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森達也「千代田区一番一号のラビリンス」

2022.07.30.14:10

IMG_6018.jpg

ネタバレしてませんが、これから読むつもりなら読まない方がいいかも 笑)



森達也のこれまでの本を読んできた人なら、最初の方で、ああ、あの話ね、と思うでしょう。前半は、以前深夜のドキュメンタリー枠で憲法1条を映像化しようとして失敗した話が、たぶん実名でそのままリアルに再現されています。どこまで事実かわからないけど。主人公は森克也という名で年齢はアラフォーだから、そのへんの設定は作り物だけど、過去にオウムを映像化していることになっているし、是枝裕和をはじめ、TV業界、映像業界の人たちが、おそらく、実名でどんどん登場します。

なにより天皇皇后(現上皇と上皇后)が明仁、美智子でそのまま登場するってのがこの小説のポイントでしょうか。いや、天皇が出てくる小説って、僕がすぐに思い出せるのは大江健三郎(題名は思い出せないけど、天皇が「あの人」と呼ばれて場面に登場するシーンがあった)や、僕は読んでないけど深沢七郎は大事件になったし、最近では高橋源一郎の「恋する原発」や、あるいは若杉冽の「原発ホワイトアウト」だったか、憲法改正の公布を拒否する天皇が登場してました。だけど、この小説では、そうしたチョイ役で出てくるのではなく、この二人が森克也とともに主人公でもあるわけです。

さらに中盤からは山本太郎が重要な役割で登場します。森達也は山本太郎の応援メッセージを出したぐらいだし、ここに描かれている山本太郎は実物そのままなんだろうと思わせます。ここ大切だから 笑)

森達也の本に「オカルト」というのがあったけど、この小説を読みながら、それも連想しました。これは最初の方から出てくるから、ネタバレにならないと思うけど、カタシロという日本にしか出現しない超常現象じみたものが出てくるんですね。なにか日本の「世間」とか「タブー」とか「穢れ」の比喩なんだろうけど。さらに皇居の地下のラビリンスを天皇皇后と共に行くところなんか、タルコフスキーの映画の「ストーカー」のゾーンなんかを思い出したりしました 笑) そういやあ、この小説の最後も雨が降ります 笑) タルコフスキーの雨も清めの意味があるから、その点でも共通してるかな 苦笑)

冒頭から登場する天皇皇后のイメージは誰でも納得するんじゃないでしょうか。きっとここに描かれているような人なんだろうと思う。途中からはこの二人の冒険みたいなはちゃめちゃな感じになるけど、最後の方、のこり40ページぐらいから、ちょっと色々物足りなくなりました。カタシロが「穢れ」だとすれば、ラストはピタッとはまって納得できるけど、あの自民党・電通・高天原の標識 笑)は、もっと膨らませてほしかったなぁ。

でもそこまでは、途中でやめられなくなったぐらい面白かった。ただ、森達也の文章ってかなりクセがあるんだよね。そのクセある文体が小説にはそぐわないような気がするんだけど。

最後に、僕の天皇についての考えは以前に書きました。天皇制私感へ


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アンコウ

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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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