプリンターがいたけど、あんな風にタイプが変わったことはなかったわけです。ワンデーの選手だったアームストロングがあんなオールマイティなステージレーサーになったことにも同じ事が言えそうです。
パンターニはたしかに自転車史上ナンバーワンの山岳スペシャリストだったと思うけど、でも、もし仮にEPOがなかったら、ラルプ・デュエズはどのぐらいのタイムで登れたのでしょう?
同じことは96年のEPOを告白しているリースにも言えます。もしEPOなしだったら総合優勝できたのか? また、翌年のウルリッヒはどうだったんでしょう? テレコムはツァーベルもアルダークも告白していますから、ウルリッヒだって当時からやっていた可能性は充分考えられます。ちなみに、ぼくはウルリッヒの大ファンだったし、いまもファンです。
質問を逆にして、たとえば、98年のフェスティナ事件、もしあのままチームぐるみのEPO事件が発覚しなかったら、ヴィランクは第9ステージでパンターニのアタックについて行けたのでしょうか? ツールに総合優勝できたのでしょうか?
EPOを強く批判したのが、意外にもEPOを最初に取り入れたと上記の著者キメイジが主張する国イタリアの、晩年のブーニョで、EPOの蔓延に警鐘を鳴らし続けながら、その後自らはアンフェタミンだったかエフェドリンだったかの興奮剤の陽性になったことがありました。つまり、ブーニョとしては興奮剤程度の、それまで使われていた薬ならいい、だけどEPOだけは選手の能力をあまりに劇的に変えてしまうと、そう言いたかったのではないでしょうか?
でも、みんながEPOやっていたんだとすれば、そんななかで一番はやっぱり一番だという意見もあるかもしれません。たしかにEPOさえ注射すれば強くなるわけじゃないですからね。アームストロングがツールに向けて、どれほど辛い練習をしたかは想像できます。だけど、これだけ組織的にやってきたとなると、チームによって、というより医者により大きな違いがでそうです。
そして、なにより忘れてはならないのは、その当時から、絶対に薬には手を出さなかった選手達もいたということです。そうした選手達の多くは、薬の蔓延に呆れて、自ら早期にプロ自転車選手を引退しています。
たとえば冷蔵庫だったかミシンだったかで手作りした自転車でアワーレコードを書き換えちゃったスコットランドの変人オーブリーも、EPOをやってるやつには勝てないと言ってプロをやめたし、ハンサムなジル・デリオンも薬の蔓延に嫌気が差したと言ってやめたし、他にも同様のことを言った選手はずいぶんいたはずです。21世紀の初頭にドーピングを批判し、ついにはアームストロングにまで余計なことは言うなと恫喝されたフランス人選手は、なんて名前だったっけ?(後日記。クリストフ・バッソンという選手でした。Nacoさんに感謝)
今回のアームストロング事件でも、ブラッドリー・マッギーなんかは、自分の最良の時代を詐欺師達にかすめ取られたと怒っています。たしかに、もしEPOもその他のドーピングもなかったら、90年以降のツールはどんな選手が優勝したでしょう?どんな劇的なシーンが見られたでしょう?そう考えると、金返せ(払ってないけど)っていう気持ちにもなりますね。
そして、こういう状況をここ20年以上見逃し、おざなりとしか思えないようなドーピング検査を免罪符代わりに、陽性の率は2%弱だと言って、自転車界にドーピングなど大した問題ではないと言ってきたUCI前会長フェルブリュッヘンや現会長マッケイドの罪は、賄賂などしてないとしても、かなり重いと言いたいところです。
というわけで、以上はただの一ファンの意見に過ぎませぬ。どうぞ、ご批判などあればご遠慮なくコメントしてください。
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