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サイレント映画「裁かれるジャンヌ」雑感

2024.02.14.12:46

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納戸から出てきた大昔の本の表紙に使われているのを見ても分かるように、映画史に燦然と輝く歴史的映画です。1928年のモノクロサイレント映画。監督はデンマークの・カール・テオ・ドライヤーです。この監督の映画は「吸血鬼」「怒りの日」について書いたことがあります。

この映画はたぶん1980年ごろに京橋にあったフィルムセンターで見たんだけど、ボロボロのフィルムの上映でした 笑)今回はスカパーのザ・シネマで数ヶ月前に録画しておいたのを、あるきっかけで見てみようと思ったのでした。いやぁ、リマスター版は綺麗です。こんな映画だったんだぁ 苦笑)

この映画なにがすごいかっていうと、ほとんどジャンヌダルクの裁判のシーンだけからなっているんですね。しかも異端審問官たちの宗教問答みたいな質問と、それに答えるジャンヌの顔のアップで描かれます。

審問官がジャンヌを魔女に仕立て上げるために、さまざまな罠が仕掛けられた質問をするわけです。ジャンヌが大天使ミカエルからお告げを聞いたと言うが、その姿はどうだったかとか、何を着ていたかとか、それは結局悪魔だったのではないかと、質問していく審問官たちの顔のボッシュの絵のような表情や、唾を飛ばす口元のアップに対して、ジャンヌは普通の顔をした短髪の女性です。それが真正面から撮られ、その表情の変化が実にすごい。言うなれば、疑い、希望、絶望、諦め、恐怖、陶酔、決断、後悔、煩悶とでも言うような感情が、表情につぎつぎに現れます。

たぶん映画の三分の一以上はジャンヌの顔を正面から撮ったアップだったんじゃないでしょうか。しかもその半分以上は涙が頬を伝わります。ジャンヌ・ダルクって甲冑を身に纏って旗と剣を持った美女のイメージで、後のイングリット・バーグマンがやったジャンヌ・ダルクのイメージ、最近だと、僕は見てないけど、リュック・ベッソンのミラ・ジョホヴィッチみたいな勇ましい感じを想像するけど、ここではスッピンの泣きながら震えているフツーの若い女性です。

しかも背景は白い壁の室内なので、見る方の目は顔のアップだけに集中することになります。また、アップ以外のシーンの画面の構図がやたら不安定な斜めの仰角だったりします。そしてラストは、それまで室内でアップばかりだったのに対して、ジャンヌの火刑に怒った群衆の暴動と兵士たちの鎮圧がバタバタとまるで違う映画のように描かれます。このドライヤーという監督、こういうのが好きなんだろうなぁ。「奇跡」という映画でも最後がそれまでの静謐な長いカットばかりだったのに、ラストで短いカットの連続になったような。それをポール・シュレイダー監督が「魂のゆくえ」のラストでなぞったという話を町山智浩が書いていたのをどこかで読んだことがあります。

そしてやたらリアル。ジャンヌの顔にハエが止まって、それを手で払ったりします。ラストの火炙りシーンは、「怒りの日」でもそうでしたが、ひどくショッキングです。

審問が終わって、ジャンヌは髪を切られるんですが、フラッシュバックのようにこれ見たことあるな、と思ったら、終戦直後のフランスでドイツ軍とつながりがあった女たちが頭を剃られるシーンが思い浮かびました。

ジャンヌは審問後に一回恐怖から自分が異端だったことを認めて、死刑が回避されます。しかし、それを一人の修道士の勧めで、すぐに撤回して、結局火刑になるわけです。ここで思い出したのが、「沈黙」やシュレンドルフ監督の「9日目、ヒトラーに捧げる祈り」、あるいはテレンス・マリック監督の「名もなき生涯」のことでした。

自分の信念のために死ぬかという問題ですね。ころんだ「沈黙」に対して、仲間の神父たちが殺されても、あるいはギロチンでおどされても、ジャンヌの場合は火炙りですからもっとこわかったでしょうけど、それでも死を恐れないって、立派なことなのか?? 

ジャンヌの場合は、しかも一度転んで異端を認めた後で、アントナン・アルトーという有名な文人俳優が演じる修道士が、異端を認めたことを撤回しろと迫り、それによってジャンヌは撤回・火刑になるわけで、こうなると、私の感覚では、本来のキリスト教の考えとは逆転して、この修道士こそ「沈黙」の井上様や「名もなき生涯」の弁護士みたいな誘惑者じゃないか!!と思いたくなっちゃいます 苦笑)

つまり、「沈黙」の井上様はロドリゴに絵踏をすれば命が助かると誘惑する。そしてロドリゴは棄教する。一方で「9日目」では親衛隊将校は主人公の神父に、ルクセンブルク大司教とナチスのとり持ちを条件に、収容所の神父たちを解放すると言い、「名もなき生涯」の弁護士はヒトラーへの形だけの忠誠を誓えば死なずに済むと主人公を誘惑する。だけど、どちらの主人公もそれを拒むわけです。で、ジャンヌは一度は異端を認めたのに、修道士がそれを撤回させた。。。形の上では「沈黙」の逆パターンか 笑)


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アンコウ

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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

* 時々コメントが迷惑コメントとしてゴミ箱に入れられることがあるようです。承認待ちが表示されない場合は、ご面倒でも書き直しをお願いします。2017年8月3日記す(22年3月2日更新)

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